プロローグ だがしかし、俺は転生した!!
皆様こんばんわこんにちは。
カクヨムというサイトで投稿していた今作をこちらで再投稿する事になりました。
次は深夜12時に投稿する予定です。
目を開けると、埃っぽく小汚い天井を目にした彼、山野サトリは胡乱な目で天上を見つめていた。
「うっく…ここは?」
青年の名は山野サトリ、二十二歳職業学生である。
海外の大学を卒業間近でふとした事件をきっかけに、政府のお偉方の知ってはいけない事実を知り、更に運の悪い事に相手方にもバレて口封じに葬られた不運な青年である。
散々拷問され、何もない貸し倉庫で血痕の痕が残っている恐ろしい場所で最期は消音機付ピストルで止めを刺された。
額を貫いたぞっとする感覚を思い出した彼は体を震わせた。
初めての慢心でここまでの失態に最期は涙した彼だが、どういう訳か生きている。
「―――あっ、お兄ちゃんが起きた!!」
どこか舌足らずな声が聞こえた。
サトリが声の下方向をよく見てみると、ボロい開けた扉から少女が首だけを出して見つめていた。
「…なぁ、ここは…」
だがしかし、少女はサトリの言葉を最後まで聞かず、首を引っ込めて走っていく。
「シスター、シスターアニョーゼ!!
お兄ちゃんが起きたよっ!!」
名前からしてイタリア系かと思われる女性を呼びに行った少女を追いかけず、サトリは周囲を見回した。
てっきり病院だと思っていたサトリだが、見回してみるが点滴や人工呼吸器といった機器もない。
よく観察してみれば、ここには照明もない、文明の利器というものが欠片も見当たらなかった。
加えて言えばここはICUとは思えないほどに小汚く、不衛生な小屋かと思うほどの場所だった。
しかも窓はなく木製の開窓だ、ガラスなどどこにもない。
そして不思議なことに、少女はどう見ても白人系の顔つきをしていたのに、どういう訳か日本語で話していた。
「という事は…帰ってきたのか俺は?
いやいやいや、ありえないだろうそれは。
一般人の俺が、お偉方の秘密を知ってその記憶を保持したまま強制送還だと?
整合性が取れない、ここはおかしい」
思わず額に手を当ててさすってみるがそこには弾丸の跡すら感触がないし、汚い布地―――いつの間にかボロ布を纏っていた―――の服らしき物を捲り上げたが、そこにはブラックジャックと呼ばれる殴打武器でしこたま殴られ真っ黒に変色していた腹はなく、アバラ骨の浮き出たか細い体しかなかった。
しかもこの時、サトリはある事に気付いた。
「傷がない上に…俺の体が縮んでいるだと?」
顔をペタペタと触ってみたり、体を触って思い切って立ち上がってみる。
「…俺の身長は確か百八十を超えていて、体重は六十五キロを前後していたはずだが…こうしてみると大体一メートルを少し越えたくらいか?」
サトリは可能性として、人体実験で脳だけを子供の体に移植されたりしたんだろうかなんて有り得ないな想像をしてみて落ち着かせてみるが、どうにも理に適わないと思いその考えをすぐに破棄した。
そんな画期的な技術の発表に気付かない訳がないだろう、表沙汰にされていなければその限りではないが。
「ナンセンス通り越して滑稽な想像だが…これはまさか―――」
「―――目が覚めましたか?」
―――と、そこに現れたのは修道女だ。
理知的な碧い瞳とストレートの金髪、禁欲的な修道服にも拘らず主張の激しい色香を誘う体型に思わずサトリは生唾を飲み込む。
「あ…ええっと」
何と言えばいいのか考えが纏まらないサトリにそんな時、ある声が聞こえてきた。
彼にしか聞こえない、その声が真実を不意に突きつける。
(―――この子、やっぱり戦災孤児なのかしら?
見たところイーブル系の見た目をしているのだけど…可哀想に、ご両親と離れ離れになったのね)
それはあのシスターの声。
俺の頭の中にはシスターの考えている事が延々と流れてくる。
そしてその情報の結論として、サトリは思った。
どうやらここは自分は知らない『異世界』で、どうやら転生―――生まれ変わってしてしまったらしいという事を。
こうして、山野サトリの第二の人生は始まった。
読んで頂き、ありがとうございました。
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