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サトリの異世界楽隠居譚  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第一章 転生(憑依)したけど生活やばいんで頑張った、超頑張った
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第09話 OHANASIしました

()=○○の心の声です

《》=サトリの心の声です

 


(サトリ視点)



 デイジーの家に仕えている壮年の執事―――バルトと言うらしい、セバスチャンじゃなかった―――のが俺を呼んできたので、俺は彼の後ろをついていき、個室へと案内された。


 入ってみるとあの三人娘はいない、あの調子でぎゃんぎゃん騒がれたらさすがにこちらも穏当に済ます事も出来なかったので、助かった。


「…きたわね」

「はい、ようやくお話が出来るという事なので」


 わざと『ようやく』と入れたのは『さっさと始めてくれないかな、俺さっさと帰って用事があるんだよ』と気づかせる為だ。


 別に気付かなくてもいいが、俺の口調が固いのには気付いているみたいで、ため息を付きながら俺に着席するのを促した。


 バルトは気付いたようで視線だけで俺を睨んできたが、俺は気付いていない振りをする、護衛も兼ねた執事という俺の見立ては当たっていたようである。


「…まず、貴方には数々の非礼を当主に代わってお詫びするわ。

 本当は兄である当主に直接会って欲しかったのだけど…監視の目があったり、突然の当主交代で執務で忙しくて、まだ会えないの。

 また時間を作って重ね重ね申し訳なく思いながらも会って欲しいのだけど、私たちの謝罪を受け入れてくれないかしら?

(正直これで受け入れてもらえなかった場合、もう金銭でしか賠償することしか出来ないのだけど…噂だとお金はこの年で稼いでいるし、賠償金を支払って許してもらうのって世間体もあるからしたくないのよね…とは言ってもこれくらいのことしないと宮中からの無言の圧力が止む気配もないし…許してくれればいいのだけど…。)」


 うん、反省しているようで大変結構。


 本心のようだし、俺は別段この侯爵家は許してもいいと思っている。


 侯爵家だけ(・・)だけどな。


 まぁ、性質の悪い犯罪行為も平然とする貴族はこれ幸いとばかりに取り潰されてこの場にいないから謝り様がないからどうでもいい。


 問題は生き残った貴族の方だ、こちらはいくら背後にこの侯爵家がいたとしても、実行犯が謝りに来てもいないのに許す事は出来ないしうやむやにされたらたまったものじゃないからな。


「はい、自分はエプスタイン侯爵家からの謝罪を受け入れます。

 当主様には…その、ご面倒かと思いますが、またの機会でいいので一言頂くだけでもいいです。

 面会の機会をいただければ伺いますので、よろしくお願いいたします」


 これは侯爵家からの謝罪は受け入れるけど、他の貴族からは受けていないのでそのままだよ!!


 という事を言外に伝え、更にあちらも当主からまた謝罪に来るのなら一言言うだけでもう大丈夫で、怒っていませんよという事を伝えてみました。


 実際俺には何の被害もないし、やり返したの師匠だから俺が謝罪されてもあんまり実感湧かないんだよね。


 師匠がなんていうかは分からないけど…まぁあの人基本喉元過ぎたら忘れる系の人だし、大丈夫だろう、再燃しない限り。


 俺の謝罪の受け入れに硬くしていた表情を崩したデイジーはほっと一息つくと、『よかったわ』と人心地ついたのかバルトに紅茶を淹れるように命じていた。


 ……あれ、これまだお話続くの?


「本音を言えばね、本当に貴方には悪い事をしたと思っているわ。

 でもこういう場で、こういう形でしか謝罪出来ない貴族の立場でなければ、もっと体を張った謝罪もあったと思っているくらい、貴方に…貴方たちに対してそう思っているのよ」


 なんと、このお嬢様貴族の令嬢じゃなかったら体張って謝罪してくれるんだって、なんてエッチな…いや、冗談だけど。


 実際には土下座ね、DOGEZA!!


 何でこの風習あるんだろうね、とっても不思議だ。


 たまに聞こえてくる前世関連の文化って絶対異世界人…俺のご同輩が関わってるんだろうな。


 というか、土下座の文化伝えたの絶対俺と同じ国の人間だろうな、何せ最上級の謝罪の方法だし。


「…私、昔から勉強や魔法の出来がよくて、お父様…先代侯爵から大層可愛がられていたの。

 錬金術もそう…ちょっと胡散臭くもあるけど、幼い私は錬金術も学んで…まぁ貴方ほどではないけど、それなりに才能があるように見えたのね。

 そんな私をお父様が貴方のお師匠様…賢者アニムス様の元に連れて行ってぜひ弟子に…って、結果は貴方も知るとおり断られたわ」


 はぁとため息をつくデイジー嬢…なんだろう、いきなり自分語りし始めたよこの()、しかも軽く自慢入ってるし。


 ていうか俺断られたの知らないんだけど、俺のいない時の話されても困る。


 あれか、ドラマでよくある犯人が犯行を行ったのはこういうのが原因だったんだっていう尺稼ぎ的な、同情を買う的な、涙流させる的なあれですか?


 どうしよう、俺あれすっごく嫌いだからこういうの苦手なんだけど。


 いやだってそんなの被害者からしたら知った事じゃないし、むしろ人間多かれ少なかれ悩み事とか面倒的なものは抱えているし、そんなのを爆発させて被害撒き散らされてもこっちはいい迷惑というか…いやホント聞かされる方の身にもなって欲しいよ。


 それからも延々と彼女の謝罪…というか、鬱憤晴らしのような愚痴は続いていった。


 なんというか、お家の愚痴を俺に聞かされてもなぁとしか感想が出ないような事ばかり喋られて、俺は何度目か分からない紅茶のお代わりをしていた。


 …にしてもうまいなこの紅茶、やっぱ淹れ方一つで味って変わるんだな。


 うーまーい。


「…で、私もいつか賢者様ほどじゃないけど、人々の役に立ちそうな魔道具の開発なんてしているのだけど、魔道具の開発ってすぐには思いつかないし、去年からいくつもの特許を出されたあの賢者様の頭の構造が非常に気になるのよ。

 一体あの方の頭にはどんなものが詰まっているのとか、あんな画期的な発明をして次はどんなものを発明するのかとか!!

 だから是非とも貴方に口添えして欲しくて、十分…いえ、五分でいいわ。

 五分でいいからあの方と錬金術のお話を出来る機会が欲しいのよ!!

 …って、聞いていますの貴方?」

「キーテマスヨー?」


 んー、師匠の頭の中ねぇ、さすがに俺には言えないかなぁ。


 けど発明に関しては大元は俺だし、師匠には授業料とか護衛代とかのお礼にあの特許は渡してるから…具体的にいえば俺が言えばいいのかなぁ。


 ああ、けど俺が実は開発者なんですとか言えばまた面倒事になりそうだし、なんとも言えないな…少なくとも今のところは。


 師匠と話がしたいねぇ…あの人基本外面はいいし、言えばどうにかなるかな?


 けどこのお嬢ちゃん黒幕さんのいた貴族の家族だし、うっかり思い出したりしたらまた再燃してお話できなくなったりするかも?


 …最初から断れば話も終わりになるかな?


「…申し訳ないのですが、師はあれ(・・)以来極端に人と会うのを控えていて…店の接客も自分がしてる次第でして。

 確約の方は出来かねます」


 遠回しに、『お前らがやらかした所為で師匠が貴族大嫌いになって謝罪受け入れる以前にさせないスタンス取ってるから、行っても会えないよ』と言ってみると、目に見えてしょぼくれたデイジーに、根気よくいつか会えるといいなと心の中で白々しく応援した。


「…そうね、どのツラ(・・)下げて貴方のお師匠様でもある賢者様に会えばいいのか、冷静になってみれば分かることよね。

 どうかしていたわ、ごめんなさい」


 あ、一瞬この娘言葉遣い荒くなった、素が出てますよー。


 いいな、結構さばけていて好感が持てる、面白い。


「…ところで貴方、変わった魔術刻印のしている護符をつけているけど、それってどういう効果なの?

 防御系なのかしら?」


 わぁ、この娘切り替え早いなもう話が変わっちゃったよ。


 師匠に会うのがダメなら、目の前にいる弟子の俺に照準変えやがった。


 どうしよう、この魔術刻印…漢字について話してもいいのかなぁ?


 んー別に問題はないよな、どうせ教えた所できちんと理解していないと刻印刻んだところで発動しないし。


 今までの魔術刻印はいわば低出力の汎用型。


 基本間違わなければ発動するし、今市場に出ているのは全てがそういう代物だ。


 で、俺が開発した魔術刻印は高出力の特化型だ。


 一つ一つの意味を理解していないと発動しないという意味不明さに加えてかなりの魔力を注がないと発動もままならないという面倒臭さがある。


 俺としては汎用型も悪くないが、あっちは刻むの面倒だから基礎しか覚えていない。


 まぁ、別段服の下が護符だらけになる以外被害なんてないからそこまで汎用型にする必要もないんだけどね。


 着心地なんて命に引き換えにできないからな。


 今付けているのは毒とか麻痺とかといった体に害のある異常の発見および排除の護符が多数。


 あとは上級魔法を至近距離でも完全に防げる護符が多数。


 剣の達人相手の一撃を完全に防げる護符が多数。


 これくらいか?


 あとは…対人戦に特化した護符が多数だな、使い切りのだけど。


 これは正直王都では使いたくないな、やったら間違いなく家なんて軽く蒸発するし。


 俺の作る護符って力の加減が難しいのが難点だ、もっとうまく調整出来るようにしないとな。


 俺はデイジーに今身に付けている護符が自分が開発した魔術刻印で、基本的に防御に特化した仕様になっているとデイジーとバルトに言うと、二人揃って固まってしまった、何でだろう。


「……あなた、その年で魔術刻印を彫れたの?」

「正確には、魔術刻印を彫ったのは自分で、魔力を込めたのは師匠ですけど」

「…新型の、しかも高出力の性能を実現させたですって?」

「まぁ、今のところ俺と師匠しかできませんけど」

「ちなみに、私にもそれ出来たりするのかしら?」

「彫る刻印の意味を理解していないと発動すらしないっていう難点がありますが従来のものも似たようなものですし、覚えるのにはかなりの時間を必要としますね」

「………貴方、今何歳だったかしら」

「今年で十一になります」


 何だろう、デイジーの表情が固まってる。


 なんとなくバルトに視線を向けてみると、困ったような表情をしていた。


 部屋に静寂が訪れて、これで話が終わったのか止まっていたら、デイジーが立ち上がってなにやら魔法をかけ始めた。


 あ、これ知ってる、室内の音を外に漏らさない為の風系統魔法だ。


 あれ、これは、ちょっとやばいことになるか?


 と不安になる俺だったが、それは完全に杞憂となった。


「ふっざけるんじゃないわよあんのクソおやじいいいいいっ!!」


 ばしんと目の前にあるテーブルを手が痛むのを無視して殴りつけるデイジーの豹変振りに、俺は思わず目を丸くして固まった。

 バンバンと、それはもうバンバンと机を叩きながら自分の父親への罵倒を絶え間なく発射するデイジーに、俺はただドン引きしていた。


「勝てるわけないじゃないこんなの(・・・・)と!?

 私だって今の魔術刻印彫るのに、一日に五文字とか調子が良くても六文字くらいしか彫れないのよ?

 なのにあっちは新型を開発した上に何よ高出力ですって?

 お師匠様の魔力使っていても、高出力を実現させる魔術刻印なんて一文字でも彫ったら今の私でもあっという間に倒れるわよ!?

 それを何、ちょっと見えるだけでも二十はあるわよねその護符、実力が違い過ぎるでしょう!?

 嫉妬に燃えるより先に羞恥心で燃え尽きるわよ!!

 それであのクソおやじあんな真似をして……これじゃあただの恥の上塗りじゃない!!

 どうしてくれるのよぉっ!!」


 ……ドウスルンダロウネー。


 この状況(カオス)をただ眺めている俺は助けを求めるべくバルトに視線を向けたが、いつの間にかバルトは部屋の隅へと移動していた、逃げやがったなあの執事仕事しろや。


「貴方、錬金術で何か苦手なものないの!?」

「へ?」

「苦手な技術よ!!

 専門性の高い生物学や、調薬といったもののことよ!!

 今ここでばっさり切られて諦めるから、正直に言いなさい!!」


 なんだろうこのお嬢さん、自殺願望でもあるんだろうか?


 つまりこの娘あれか、どうあっても実力の高い錬金術師である俺が現状自分では敵わない相手だと確認しようとしているのか?


 この調子なら思い余って本当に自殺はしないだろうけど、余計に暴れ回りそうで正直に言うのは怖いんだけど…言わないといけないんだろうなぁ。


「えっと、今のところ苦手なものはない…ですね。

 生物学も解剖の時ちょっと検体が臭いとか以外、困る事もないですし…あ、そういえば本格的な試験勉強を始める前に合成獣(キメラ)作ったのは面白かったです」


 うんうん、あれには驚いたね、まさかあんな事して本当に生物が生きているとか気持ち悪いとか思う前になんて摩訶不思議な、みたいな感じで感動してたし。


 キメラというのは魔法生物のことで、戦闘能力に自信のない魔導師が護衛兼戦力とする使い魔みたいなものである。


 ちなみに俺が作ったのは(ヌエ)もどきだ。


 前世にいたとされる妖怪の一種で、サル…はいなかったのでパンチモンキーの顔、タヌキ…はいなかったのでシバルヌスの胴体、トラ…に近い猫のシャドウキャットの手足を持ち、尾は…バンブースネークと呼ばれるヘビ、声帯はトラツグミ…はいなかったのでそこらへんの鳥の声帯という五種類の生物を掛け合わせた超生物である。


 身体能力は素材が良かったのか生まれた当初は中々元気で強かった。


 正直この五種類の素材って間違いなくDNAとか配列違うのにどうやってか生きてるんだよね、まぁもう衰弱死寸前だけど。


 キメラを長生きさせるんだったら合成するのはせいぜい二種類にして、拒絶反応を最小限にするのが一番らしい。


 俺が作ったキメラは現在四ヶ月ほど生きている、死んだら墓でも作ってやろうかな。


 いや、いっそ肥料にした方が費用対効果がもっと…ああけど薬品結構使っているし危ないからやめておこう。


「キ、キメラなんて…しかも五種類?

 それが四ヶ月も生きるなんて……先程のミシェル講師でも四種類のキメラを生み出して二ヶ月生かした事で生物分野でも高く評価されていたのに…ありえないでしょう」


 ついには全否定入りましたよもう。


 ていうかミシェルさん、あの人専門が生物だったんだね、しかもキメラか…あぁ、だから生きた検体欲しがってたんだね、キメラ作るとなるとやっぱ鮮度が大事だし。


 キメラを製造するにあたっては合成する生物が多ければ多いほどその手の錬金術師の腕前が知れるらしい、それを考えると五種類は多い方なんだろうな。


 綺麗に縫合すれば何とかなったんだが…小器用なのが幸いしているのかねこれって。


「まぁ、出来たものは出来たので…見に来ますか?

 もうすぐ死んじゃいますけど」

「だから、どの面下げて貴方のお師匠様に会えばいいのよ!?

 っていうか、さり気に自慢しているでしょう!?」


 はい実はちょっとしてます…とは言わない、さすがに言ったら手が付けられそうにないしな。


「…もう、いいわよ。

 ここまで曝け出したんだし、貴方も口調崩しても構わないから何か言ってくれない?

 外には聞こえないしいいでしょう?」


 ようやく落ち着いたのか、デイジーが無礼講を許してくれるとの事なので、念の為にバルトにも顔を向けて、大きく肯いたので口を開くことにした。


「じゃあ…正直に言わせてもらうけど…」


 どうせぶっちゃけたところで今更どうしようもないからな、言いたい事は言わせてもらおうか。


「謝ってもらうっていう誠意を見せてもらったんだし、個人的にはこれで過去の事は水に流してもいいんだよね。

 まぁさっきも言ったけど、他の貴族の連中は謝りにもきていないし許す気はないかな。

 デイジー様の周りにいた三人娘とかも実行犯の親族なんでしょう?」

「よく分かったわね、この国では文官の名門に騎士の名門に魔導師の名門、そして錬金術の名門の四種類の名門名家に分けられているのよ。

 私のいる侯爵家は建国当初から王家に仕えてきた魔導師の派閥から分派した錬金術師の家系で、今回の事がなかったらいまでも国内の錬金術師たちの総元締めとして君臨していたのよ、面目丸潰れで他の名門貴族たちから白い目で見られちゃってるけどね。

 …で、あの三人は私が幼い頃から私の補佐として仕える為に送り込まれた娘たちでね、私の為なんて言っておきながら、実は家の都合と自分の都合を優先する面倒極まりない娘たちなのよ」

「今回の事をきっかけに切り離さなかったの?

 正直頭悪そうで何度もイライラしたんだけど?」

「重ね重ね申し訳なく思うわ。

 けど、貴族って血の繋がりが重要で…遠縁の遠縁、そのまた遠縁に一応だけど侯爵家の血が流れているのよ。

 だからギリギリ当主の交代で済んで、それ以上の処罰が出来なかったのよね。

 彼女たち自身が何かしでかせば私から切り離す理由になるのだけど…彼女たちの頭の悪さなら、今回の受験に落ちてそれを理由に切り離せるかもしれないわ」

「なるほど、それじゃああの三人が落ちる事を祈っているよ。

 個人的にデイジー様面白いから嫌いじゃないし、ほとぼりが冷めたら師匠のお店に来るといいよ。

 弟子にするのは難しくても、話し相手にはなってくれるかもね?」

「そう、ならもう少し時間をかけてそこそこ見られる錬金術師になってから挨拶しようかしらね」


 きつい目つきをしているが、笑うと意外と可愛らしい事に気付いた俺はいつも気を張るって大変そうだなぁと思わず声をかけた。


 するとデイジーは当然でしょ、と困った風に笑って見せる。


 あ、ちょっと可愛い。


「貴族っていうのはね、失敗してはいけないのよ。

 出来て当然、恥ずかしい事なんてない、本当は裏でドス黒い事をしていても清廉潔白ですって演じていなければならないの。

 言葉尻を逆手にとって追及する者や噂を流して相手を貶めたりする者…そんな者もいるわ。

 そして演じるというのなら…王族が最たるものね。

 殆どの王族の方々は個というものを削ぎ落として国を動かしているわ。

 落第している王族なんて、来年やってくる第五王子くらいよ」


 何でも現在あのタヌキ…レイクロードには五人の王子と三人の王女がいて、今年は第四王子が、来年は第五王子が学園に入学するとの事だ。


 既に第三王女エリザベータという女性が最高学年で生徒会長をしていたりと、面倒事の種がちらほらと見えていた。


 ということは、今日第四王子がこの学園に来ていたかもしれないという事なのか、会わなくてよかったな。


 他にも今年は他の名門貴族の中でも筆頭格の家系から何人もの子息子女が来ているらしい、何だこの名門ラッシュは。


 …早まったかなぁこの入学、面倒ごとに自分から突っ込んだかもしかして?


「……もしかしてこの学園、派閥抗争とかあったりするのかな?」

「ええ、もちろんあるわよ?

 少し前まで私たち錬金術派は第二位だったのだけど…今回の件で当分最下位に居続けるでしょうね。

 ちなみに王族の派閥が最大勢力で、歴代一位を取り続けているわ。

 ああそれと、心配しなくても派閥に誘ったりはしないわよ?

 既に私たちの派閥のいる貴族たちに、貴方に対しては不干渉を貫くように通達がしてあるから。

 …その代わりといっては何なのだけど」

「ああ、分かってますよ。

 他の派閥に誘われてもついていくなって事でしょう?

 俺そういうの苦手だし誘われても断るから。

 どうせついていったって平民だからってバカにする貴族ばっかりだろうし、進んで不愉快な思いをする趣味はないよ」

「否定出来ないのが悔しいところよね、古き良き貴族の矜持なんて維持している貴族は今では少ないから。

 うちの派閥も腐敗が著しくて困ったものよ…まぁ今の当主、お兄様はその辺り厳しいから容赦しないし、何年かしたら腐敗を一掃するかもしれないわね。

 どれだけの貴族が生き残っているかは知らないけど」

「まぁ頑張ってくれると下々の人間としては助かるな、とりあえず迷惑にならないよう気をつけて派閥抗争してね」

「善処するわ」


 そうして、俺たちの話は終わった。


 正直今日の収穫といえば面白いデイジーと最近の世情や貴族の派閥関係が知れたことくらいか。


 ケリィにも教えておかないとな、最近の力関係は孤児だと知る事なんて出来ないだろうし、実際頭の良いケリィに聞けば色々と安心できそうだしな。




読んで頂き、ありがとうございました。

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