第32話 快進撃はこれから始まるのだ!!(終わりませんよ?)
これにて第二章は終了、最後ちょっと駆け足すぎたかもです。
そして驚愕の真実が…うん、書いてしまいました。
頑張って今日中に人物紹介も投稿する予定です。
(サトリ視点)
権力者二人+aに宣戦布告的な事をして一週間後、学園では前期試験が始まった。
各学科の生徒たちは少しでも良い成績を出して自分たちの領地に自信を持って報告出来るようにしたかったのか、これまでチマチマとした嫌がらせが本当にぱったりと止んだ。
視線すらも向けられずに図書館に入り浸る生徒たちを見て、普段からこれくらい勉学に励んでほしいとぼやいたものである。
そんな俺はといえば、なんと前期試験の専門科目は全て免除、代わりにいくつかのレポートを提出すれば良い事になった。
こういう時の優遇措置は楽できるので良いことである、レポートは適当に疫病やベヒモスの素材の特性をいくつか検証実験したものを頑張って書いた。
ミスリルに匹敵する魔導効率を持つベヒモスの特性は非常に興味深く、その生態も少し気になったのでいつか生きたまま確保してみたいものだ、たぶん今の戦力ならいける気がする。
一般科目に関しては平均よりは良い成績なので気にしない、例え専門科目より低くともね。
学園の試験は一週間ぶっ通しで続けられ、試験の返却は三日後だった。
成績優秀者は学園のホールに張り出される、一位は遠くからでも分かる、ケリィだった。
何で平民なのにケリィ一位になれるんだろう意味分からん、いつ勉強しているんだよ。
「普段授業で習っている事と、図書館にたまに行ってればテストは楽勝だよ?」
不思議そうな顔をしているケリィは嘘はついていなかった、それがまた悔しい。
ていうか、文官科は他の科と違って実技系なんてなくて倍以上の科目があるのに、どうやったら一位になれるだって話だよ。
だってケリィだけだよ、文官科でトップ十入りしているの。
いや、違う学年にはいるよバルアミーとかエリザベータ辺りは頭の出来が違うのかトップ争いをしている、あそこもまたすごいなぁ。
俺は毎日図書館に通っているけど、総合成績七位と落ちていたよ、解せぬ。
一般科目が足を引っ張っていた、採点厳しすぎである。
まあ錬金術科はいつも通り一位だったから問題ないけどな。
「……納得行かないわ」
隣にはデイジーがいる、俺よりも総合成績は良い五位だが、錬金術科では二位だった。
そうだよなぁおかしいよなぁ、普通どっちも順位上でもおかしくないのに何故か総合成績が二つも下なんだよな俺。
どんだけ一般科目低いんだって話だよ。
「やったねデイジー様、総合成績五位だよ?」
「勝っているようだけど勝ちたい科目で一つも勝っていないのが悔しいわ!!
なによ専門科目の点数、総合点が十科目の総合点よりも高いじゃない!?
なんのレポート出したら総合点に追加点がされるのよ!?」
「どんまい?」
さぁ、俺に言われてもさっぱりである。
ちなみに俺より上にいる連中の殆どは領主科で占められている、覇王少年ことレオンハルトは二位だし他は知らない奴ばっかりだ、十位に商業科の奴もいるけど…多分知らない奴のはずだ。
入学してすぐ話しかけてきた連中の中にいたとしても思い出せないがな、魔法を使ってまで思い出すほどじゃないし。
「まぁ、追試は回避出来たしさっさと帰ろう。
…で、アゾル様はどうだった?」
気難しい顔をして黙っていたアゾルは小さく『九位だ』と吐き捨てるように答えてくれた。
いやそんな不機嫌な顔しなくたって九位なんだからもっと喜ぼうよ不機嫌なのはデフォなの?
アゾルはいつの間にか俺とデイジーが話している内にひょっこりと入ってきた。
まぁ、あのブタの計画ぶっ潰した後だから、何だかんだで気にかけてくれているんだよな、心の中を覗いて確認済みである。
あのあと親父さんは家督を長男に渡して隠居、ヴィレッジ子爵領へと帰って行ったらしい。
なんか俺と関わった貴族って大抵爵位を親族に渡して隠居したりしてるの多いな、自業自得なところ多いけど。
「そういえば、長期休暇サトリはどうするの?
商会を作るのなら、ずっとそれに掛かりきりになるのかしら?」
既に俺が啖呵を切っているのは国内中の貴族に知れているらしく、俺はいいやと首を横に振る。
「まぁいまは殆ど商業ギルドに任せっ切りかな。
何せ雇う人材は全部奴隷だし、商会に必要な土地とか権利書とかの手続き全部任しているから当分は暇だね。
長期休暇の半分…一ヶ月少しは掛かるんじゃないかな?」
最近は商業科からの生徒によく話しかけられるのはこういう所が原因だ。
何せ資金だけは莫大なもんだから相談役として自分の父親とか先代の商会長とかを薦めてくるのが鬱陶しくていけない。
異能を使えば信用のある相談役を手に入れることも出来るだろうけど、首輪の繋がっていない人間なんていつ裏切るか分かったものじゃないからな。
にしても奴隷か…商業ギルドには金には糸目をつけずに能力のあるなしに関わらず奴隷商人に声をかけてと言っておいたし、注文したのは商才のある人間だけだからな。
ドワーフ種とかエルフ種とか獣人種とかその他諸々の種族だろうと何でも良いといったから、今建築中の屋敷に入り切ればいいんだけど…。
建築中の屋敷は三分の一を俺が、残りを従業員である奴隷たちに貸し与えようと考えている。
大貴族の住んでいるような大きな屋敷にしたから、まあ最低五十人は収容できるだろう。
五十人超えてもベッド増やせばどうにかなるだろう、木工ギルドに追加注文しておこうかな。
俺は寝る部屋と研究室、それに資料室でもあれば他は気にしないからあとは別に気にしない。
自宅兼寮兼工場だな、屋敷の隣に三階建ての一軒家を工場に改築予定だしまあどうにかなるだろう。
奴隷は奴隷で教育しなきゃいけないけど、別に不当に扱うつもりはない。
俺が買うのは基本借金奴隷だから、一定の給料を支払って、返済額に到達したらその日の内に開放できるからな。
まぁ、衣食住や健康管理とかで差っ引くからそう簡単には返済出来ないだろうけど。
そんな思いを馳せているところ、デイジーがじゃあと何か意を決した面持ちで声をかけてきた。
「ねぇサトリ、エプスタイン侯爵領にこない?
(お兄様にも会わせたいし、錬金術で栄えている都市だからサトリのいい暇潰しにはなると思うのよね)」
そういえばあれから随分経つけどデイジーのお兄さんとは会っていなかったな。
どうせ家が建つまでやる事ないし、ポンプとかの設計書とかを書くくらいか。
ああそうだ、ソロバンは普通に見つかった。
この国じゃ商業ギルドとか文官しか持っていないらしく、認知度がまったくと言っていいほどなかったようである。
なんでもアキナイ自由都市連合にある商業ギルドの創始者が作ったものらしく、どう考えても転生者が関わっていそうな案件だった、興味ないけど。
ていうか、転生者の影はチラホラ見えるけど発展具合微妙なんだよね、もっと昔の連中は頑張れやと思う、特に農業は俺に皺寄せ来すぎだ。
「そういえば王都からそんなに遠くまで行った事ないんでどうせなら行ってみようかな。
師匠にも伝えてなるべく早く返事するね」
「そっ、そう!!
分かったわ、すぐに領地に行けるようにしておくわね!!
(まさか即決するなんて!!
急いで準備しないといけないわね、侯爵領までは強行軍…は拙いから、なんとか十日で行ける日程にして…)」
俺がすぐに返事をすると思っていなかったのか、デイジーが慌てながら去っていった。
侯爵領か…面白いことあるかなぁ。
* * *
「エプスタイン領かい?
いいよ、行っておいで、お土産よろしく」
アニムス魔道具店の店主アニムスは弟子であるサトリにいとも簡単にエプスタイン領への旅行を許可した。
弟子というのは基本的に師と共にいるもので、滅多な事では離れたりはしない。
とはいえ、この規格外の師弟において、一般的な師弟関係を参考するのも無駄なのかもしれない。
「師匠、エプスタイン領って何が名産品なんです?」
「確か…そうそう蜂蜜が有名でね、最近食べていないから欲しかったところなんだ。
タイガービーという魔物の繁殖に成功した錬金術師の一族が細々と続けていてね、私の名前を出して大量に買ってきてほしい」
タイガービーという魔物は討伐難易度Fと低いが、巣ごと討伐となると難易度は跳ね上がりCとなる危険な魔物だ。
基本集団で敵対者に襲いかかるタイガービーは高ランクの冒険者でも受ける者は少ないが、彼らの巣にある蜂蜜は栄養価の高く滋養や美容、健康にも良く低ランクの冒険者が一発逆転の大金を目当てに挑む依頼として有名だという。
「ああそうそう、四百年ほど前にその錬金術師には転生者の可能性があったのを思い出したなぁ。
特に問題を起こすような輩じゃないと分かってからは放置していたなぁ」
アニムスは転生者や転移者といった『異世界人』の情報を多く持っているとあり、ちょうど話題にもなった事なので思い切ってサトリは尋ねてみた。
「師匠、何で師匠はそう転生者とか転移者といった異世界人に注意を払っているんです?」
「ああ、そういえば話していなかったね。
サトリ、ちょっと考えてごらん?」
そういうと、アニムスは真新しい羊皮紙を取り出すと図を描き始めた。
絵心もあって分かりやすく、二つの球体を手早く書くと、それを仕切るように一本の線を引いた。
「さて、この図の通り世界はいくつもある、多重世界というやつだ。
この世界にはサトリのいう所の剣と魔法の世界、サトリのいた科学とやらが発展した世界だ。
そして、世界同士は繋がっていない…交流していない訳だ。
ここで質問、どうしてサトリの魂が異世界に、この世界に来たのかを考えてみようか?」
これまで深く考えてこなかった質問に、サトリも首を傾げたものの、アニムスの言うとおり考えてみる事にした。
「師匠、普通世界は繋がったりはしないんですか?」
「ふむ、いい質問だね。
答えは否だ、基本世界は繋がったりはしない」
「じゃあ答えはそれですね、何か異常事態が発生して、世界が繋がる…っていうか、穴でも開いて、その時に魂がいくつか流れ込んだっていう事じゃないんですか?」
異常事態の原因まではサトリにも分からなかったが、仮説としては良い線をいっていると思った答えに、アニムスは面白くなさそうな顔をしながらも『正解だよ』と返したのだった。
「そうだね、その通りだ。
異常事態が起きた世界では各地に異変が起きる。
世界を構成している力が不安定になり、空間に異常が発生したりね。
そして、その異常に引っ張られてひょっこり入ってきた異物…異世界の魂は新しい身体を求めて彷徨うのさ」
この時異世界から入り込んできた魂は大抵すぐに消滅する、転生出来る魂となれば更に稀らしく、そうした転生者が何人も現れては世界に変革を齎そうとした事をアニムスは苦々しそうに語っていた。
「ご先祖様たちはね、最初は気にも留めていなかったらしい。
世界の綻び程度時間をかければすぐに修復されるし、魔法も何もない異世界からの輩がきたところで大した問題ではないと思っていたんだ。
思っていたんだが…」
ここでアニムスはサトリを見てこれ以上言ってもいいのか判断に迷っていて、サトリも無理をして聞く気はなかったので話を終わらせようとした。
自分が異世界で転生したのはそんな偶発的な出来事の結果で、言ってみれば高額配当の宝くじに当たったようなものなのだと理解したからだ。
「…まぁ、サトリは根っからの悪人でもないし話しても構わないかな?」
「いや師匠、俺普通に人破滅させて悦に浸れる悪人ですよ?」
つい最近大陸最大の宗教に所属している大司教を自殺に追い込み、更に闇ギルドを壊滅寸前にまで追い込んだ事を挙げてみるサトリだが、アニムスは何も気にしていないのか鼻で嗤って見せた。
「基本サトリは受身でしょう?
破滅させるにしても報復なんだからそれで悦に浸るのはむしろ普通と思うけど?」
「まぁ、進んで破滅させる事はしないですけどね」
「なら別にいいじゃないか、話が逸れるから戻すよ。
ごく稀に転生を果たした異世界人はそれはもう後先を考えずにやらかしまくったんだ。
いいものも悪いものも世界に齎してきて、それは今私たちが言うところの『古代文明』と呼ばれる高度な文明を築くほどのものだった」
アニムスは異世界人たちの悪行を語った。
高度な文明による環境破壊や汚染、奴隷制の確立、そして科学と魔法の融合した魔導科学と呼ばれる世界滅ぼしかねない技術。
「魔導科学は文字通り魔法と科学を融合させたものでね、いってみれば世界の命を代償に繁栄するような後先の考えていない技術だったのさ」
世界中にある魔力、これを地中深くにある光脈と呼ばれる魔力の流れる川から魔力を引き、それを引き出して発展を続けたのだとアニムスは語った。
サトリはふと前世にあった風水学にあった竜脈という言葉を思い出した。
大地に張り巡らされた竜脈の上に都市や住居といったものの位置の吉凶禍福を定めるもので、サトリのいた国の過去も遷都するために風水といった占いを利用したという話を思い出したのだ。
「けど、世界を構成するために必要な光脈から魔力を抜けば当然だけど光脈は途絶える。
光脈の無くなった土地は枯れ果てて荒廃し、草木の生えない死の大地となるんだ。
転生者たちはその事に気付くのが遅かった、無限だと思い込んでいたエネルギーが実は枯渇するなんて知って、後は滅亡まっしぐらだ。
他のマシな土地を取り合うようになって戦争に明け暮れて、戦争にも光脈から魔力を吸い上げては使い続けて、結果古代文明と呼ばれた文明は滅んでしまったんだ」
この時から、既に世界には異常が起き始めていたという。
強力で凶暴な獣の出現、いわゆる魔物の台頭である。
魔力の無い土地で生きるため、獣たちは少しでも多くの魔力を溜め込むようになり変質していったのだという。
そしてそれまでヒューマン種しかいなかった世界に現在の獣人、エルフ、そしてドワーフの始祖たちが現れ始めたのだ。
独自の進化を遂げたヒューマンだと当時は囁かれていて、ごく少量の魔力しか無い過酷な環境下でも生きていける彼らは都市を捨て細々と暮らし始めた。
魔導科学に頼らない、自然に任せた生き方こそが人の営みなのだと学習したのだ。
結果として古代文明は滅びるまでその事を理解できず魔導科学と共に世界から消えた。
世界に多大な傷痕を残して。
世界各地で時折発見される古代文明産の魔道具の由来が魔導科学と呼ばれていたものだと知り、サトリはなるほどとアニムスに向き直った。
「…師匠は、異世界人が怖いんですね。
それは当時の辛さを知っているからですか?」
ハイエルフ、アニムスはそう呼ばれていた事を思い出したサトリは、答えてはもらえない事を覚悟で尋ねた。
ハイエルフとエルフは血の濃さが決定的に違うという。
ハイエルフは過酷な環境下を生きていくために自らの魔力を高め続けて生まれてきた種で、その魔力を生存に当てていた。
エルフは古代文明が崩壊し、環境が落ち着いた頃にハイエルフから生まれてきた種だという。
過酷な環境下でも生存可能なハイエルフほどではないが適応能力も高い水準にある。
だが決定的に違うのはその寿命だ。
単純計算にして十倍、エルフの寿命が三百から五百に対しその十倍となれば古代文明崩壊当時の事をアニムスが知っていてもおかしくない年代だ。
「異世界人だからという訳ではないかな、異世界人が齎す技術が私は恐ろしいんだ。
サトリは最低限の分別があるから、かつて古代文明で使われていた対魔導兵器…銃だったかな、魔力を使わずに人を簡単に殺傷で切るような技術を世界に齎さなかった。
だが、かつての異世界人には無かった、線引きもロクに出来ない愚か者だったよ。
その結果が何を齎すのか知りもせず、考えもせずに作っては環境を破壊し続けて、最終的に世界を滅ぼそうとしたのに止まらずに走り続けた。
そして…生まれたのが魔王という最大最悪の化け物だ」
明確な答えは返さなかったが、それでもアニムスは異世界人に対して一角の思いがある事だけは分かったとサトリは思うのだった。
「……あーなるほど、読めてきましたよ?
異世界人さんたち、魔物を研究しちゃったんですか、しかも最悪な方向に」
サトリもアニムスが苦々しそうな顔をする理由が分かってしまったのか、思わずうな垂れてしまった。
アニムスも説明の手間が省けるとばかりに苦笑していた。
「聡い子は話が助かるよ、サトリも気付いた通り彼らは最終的に魔物に目をつけた。
過酷な環境下で生き続けられた強力な魔物を研究する事で滅亡を回避できるのでは…なんてバカな方向に進んでいったのさ。
しかも平行して次元魔法と呼ばれる研究をしてね、もう最悪の二乗だよ」
「…次元魔法…あー、異世界人さん達…逃げようとしたんですか?
《ここまで行くといっそ清々しいほどクズだな先輩達、そりゃ師匠も嫌うわ。
好き勝手して最後は逃げるとか責任放棄…しかも魔王とくれば、悪魔も出てくるんだから最悪な置き土産してくれたもんだよ》」
アニムスはお茶のお代わりを淹れながら当時の凄惨な世界を語った。
古代文明が崩壊した後、細々と暮らしていたアニムスたちを襲ったのは人とも魔物とも、もちろん獣人、エルフ、ドワーフたちの姿と似ても似つかない、醜悪な化け物たちだったという。
次元の裂け目と呼ばれる場所から現れてきた彼ら―――悪魔はただでさえ荒廃していた大地を更に破壊し続けた。
生き残るためにヒューマン種を含めた新人類は団結して悪魔討伐を決行。
原因となったヒューマン種の研究にあった『召喚魔法』を使い異世界から強い力を持った異世界人を尻拭いの為に呼び出したのである。
呼び出された側からすれば誘拐と思われても仕方ないが、真相を語らず『世界の危機を救ってくれ』と勇者を作り出したのだ。
時代に誤差があるのは試行錯誤の末、現在のイヴェルダ教すらもこの為だけに生まれたのでは考えたサトリは世界の真実に触れてしまったと表情を固めてしまう。
現在では勇者と呼ばれる彼らの誕生秘話を知ったサトリとしては、何とも言えない気分にさせられたのだが、話はそこで終わらなかった。
「この召喚魔法を知る途中で知った事なんだけど、転生者と違って召喚された異世界人は次元を超えた時に裂けた割れ目から漏れ出した力…魔力を吸収する事でこの世界に適応するようで、老若男女関係なく呼び出された彼らは強い力を秘めていた。
その莫大な魔力を内包した異世界人を使って…私達は魔王をこの次元から追い出したんだ」
一瞬言い淀んだ所に気付いたサトリは、気付かない振りをした。
何をしたのかおおよそ理解したからだ。
ただでさえ魔力の枯渇した世界で莫大な魔力を内包した異世界人が魔王をこの世界、次元から追い出すとなればそれはもう熾烈を極めた戦いとなるだろう。
言ってみれば人身御供、生贄である。
文字通り身体を張って魔王を次元から弾き出し、身体を張った異世界人は力尽きる。
おそらく勇者と共に魔王を退治した当時の仲間達が異種族だったのは、本当は監視役だったのではとサトリは考えた。
突然呼び出された異世界人がいきなり『お前達の仲間のせいで世界が滅びそうなのでなんとかしろ』と言われて『はいわかりました』とすんなり受け入れるはずも無いだろう。
所詮は他人の仕出かした事で、自分が仕出かした事ではない。
だからこそ字面のいい『勇者』を作り出し、自分達と同じ世界の人間が仕出かした災厄のの尻拭いをさせた。
「……なるほどなー、っていうことは、師匠は俺が引き篭もるのには大賛成なんですね?」
「そうなるね、確かに錬金術師としての腕前は目を見張るものがある、もう十年もしない内に当時の古代文明に匹敵する技術を一つか二つ作りそうなものだけど、分別のあるサトリはそんな事しないのはよく分かったし。
やったとしても環境に気を使ったものしか作っていないようだからそれほど心配はしていない、農業関係は特にね?
むしろやりそうになったら取り上げられるから師匠という立場はありがたいというものもあったかな」
「…おおう」
師匠としての立場をしっかり利用しつつ、監視ながらも、アニムスはサトリの事をよく見ていた。
同じ異世界人の魂を持っているにも拘らず嫌悪の目を向けず良くしてくれたアニムスの事に感謝していた。
本当によく出来たハイエルフであると。
「…話が重くなったね。
まぁなにが言いたいのかというと、私達古き時代を知る者達の目の黒い内は、異世界人の齎す危険な技術は認めません。
サトリの場合は危険じゃないからであって、決して何をしても好き勝手しても許されるからじゃないんだから、間違えないようにね?」
今更ながら釘を刺されたサトリは首を竦めて今後作るだろう作品に危険物が無いのか確認する事にした。
転生者の影があったのにロクな発展を遂げていない理由がアニムスたちの監視があったからなのだと思うと、運よく拾われてある程度好き勝手させてもらったサトリは本当に幸運なのだろうと思うのだった。
アニムスたちは歴史の監視者とでもいえばいいのか、過度な干渉は基本しないらしく、特に転生者による改変を望まないという。
せめて衛生面だけでもどうにかして欲しかったとぼやくサトリだが、アニムスにとってはこのレイヴァン王国に寄り添っているようで監視に都合が良いから居るだけで、自分たちが乗り越えなければならない課題とみていたようだった。
サトリのした事に許可を出したのは、過去の異世界人たちと違いサトリが転生者であっても分別があったからだ、それがなければ理由をつけて止めていただろう。
とはいえ、面倒な世界の真実を知ってしまったからとはいえ、サトリのする事は変わらない。
「俺の夢はささやかな楽隠居なんで、世界を滅ぼしかねないものなんて作りませんよ。
作る時はちゃんと師匠に尋ねますから」
「まず作るという選択肢をなくすところから始めようね、このバカ弟子!!」
アニムスから何を聞いていたんだとばかりにサトリの頬が抓られ、悲鳴を上げる声が店内にと響き渡る。
重い様で気の抜ける話は終わり、サトリは旅の計画を立てる為に店を出た。
サトリと魔導人形たちのやる事は変わらない。
サトリは楽隠居の為の布石を、魔導人形たちは主の願いを実現させるために尽力する。
世が不穏な影を差そうという中、まるで知った事ではないとサトリは自分の目的に進んでいく。
そう、サトリの夢への路程はまだ始まったばかりなのである。
な、なんやて○ドウ!?
な展開でしたね、なんかすいません。
大方の伏線は張り巡らせたんで、後は回収作業をしていけばいいはずです。
次章は閑話集が続いて第三章という感じです。
閑話集は…何話にするか未定です、ストック切れたので。
読んで頂き、ありがとうございました。
感想お待ちしています。




