ボーイミーツガール!?
「今日はどうする。家に送ろうか?」
リュウは抱きついたまま、首を横に振る。
女の子と言うのは難しい。
ジュンの半分は女だが、だからこそを女を理解する能力も、その半分にしかない。
「だったらもう泣くな、な? 泣かれると弱いんだ。もう怖くないから、この俺が付いてるなら、大丈夫だから」
リュウの背中を、あやすように軽く叩く。
リュウが男の時は、二人の年齢差はほとんど気にならなかった。リュウはまだ本当に子供なんだと思って、ジュンは戸惑ってしまう。
もちろん十八歳以上は、性的には大人だが。
リュウを宥めながら、エレベーターへと向かう。
少年の時のリュウのような優しさがないのは、自分にもわかる。男の時のジュンは、がさつすぎる。
男と女では、それほど違うのだ。
性格とは読んで字のごとく、性が核になったものだ。
人間に一極的な性別があった地球時代、男に生まれた者も、もし女に生れていたら全く違う人間になっていたはずだ。
それだけ違えば、男女間で分かり合えないのも当然だ。
男女両方の性別をもつ現代人だが、自分の半身が一番分からない。
エレベーターのスロットに自分とリュウの識別章を差し込み、必要なエレベーターが来るのを待つ。
ほとんど待たずに開いた戸の中には、小柄な老人と、子供を二人連れた女親が乗っていた。
先にリュウを乗せる。
泣き後の残るリュウを見て、先客が不審げな眼をジュンに向けた。
リュウは髪形が派手になったが、態度は清純な少女だ。しかも、一緒にいるジュンの見た目が見た目だ。
女の時は可愛らしいピンクの開襟風シャツも、男の今はガラの悪さを強調する。
ジュンはかがんで、リュウの手に認識章を返す。
足音がなくても背後から近づく一つの気配と、相手に悪意などがないことは感じていたが。
「お?」
体を起こす途中、後ろから抱きしめられる。それは流石に想定外だが、知人と思えば足取りに迷いがなかったのも納得できる。
「ジュン。久しぶり。その子、新しい恋人?」
耳慣れた声を聴き、ジュンは動揺する。
「あー、よー」
ジュンより少し背の低い男だ。
ジュンはリュウを見おろして、
「柄が悪いって、捨てられる瀬戸際かもしれないけどな」
リュウは慌てたように、プルプルと首を振る。
ジュンを抱く手をほどいて、前に回り込みながら、奴はジュンの頬を撫でる。
「相変わらずいい男」
正面に立った時には、ジュンより頭一つ分以上背が縮んでいる。こいつは性的に興奮すると、女になる。
いい男って……。
じゃあ何でジュンを捨てたんだとは、今も聞けない。




