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俺は異世界で軍師になる  作者: 中村竜野
第1章~始まり~
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カリアン平原の攻防~後編~

 会議から二日後、俺たちはカリアン平原で帝国を迎え撃つ準備をしていた。俺は簡易の幕舎に居た。エミルは、危ないと思ったのでナストレアに避難させているのでここに居るのは、フリードとアリスだけだった。シンクとマルニーアも兵をまとめているので今はいない。


 「アリスは右翼の方に居てくれ。フリードは中央で守備を頼む。シンクとマルニーアは俺から後で言っておくが、左翼に置く。合図があるまで絶対に無理に戦おうとするなよ」

 「任せておけ、兄貴。でも、何で俺が中央なんだ?」

 「それは、フリードしか勤まらないと思ったからだ」

 「そ、そうか。頑張るぜ!」


 フリードはそう言い、照れくさそうに幕舎から出て行った。

アリスは少しむっとしていた。


 「お兄ちゃんは、私の事信頼していないんですか?そうですね!」


 そんな事かと思ってアリスの方をちゃんと向き直って訳を話した。


 「俺はそんな事思ってないよ。右翼を指揮をできるのがアリスしかいないからだよ。右翼はちゃんと戦闘の指揮が出来る人間にしか勤まらないからね」

 「そうですか、よかった。私……お兄ちゃんに見捨てられたかと思った」

 「アリスは俺の大事な人だからね。そんな簡単に嫌いにならないよ」

 「そ、そうですか。私も頑張ります」


 アリスもフリードと同様顔を赤くしながら幕舎から出て行った。俺は何か変な事を言ってしまったんだろうかと首を傾けながら思った。その時入れ違いでマルニーアが急いでいる様子で入ってきた。


 「大変です。ゴットン率いる帝国部隊がカトレア平原にて姿を現れました!」

 「偵察部隊の報告だと明日に来るはずではなかったんですか?」

 「相手の行軍速度が異様に早かったためだと思います」


 俺は心の中で軽くちっと噛んで急いで指示を出した。


 「すぐにあの陣形になってくれと皆に指示してください!マルニーア殿!」

 「了解です!」


 マルニーアはすぐに幕舎から出て兵士たちに大きな声で指示を飛ばしていた。俺も緊張を胸の奥にしまいこんで冷静な顔になりながら幕舎を後にした。

 



 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼




 同時刻。帝国のゴットン将軍以下二〇〇〇の兵でナストレアに凄まじい速さで行軍をしていた。

 (わし)は、オリガ皇帝の命令で進軍しているが、帝国軍に忠誠など微塵にも抱いてはいなかった。むしろ憎しみを抱いているほどだ。儂の仕えていたアストラ国は帝国に滅ぼされ、帝国に余儀なく投降した。でも、帝国に仕えているのはアストラ国の再興の為で、今回のナストレア侵攻はあまりしたくはなかった。しかし、儂の唯一の家族と呼べる弟子のマースがよく分からない兵士に殺されてしまったのだ。もう、お爺ちゃんと言える歳だがマースを殺した人間を、自分の力を全力で叩き潰す為に来たのだ。


 「ゴットン将軍、報告します!敵の部隊が見えてきました!」

 

 確かにその兵士が言ったように敵の部隊が見えてきた。しかし、敵の陣形が三角形のような形になっていたのである。それを見た将軍は。


 「何だあの陣形は見たことがないな。知っておるかの?」

 「私にも分かりかねます」

 「まあ、よい中央を一気に挫き本陣まで行くぞい!」

 「は!」


 儂はそのように指示を出すと、敵の陣地に向かって勢いよく馬を走らせた。



 敵が来た。俺は皆に教えた『魚鱗の陣形』なっていた。中央部隊のフリードには三〇〇、右翼と左翼には一五〇ずつ兵を配置した。しかし、このまま戦えば負けてしまうので、何個か策を用意した。

 一人の兵士が慌てて入ってきた。


 「敵がすぐ目の前まで来ました!」

 「そうか、例の物を敵に向かって投げてくれ!頼むぞ」

 「は!」


 俺は、兵士にそう告げた。その後、数秒した後、キーンと甲高い音が聞こえたのと同時に馬の悲鳴が何百頭からも聞こえてきた。そうこれは、音爆弾だ。この音爆弾は人に対しては音がただでかく感じるだけだが、馬などの耳が良い動物は驚いて、暴れだし乗っている人を振り落してくれる。大抵は気絶や最悪の場合は死に至る事もある。これを作るのには、オトモノグサと言う希少で珍しい草だ。火で燃やすと少しだけ音がする物を、藁で丸く作った中にたっぷりと入れてそれを固定し、導火線を引いて、投げる時に火をつけて投げる。

 今回の戦でこれでどれだけの兵士が減らせるかで勝敗が決まってくる。俺は、音爆弾の音が鳴り止むと幕舎から出てすぐ近くの兵士に聞いてみた。


 「敵の方はどのくらい減らせた?」

 「マサキ様に今それをお知らせしようとしていました。ほとんどが馬を使っていた為、半分以上が被害が遭い敵は大混乱に陥っているようです」

 「よし、作戦成功だ!それじゃあ、魚鱗から鶴翼陣になっているか?」

 「はい。フリード様の中央部隊が音爆弾を使って敵を足止めしている隙に陣形を変えておきました」

 「よし。降伏する者と気絶している者は生かして、逃走または立ち向かってくる来る者は容赦はするな!」

 「は!」


 俺の作戦は見事に命中していた。敵の行軍速度が速いのは馬のおかげだと思い、音爆弾を作りそれを使って敵を足止めをする。その隙に防御が得意な魚鱗から包囲殲滅する鶴翼陣に変えたのである。

 次々に伝令兵が現状を伝えてきた。アリスとシンクが敵副指揮官を討ち取ったとか、フリードが防御から攻撃に移ったとか嬉しい報告が入ってきた。

 しかし、そう簡単にいかなかった。


 「報告します!敵の指揮官のゴットン将軍がフリード様と交戦中奥義を使ったとの事です!」

 「奥義だと……フリードは無事なのか?」

 「まだ分かりません。なにぶん威力がとにかく大きく、たくさんの土煙が舞い上がっている状態です」

 「フリードはそんな簡単に死ぬような男ではない。土煙がなくなった後急いで確認してくれ!」

 「了解しました!」


 俺は、フリードの事を生きていると思いながら次なる報告を待った。



 少し時間が戻り、フリードは攻勢に転じていた。アリスやシンクが敵の副指揮官を討ち取ったお聞いていても経ってもいられなく少し早めに攻撃に移っていた。金属のぶつかる音が何度も鳴っている戦場に大きな声で敵の指揮官の名前を出した。

 

 「帝国指揮官ゴットン。出て来い!俺と勝負しろ!」


 俺に向かってきた敵兵を斬りながら叫んだ。その声が聞こえたのか、老人だがいかにも強そうな敵が出てきた。


 「貴様がゴットンなのか?」

 「儂がゴットンじゃ。貴様の名は?」

 「俺の名前はフリードだ!老人でも手加減しないぞ!」

 「貴様みたいな小僧に負けるほど落ちぶれておらぬわ!」


 俺はそう言うと瞬時に槍を敵に向かって思いっきり振った。それを見切ってゴットンは巨大な斧で防御をした。防御をしていた斧を勢いよく槍ごと振りかざし、フリードを一刀両断の如く頭に振り下ろした。フリードはそれを槍で素早く受け流した。


 「さすがだな!マースの時とは全然違うな」

 「何!マースを知っておるのか!」

 

 ゴットンは驚いた顔で、フリードにマースの事を聞いた。


 「知っているも何も俺がマースを倒した……確かあいつも斧を使っていたような」

 「マースを殺したのは貴様か!ここで貴様を殺してやるわ!」


 ゴットンは怒り狂った顔をしながら斧を掲げながら回し始めた。それと同時に大気中に渦みたいなのが少しずつ形成されきた。それがやがて大きくなり家一軒、飲み込みそうなほだった。


 「何だこれは!」

 「ワシの奥義を受けてみよ!大旋風だいせんぷう!!」


 その技を使った途端辺り一面が切り裂く風の影響で無差別に吹き飛ばしたり、切り裂かれていたりした。その中でフリードだけがひたすら飛ばされないように地面にしがみ付いていた。


 「くそ!これが奥義の力なのか!強すぎる!」


 そう言っているうちに風の影響で吹き飛ばされてきた剣や槍がフリードに襲い掛かってきた。



 ゴットンは、肩で息をしながら辺り一面の光景を見ていた。奥義を使ったお陰で体力はごっそり削られたが、マースの敵討ちが出来たので良しとした。


 「これで一気に……本陣まで……行き……かたをつけられるわい」


 風が弱まり行こうとした時、ある者に目が止まった。


 「なんじゃ?あれは。ワシの大旋風が効かない奴でもおるのかの。それはないがの」


 ゴットンがが笑っていたが、風が止んだ後、ある光景を見て驚愕していた。

 フリードが全身傷だらけで立っているではないか。


 「貴様!どうやって!」

 「……地面にへばりついていたのさ。本陣には行かせねえ!」

 「ほざけ!もう一発食らわせてやるわ!」


 フリードは焦った。もう一発来ると今度は耐えられない。フリードはよく考えてみた。なぜ、俺たちだけが飛ばされてゴットンだけが髪の毛すら動いてないのか。


 (読めたぜ!これが違ったら俺の完全の負けだな)


 そう思いすぐに行動を起こした。


 「儂の奥義を受けてみよ!大・旋……何!?」

 「やはりな!お前の周りだけ風が無いみたいだな!これで終わりだ!!」


 フリードは思いっきり槍に力を入れ、ゴットンを思いっきり吹き飛ばした。吹き飛ばされたゴットンは近くの木におもいっきり当たった。


 「がはっ……小僧……貴様の勝ちじゃ。マースすまんかったの……」


 ゴットンはそう言い残して気絶してしまった。フリードはそれを見届けると槍を天に掲げて大きな声で叫んだ。


 「敵将ゴットンを討ち取ったぞー!!」

 「「「うおおおおおおおおーーーーーーー!!」」」


 大将がやられたので敵兵は戦闘するのを止めて投降して来る者や逃げる者の二つに分かれた。


 「ゴットン将軍が討たれた!逃げろー!」

 

 マルニーアはその光景を見るとすぐに兵たちに追撃の命令を出した。



 帝国歴五八年十月一七日。

 ゴットン将軍率いる帝国軍二〇〇〇対ナストレア連合軍六〇〇で始まった『カトレア平原の戦い』は、ナストレア軍の勝利で、終わった。

 







 

 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 やっと戦闘を書く事が出来ました。

 感想などがありましたらよろしくお願いします。

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