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閑話(3) デイジーの告白

()=○○の心の声です

《》=サトリの心の声です

次は21時に投稿です。

 




 サトリがエプスタイン領へきて次の日、朝食中に事件は起きた。


「…サトリ、結婚を前提にお付き合いしましょう」

「ぶっふぉっ!?」


 デイジーは日常会話に挟むように口にして、異能を使っていないサトリは思わぬ不意打ちに咳き込んだのだった。


 汁物を口に含んでいないのが幸いして、テーブルは汚していない。


 何がどうしてこうなったのかと、昨日デイジーの想いに気付きながら棚上げしたツケがすぐさまやってきて、混乱した頭ではデイジーがどうして自分に告白してきたのか理解出来なかった。


 兄弟であるフランシスとサトリと初対面のレインズもデイジーの告白にナイフとフォークを持つ手を止めて『お前昨日の今日で俺たちとの約束早速忘れているじゃないか相談しろよ』と言わんばかりの目で見つめている。


 使用人たちも同様で、普段突拍子もないことなど滅多にしないデイジーの告白に目を丸くしてしまっていた。


 特にデイジー付の執事バルトは何の相談も受けていなかったのか、少し寂しそうな表情を浮かべている。


 対するフレアたちはと言うとデイジーがサトリに告白したのを興味深そうに見つめているだけで、特に何かをしようと言うことはなかった。


 さしものサトリも魔導人形に色恋についての取り扱いなど人工頭脳に書き込んでおらず、サトリが困惑しているが別状はないと静観してしまったのである。


「―――ごほっごほっ!!

 あのデイジー様、どうしたらそんな突拍子もない結論に至ったのか小一時間聞きたいんだけど、自分がどういう立場の人間なのか理解してるの?」

「ええ、その辺りは理解しているわ。

 確かに私はエプスタイン侯爵家の人間よ、これまで侯爵家の人間として恥じないだけの教育を受けてきたわ。

 だから、その当たりの清算をして改めて結婚を申し込むのも悪くないと思っているわね。

 貴方と結婚できるのなら侯爵家を出て平民になってでもついていく、それくらいの覚悟を以って今貴方に告白したわ

(二人っきりの状態で告白しようものなら何を言い出すかわからないし、有耶無耶にされない為に証人のいる場で告白したのだけど…昨日レイン兄様とした約束破っちゃったわね。

 相談せずに言ってしまったわ)」


 どうやら既に兄妹間での説得は終えていて、しかも相談にも乗ってくれる―――結局のところしていないが―――ことまで判明している段階で、サトリはその場を濁して誤魔化そうとして口を開いた。


「えっと、卒業するまで…」

「煙に巻こうなんて思わないことね、面倒事を後回し有耶無耶にして放り捨てようとするのは予想済みよ!!

(やっぱり有耶無耶にしようとした!!

 油断も隙もあったものじゃないわね!!)」

「……その、謝罪の意味での結婚とかはちょっと…」

「そんな事する訳がないでしょう私をバカにしているの!?

 そんなことしたら貴方に嫌われるじゃない!!

 侯爵家出るって言ったでしょう、家なんて関係なく貴方についていくって言ったのよ私は!!」

「あ…そ、そうだ、お兄さんたちと会えなくなっちゃいますよ?

 自分どこかの島で細々と暮らすから…」

「往生際が悪いわね、付いて行くって言ったのよ私は!!」

「あ、あう…」


 サトリはこれまで人間関係で異能を使って優位に動いてきた。


 留学時代は銀行マン相手に多額の融資を引き出して起業まで持ってこれたほどの弁舌は、うまく回らなかった。


 それもそのはず、サトリは常に相手に優位の状態で事を起こして、詰め将棋のように相手を追い詰めていく弁舌のスタイルをとっていた。


 だが、最初から詰み一歩前の段階で始まる事態など想定してもいなかった。


 嫌だ、と一言で言えば済む話かもしれない。


 だが、サトリは別段デイジーが嫌いな訳ではないのだ。


 好感を持っている、自分の立場に誇りを持って突き進んでいく姿に敬意すら抱いていた。


 そんな彼女が自分に好意を抱いて今それを口にしてくれた。


 しかも平民になってまでついていくとまで言ってくれている。


 異能を使っている以上嘘ではない、それが真実だ。


「……すぐには決められないかな」


 それでも、サトリは彼女の告白に待ったをかけた。


 サトリは怖かった、デイジーが変わってしまうことが。


 これまで何千何万と人の心を視てきて、人の心が簡単に移り変わってしまう場面を何度も見てきたサトリにとって、自分に好意を口にしてくれた相手が自分から離れていくという状況の恐怖が頭に過ぎり、及び腰になってしまった。


 こと恋愛沙汰において、サトリは告白された事は一度もない。


 何が起こるか分からないという不確定さから、サトリは常に異性からは一歩距離を取った対応を相手にも分かるほど見せていたからだ。


 デイジーにもそういう態度をとっていた、勘違いするなと、そう取っていた筈だったのだ。


 そんな壁越しの関係を乗り越えようとしてきたデイジーに、サトリはすぐに決められないと答えた。


「…それも想定済みね、じゃあこうしましょう。

 友人以上恋人未満、この関係から始めないかしら?

(結婚を前提はやっぱり重すぎたわね、恋人から徐々に近付いていきましょうか。

 まぁサトリにはゴールが結婚って分かっているから少し難しい道のりになりそうだけどそこは押していくしかないわね)」


 心も読めていながら断りの言葉が出ないのは、やはり自分に原因があるのだと思うと、サトリはそれ以上否定の言葉を口にしなかった。


「…まぁ、それなら、うん」

「煮え切らないわね、まぁそんなところも貴方のいいところなんでしょうね。

 それじゃあよろしくねサトリ

(きっと将来の不安に悩まされたのかしらね、私が浮気したり嫌いになったりするのが怖くなったとか?

 私そんなに器用な方じゃないのだけど、そこはこれから示していくしかないわね…)」


 すったもんだの末、サトリとデイジーの関係はそこに落ち着いた。


 これが今後の新たな火種となってくるのだが、二人の新たな関係に食堂にいた面々は好意的な拍手で祝福するのだった。



読んで頂き、ありがとうございました。

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