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サトリの異世界楽隠居譚  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第二章 転生(憑依)して超頑張ったら学園に入学しちゃったよ
15/46

第14話 勝負が成立しない

()=○○の心の声です

《》=サトリの心の声です

 


(サトリ視点)


 学園に入学してからの一週間、俺はそこそこではあるが有意義な学園生活を送っていた。


 フレアが何故か支給する装備品は何がいいかと尋ねると『執事服をお願いします』と要求したので一流の呉服屋に採寸してもらって、内側には俺の作った護符を縫い付けてもらった。


 魔導人形の執事…倒錯的なものを感じるね!!


 教室では既に遠巻きにされてしまっているがもうその辺は諦めた。


 どうせこの学園では前世のような体育祭みたいな優勝を目指して一致団結して何かに取り組むようなイベントはほぼない。


 そんなことよりも一つでも多くの知識を、技術を習得し成績に反映する事にのみ考えるのがこの学園のスタンスらしい、大変結構。


 ああいや、聞くところによれば学外実習と言う名の軍事訓練があるらしい、軍事国家でもないのにやるのはちょっと面倒だ。


 まぁ派閥抗争の所為で溝が深すぎて正直ドン引きするレベルなもんだから例年悲惨な結果しか残っていないが。


 高々ペーパーテストや基本中の基本の技術を丁寧にできた程度の点数で満足する程度の低い連中がやれ派閥の序列を争っている場面を見る度に失笑した。


 俺から言わせればそれこそ無駄の極みだと思う、派閥ごとに一致団結するのも結構だけど、付き合わされる身にもなってほしい。


 そしてその迷惑な派閥抗争一つに俺は巻き込まれた、俺の使っているこの大教室が原因で。


「―――即刻、この教室を明け渡しなさい。

 錬金術科の貴方が使うよりも、魔導師科の私たちが有意義に使って差し上げますわ」


 居丈高な態度と明らかに俺を見下したような口調の彼女―――派閥序列第三位、魔導師科二年アステリア・ラウシュ・ヴェスペリア伯爵令嬢が俺に迫ってきていた。


 デイジーと違って飛び抜けた美人ではないが化粧の濃い派手な美人だ。


 性格の悪さが顔に出ているのか、それを感じさせないのはもはや才能ではないかと思うくらい苛立たしく感じられるが。


 アステリア嬢の背後には取り巻きの魔導師数人の男女が控えている。


 底意地の悪そうな―――事実性根も覗いて見ると腐っていた―――笑みを浮かべていて大変不愉快である。


「…そうですか」


 まぁ、真面目に取り合うのも面倒なので適当に返しておく。


 この手の輩は真面目に取り合うから調子に乗るのだ、反対に不真面目に対応すると烈火の如く怒り狂って奇怪で面倒極まる思考回路をしているから性質が悪い。


 幼少時からちやほやされてきて世間一般の常識もそうだが、最低限の『道徳心』もない輩がそのまま体だけ成長した子供なのだ。


 どちらも面倒なら、自分の心にストレスが少しでも軽減される方を選ぶのが俺の第二の人生においての基本方針であった。


 とある第六天魔王あたりは『人生なんてあっという間なんだから、思い切ってやっちゃいなよユー(超訳)』なんていう言葉を使っていたらしいし、俺もそれにあやかろうと思う。


 前世で俺は少し良い人過ぎたと思う、限界になってからやり返してはこの世界では遅過ぎると悟ったからな。


 やりたい事は思い切ってやろう、その後の後悔はある程度想定しておいて、それを超えていたらその都度対処すれば良い。


 よって、この手の手合いに下す対応は『話はそれだけですか? それじゃあ』である。


 まぁ、もちろんその場合―――、


「お待ちなさい!!

 何ですのその態度は!?

 それが伯爵家令嬢であるわたくしへの態度!?

 なんて失礼なのかしら、これだから移民の孤児はさもしいのです!!」


 当然ながら噴火してしまうのだ、加えて堪え性のないガキなら尚更である。


 ていうか鏡を見て言ってほしいものである、誰がさもしいか。


 俺の品性は下劣でもなければ下品でもない、特にアステリア嬢の取り巻きと一緒にしないでほしい。


 かといって、俺は非常に良識的な大人なんで、性根のひん曲がった小娘一人に目くじらを立てたりしない。


「自分は正式に学園の許可をいただいています。

 それに異議があるのでしたら、学園に抗議なさってはいかがでしょうか?」


 ふふん、これが大人の対応ってやつだ。


 俺はただ使えそうな教室があればそこを使いたいと言っただけで、この教室を指定した訳じゃない、勝手に決めたのは事務所側である。


 結果的に広い研究スペースを確保出来たので丁度よかったから、今更他の教室に移るなんて気はない、機材もいくつか運んできて置いてるし。


 ぐうの音もつかない正論である、しかもそこそこ人の目があるこの場で言ったのだ、賛同する視線は多かった。


 さすがに空気は読めたのか、居心地の悪そうな伯爵令嬢―――もう名前呼ぶの疲れたし面倒―――は鼻息を荒くさせて『覚えていらっしゃい!!』などと悪役らしい捨て台詞を残して去っていく。


「………マスター、よろしかったのですか?」


 フレアの心配性がまた顔を覗かせているが、俺は問題ないと告げてケリィと一緒に学園を去った。


 それから三日後、魔導師科から俺が使用している大教室を懸けて魔術決闘が行われると担任のミシェル女史から言われ、やはり貴族の大半とは合わないな、とぼやいた。


 ―――さて、どう料理したものやら?



 * * *



 サトリがアステリア嬢たち魔導師科の学生と決闘をするという事はこの三日間で学園中ですぐに噂になった。


 噂の一つはサトリが使っている大教室は以前から魔導師科が使用許可申請をしようとしていた教室で、それを横からサトリが掠め取ったという、後付のきいた魔導師科に都合のいいものばかりで、明らかな情報操作の意図が見て取れたサトリは『勝っても負けてもこれは尾を引くな』とぼやいた。


「……貴方って本当に面倒を起こすわね」


 呆れが混じった声でサトリに話掛けたのはエプスタイン侯爵家次女、錬金術科次席のデイジーである。


 決闘が始まる直前、デイジーは所定の位置で佇んでいたサトリに声をかけたのである。


 決闘には両陣営で付添い人が必要なのだが、サトリには付き添いをしてくれる者がいなかった。


 だが、デイジーは付添い人ではない。


 派閥内の人間でないサトリに手を貸すことはできないと断られたのだ。


 そしてケリィにしても同じく、文官科に所属している彼も科の隔たりの所為で手を貸すのが憚られ、サトリはケリィに付添い人を頼まなかった。


 このままでは決闘を前に付添い人不在で不戦勝となる筈だったのだが、特例(・・)で担任のミシェルが名前だけでもという事で貸しを作ってしまったのである。


 高くついたとその時は憮然としていたが、不戦勝よりもマシとサトリはそう思い込んだのだった。


「酷いな、そもそもあっちが元凶なのに。

 俺ってば被害者だよ?」

「そうなるように仕向けたのは貴方でしょう?

 きっかけは偶然でも、何も決闘になるまで相手を煽らなくても解決策があったはず、それを貴方はワザとアステリアさんを煽って焚きつけた。

 …そんなにその魔導人形(フレア)実戦データ(・・・・・)が欲しかったの?」

「さぁ、何の事かなぁ?」


 韜晦するサトリだが、デイジーは確信を持っていた。


 エプスタイン侯爵家が手に入れた情報によれば、サトリの背後にいる執事服を着た魔導人形フレアは実戦経験がまだ極僅かだという情報が上がってきているのである。


 直接サトリに尋ねてみると、フレアの人工頭脳端であるアニムスの保有している魔導人形レトの戦闘経験が全て継承されてはいるが、対人戦闘(・・・・)においては未だないという。


 データとしてはあるが、実戦としては未だどうフレアが戦闘するのかをサトリは見ていない以上、手頃(・・)な実戦相手を欲しがっていたとしても不思議ではない。


「…憐れね、アステリアさんは。

 敗北までのシナリオがセットで学園中で恥をかかされるなんて」

「あれ、もうあっちが負けることまで予想してるんだ?」


 茶化すようにサトリがデイジーをからかうと、心底馬鹿にしたような声でデイジーが口を開く。


「その魔導人形が高々学生レベルの魔導師に負けるとは到底思えませんしね。

 そして魔導師としての格でいえば…貴方がたとえ戦ったとしても、彼女たちは勝てないでしょう。

 魔力が感じられないほどの魔力制御なんて、宮廷魔導師でも早々いないはずよ。

 錬金術師としての格も上、魔導師としての格も上、そして使い魔の魔導人形も上級冒険者レベル?

 負ける要素がないじゃない、これで負けたら貴方よほどのバカよ?」


 サトリの魔導師としての実力はこれまでの情報によれば中級魔法が確認されていた。


 フレアも火系統の中級魔法レベルまで行使したという情報もあるが、デイジーの目の前にいるサトリに中級魔法を使えるだけの魔力があるようにはデイジーは見えなかった。


 杖を使っての行使とは記載されていなかった以上は杖を使わずの行使というのが当然の見方というものだ。


 そうなればサトリが宮廷魔導師でも早々見られないほどの魔力制御による偽装というの可能性が出てくるだろう。


 何せ高出力の魔術刻印を刻んだ護符を大量に作れるほどなのだ、そうでなければ辻褄が合わなくなるからだ。


 師であるアニムスが補助をしたとサトリは以前話していたが、何から何までアニムスが魔力を貸している筈がないのは当然だろう。


 師とはいえアニムスも錬金術師だ、ずっと付きっ切りでサトリと共にいれば自分の研究が疎かになってしまう。


「…餌が飛びついてくるのを待っているだなんて…本当に性質(タチ)が悪い

(これだけ優秀なのに手に入れられないだなんて…憂鬱だわ。)」



 忌々しそうにねめつけるデイジーに、サトリは何の事やらと言わんばかりに肩を竦めていた。


 内心では『名探偵デイジーだね、いやー名推理だよ』と褒めていた。


「―――それがサトリですからね。

 しかも素でやってるんだから将来はどんな悪人になるのやら、義兄としてサトリの将来が不安だよ」

「―――えっ!?」

「あれ、ケリィ義兄さん?

 どうしたのこんなところにまで来て?」


 認識阻害の魔道具を付けていたケリィに気付かずデイジーは素っ頓狂な声を上げて思わず口を抑え周りを見るが、喧騒でデイジーの反応に気付いた者はいない。


 サトリは魔道具の製作者な上その効果から除外されていてケリィが近付いて来ているのに対してすぐに気付いていたが。


「決闘の付添い人の件だよバカ。

 なんでも担任のミシェル女史に高い貸し作って決闘に臨むみたいじゃない?

 そんな高い貸し作らなくても僕に声をかければ良いのに、どうして呼ばないのさ?」


 不機嫌なケリィの態度にサトリも誤魔化しきれなかったのか、ゆっくりとだが口を開いた。


 都合が良いから、それに科の違うケリィに声をかければ派閥から睨まれて学園生活に支障が出るかもしれないと懸念していたからだと話した。


 デイジーが『実戦データのことは話さないのね』と目で語りかけていたがサトリは無視した、ケリィの追求にそれどころではなかったからだ。


「そう、ならその心配はいらないよ。

 その派閥から付添い人をしても良いって許可をもらってきたからね」

「はぁっ!?」

「何ですって!?」


 ケリィの出した羊皮紙には確かに派閥の長である文官派筆頭のケルヴィン公爵家の紋章印が押されていて、内容を要約すれば『錬金術科と魔導師科との決闘だけど、サトリの方は文官科から付添い人出すね』と記載されているのである。


 対価として、勝っても負けてもサトリは一度だけケルヴィン公爵家が主催しているお茶会に出席しなければならないと記載されていて、いってみればミシェル同様貸しを作ってサトリを派閥に引き込もうとしていたのだ。


「ああ、ケルヴィン公爵家のバルアミー様は『顔合わせをしたいだけだから、誘うのはまた別の機会で』って言っていたし、大きい貸しじゃないと思うよ。

 まぁ公爵家だし、将来サトリが何か大きな事をする時少しでも顔の利く知人がいればと思って交渉してみたんだよ」


 サトリはケリィの言葉が真実だと知ると、近くに来ていたミシェルにすぐに付き添いの件を断わりにいった。


 何を要求されるか不明な貸しと、ただ話せば貸しがなくなるのではあればどちらに頼むかは当然である。


 事情を説明するとミシェルは相手が公爵家となると分が悪すぎると潔く諦めた。


 ケリィを恨みがましく睨み、舌打ちして観戦を決め込むと観衆の学生たちと一緒に決闘が始まるのを待つのだった。


「ケリィ義兄さん…、またえげつない論法で譲歩を迫ったね?」


 サトリはケリィの心を覗いて、バルアミーに容赦ない論法で斬りかかり譲歩を勝ち取ったケリィに未だ見ぬバルアミーに同情した。


「なに、簡単な話だよ。

 こちらから貸しを作ってサトリと話ができる席を用意しますよって提案しただけだよ?

 僕はバルアミー様とサトリに貸しを作れて、バルアミー様はサトリと話を出来る機会を得る。

 しかも貸しを作っているからバルアミー様の方が有利に話を持っていけるように取り計らっている。

 サトリは決闘の付添い人がミシェル女史から僕になっているし…ほら、みんな得してるでしょう?」

「……一人だけケルヴィン公爵家に貸しを作っているとんでもなく得をしている人がいるのだけど」


 引き攣った顔をしてそう口にしたデイジーの言う通り、ケリィだけ過剰な得をしていた。


「それくらいの役得しないと、商人は無料(ロハ)で仕事をしないんですよ?」


 悪気なく口にしたケリィは確かに商人の息子だった、一人勝ちしているとろけた表情をしたケリィにサトリは『こりゃ勝てんわ』とぼやくのだった。


「……まぁ、話をするだけならいいか。

 どうせ首を縦に振らないってケリィ義兄さんは分かっていてやってるんだろうしね」

「まぁね、でもそれは首を縦に振れないような提案しか出来ないバルアミー様側の問題であって、機会を作った僕には関係ないよね?」


 お膳立てをした以上、舞台を演じ切れるかは確かに役者の力量次第である、これも同様だろう。


 それをお互い何の打ち合わせもせず、見た目だけ派手な舞台を用意したように見せかけて、実は結果の知れた空虚な舞台と気付いた時にはもう遅い。


 相手をいい気にさせておいて中身のない皮だけをよこし、利益だけしっかり持っていく。


 完全に詐欺の手口である。


 デイジーはサトリが派閥に属さない事は分かっていたが、こうも容赦のない仕打ちを見せられると流石に他の派閥ではあるが同情してしまった。


「…本当に、貴方たち揃ってえげつないわ」

「どうも」

「ありがとうございます?」

「だから、ほめていないわよ!!」


 憮然としながらも一礼したケリィとワザと茶化しながら感謝の言葉を口にするサトリに、デイジーが吼えたのだった。


 そして決闘開始十分前、アステリアたち魔導師科の学生たちがやってきた。


 だが、会場からは魔導師科の学生たち以外拍手などはない。


 明らかに場違いな装備(・・)でやってきた彼女たちに、誰もが顔を顰めていたのである。


 人数は六人とサトリとフレアに対して三倍の数で来ているのをケリィとデイジーが顔を顰めている。


 サトリは事情をよく知らない所為か、首を傾げていたが。


「…あらあら、まるで戦争ね。

 あの装備、型落ちしているけど少し前まで軍が使っていた軍属魔導師の正式採用装備、魔導甲冑よ?

 ただの決闘にあれを持ち出すとか非常識…というか、正気を疑うわ。

 …と言いたいところなのだけど、サトリにはあれくらいがちょうどいいのかしらねぇ」


 魔導師が戦場に出る際、よく懸念されているのが防御面だ。


 飛び交う矢に当たればろくに鍛えていない魔導師ならば倒れてしまうし、詠唱は中断されてしまう。


 接近されればなおさらだ。


 それを軽減する為、魔導師の為の鎧を国家錬金術師たちが開発したのが魔導甲冑だ。


 軽く防御に優れ、魔導師の為に術式強化まで組み込ませた一つ一つが超高価な鎧である。


 デイジーの言葉通り戦場で使うならともかく、決闘に持ち出すなど正気を疑うようなな代物だった。


「へぇ、あれが?

 うわ、年下の子供一人に大人げないなぁ。

 魔導師科の人たちって恥ずかしくないのかな?

 まぁ、あれだけガチガチに装備固めていてもサトリには敵わないだろうけどね」

「仲良いね二人?」


 サトリの敗北を微塵も疑っていないデイジーとケリィにサトリは二人に憎まれ口を叩き顔合わせに向かっていく。


 その後ろをケリィがついていく、これから決闘を臨むとは思えないほど軽やかで、これから行われる決闘の事など何の不安も感じられない足取りだった。


 フレアは若干だが辺りを見回していて、何か起きても全て対処してみせるとばかりに周囲を警戒していた。


「あらあら、わざわざ時間をあげたのに護符を付けた程度の制服と使い魔の魔導人形だけ連れてきましたのね?

 わたくし達の装備をご覧になって?

 一代前だけど九十六年式の軍属魔導師の正式採用装備ですのよ?

 彼我の戦力差は一目瞭然ですわ、棄権するなら今なら間に合いますわよ?」


 甲冑越しとあって聞き辛くなっていて、ちらりと兜からはみ出ている金髪がアステリアなのだと気付くが、素知らぬ顔をして返す。


「あ、何か言いました?

 ちょっと審判の方に決闘のやり方聞いていたんで、そちらの言葉は聞こえませんでした」


 サトリはアステリアの挑発を挑発で返し、簡単に乗せられたアステリアたちは猛然と食って掛かる。


 だがサトリは『そうですか、すごいですね頑張ってください』と他人事のように話を畳んでしまった。


 審判をしていたのは魔導師科の講師で、明らかに判定に不平等が生じそうな采配ではある。


 審判がアステリア側に通じていたとはいえ、サトリとしては一向に構わなかった。


 要は勝てばいいのであるといわんばかりに相手の実力を見極めていたからだ。


 たとえ装備が軍からの払い下げの一線級装備であろうと、自分の魔道具がそれに劣るはずがないと確信していた。


 一線級だとしてもあちらは数打ちの量産品、サトリの作った護符は一つ一つが特注品なのだ。


 見た目だけに関していえば、アステリアたちの魔導甲冑とサトリとフレアの普段通りの服装とでは温度差が天と地ほどある。


 だが質と量、そして練度においてもサトリたちが敗北する要素はない。


 懸念があるとすれば魔導人形のフレアだが、万全の状態で調整しているので不安視はしていない。


 ただ、うっかり(・・・・)加減を間違えて殺してしまわないかという心配は若干だがあった。


「―――どう潰してやろうかなぁ」


 そう口元を歪めたサトリを見たケリィは後ろに下がって行きながら小さく呟いた。


「―――可哀想に、サトリみたいな規格外に出会わなかったらいつまでも天下を夢見れたろうに」


 同情をしながらも、ケリィの言葉には険が宿っていた。


 そして決闘が始まる。


 何から何までサトリが書き出し、誘導し、酷いオチまでついた笑劇(ファルス)が始まった。


 もっとも、サトリと敵対してしまった彼女たちにとっては悲劇の始まりでもあるが。




読んで頂き、ありがとうございました。

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