三幕構成は、二話完結の前後編アニメだ。
■三幕構成は、二話完結のアニメ
前話で、三幕構成というのは、1クールアニメの二話完結型ストーリーなのだと言いました。
二話完結アニメは、真ん中に入るCMで区切ると、一話前半・一話後半・二話前半・二話後半のちょうど四つに分かれます。
そのため、三幕構成を理解する上で非常にわかりやすいのです。
一話前半でアバンが始まり引き(=ターニングポイント1)を作ってCM入り。
CM明けから引きを受け取って一話後半。一話最後でいったん一区切りつけて(=ミッドポイント)次週へ続く。
二話前半冒頭はテコ入れから始まって、引き(=ターニングポイント2)入れてCM。
CM明けの二話後半でクライマックス展開入れて終了。
といった具合です。
■ためしに、二話完結アニメのプロットを考えてみる
より具体的に説明するために、例示のプロットを作ってみました。
一話前半 : 主人公は、学生。ヒロインの口車に乗って、ひょんなことから学内対抗ロボットトーナメントに出場することに。さあ、ロボットトーナメント開催だ!(ターニングポイント)
一話後半 : いいかんじに勝ち進むが、ライバルっぽい奴が登場し、ぼこぼこに負ける(ミッドポイント)。
二話前半 : 途方に暮れる主人公の前に、謎のマッドサイエンティスト(ヒロイン要員2)が登場し、これこれするのじゃーと特訓することに(テコ入れ)。さあ、再戦だ!(ターニングポイント)
二話後半 : 熱いラストバトルシーン。そして、勝つ。
みたいな。
ありきたりでちょっとくさいですが、いかにもありそうです。
次の三話目では、また別のヒロイン要員3が出てきたりするんでしょ?(偏見)
皆さんも、どうか自分の脳内データバンクの中から、それらしいアニメ映像を重ねつつ上記の二話完結アニメをイメージしてみてください。
多分、割とあるあるなかんじでイメージできるんじゃないかなと思います。
つまり、これが我々の最も身近に転がっている三幕構成なのです。
■二話完結アニメで考えると、ミッドポイントが説明できる
このアニメ二話完結型ストーリーで三幕構成を理解するのは(以下、二話完結アニメメソッドと呼びましょう)、三つの理由で超わかりやすいんじゃね?と個人的に思ってます。
まず、ひとつはミッドポイントを説明できる点です。
二話完結アニメということは、一話目の最後と二話目の最後で、それぞれの回のオチをつけなければなりません。
この一話目のラストが、ミッドポイントになります。
かつ、二話完結アニメということは、一話と二話の間に一週間挟むということで、この間視聴者に「次の回はどうなるんだろう?」と楽しみにしてもらう必要があります。
そのため、一話目の最後で、二話目がどう始まるか予想がつかない終わり方をします。
これがターンしないということです。
で、ターンしない=引きを作ってないので、次週の二話冒頭で謎の協力者が現れたりして、新たなテコ入れをしてストーリーを動かしていくのです。
この「ミッドポイントは仮オチ」「大抵ターンしない」ということを無理なく説明できる点において、二話完結アニメメソッドは、よくあるベース型三幕構成図よりもわかりやすいのです。
(ベース型はベース型で「行きて帰りし物語」を説明しやすい点が優れているけど。今は脇に置き)
■二幕のラストが盛り上がりのピークであるという誤解が解ける
二話完結アニメメソッドのわかりやすい点ふたつめは、よくある誤解「二幕目と三幕目のターニングポイントが一番盛り上がる箇所だ」という誤解を払拭できることです。
この誤解本当に多いんですよ。
盛りあがり曲線みたいな図で説明されていることが多くて、一幕から二幕にかけて右肩上がりに盛り上がり、三幕から物語の最後にかけてへにょんと下がっていたりする。
でも、そんなことはありえないんです。
上述の二話アニメの例をもう一度見てみてみましょう。
二幕と三幕の間といえば、「さあ、再戦だ!」の引きでCMに入って、CM明けからラストバトルが始まる部分です。
考えてみてください。アニメで、CM手前のAパートが一番盛り上がっている場面であるパターンなんて、ほとんどなくないですか。
どう考えても、一番盛り上がるのは、後半Bパートの熱いラストバトルです。
盛り上がり曲線自体はあります。
その線が、右肩上がりで進んで、終盤でへにょんとなるのも、その通りです。
ただ、盛り上がり曲線が「へにょん」するタイミングは、三幕構成の区切りとは一致しないんです。
大抵、「へにょん」のタイミングは、三幕開始の後になります。
これは考えると当たり前なんですが(だって、もし二幕のラストがクライマックスだとするなら、我々は十六万字の長編小説を書くとき、実に四万字もエピローグに費やさなければならないからです)、三幕構成の図に盛りあがり曲線を重ねられると、ぱっと見綺麗なので、つい間違ってしまうのです。
でも、「アニメで盛り上がるのは後半のBパートになってからでしょ?」の理解があると、この辺が比較的しっくりきます。
■日本人にとって馴染み深すぎる上に、サンプルが山とある
二話完結アニメメソッドがわかりやすい最後の理由は、日本人である我々にとって、この喩えが大変身近なものだということです。
正直、三幕構成の底本になるような本で例示されている映画の構成分解は、古すぎます。
現代の我々にはぴんとこないし、そもそも未視聴の場合も多いでしょう。
でも、アニメは、日本に溢れています。
毎シーズン新作が公開され、作例に事欠きません。
「CM前に引きが入るよね」とか「一話目で仮オチがついて、二話目で本オチがつく」みたいな感覚も、肌でわかります。
アニメ二話で考えるということは、一時間で三幕を構成しているということで、練習として構成分解する労力も、二時間映画を構成分解する手間に比べて、半分で済みます。
なにかと便利なのです。
皆さんも、お気に入りのアニメの中で三幕構成理解に使えそうなものを探してみてはいかがでしょう。
ちなみに、筆者のオススメはアニメ版「ストライク・ザ・ブラッド」です。
二話完結ではないのですが、1ストーリーが必ず四話で構成されているため、これまた三幕構成の理解に超便利なのです。
なので、筆者は、アニメ版ストブラを見直すたびに、小説が書きたくなります。
■結語
というわけで、これで大体筆者の説明はおしまいです。
三幕構成は起(転)結起(転)結であり、二話完結の前後編アニメだと考えればわかりやすいんじゃね?というお話でした。