ルナリアス城攻略3
アルンは、キリングと相対していた。フリードをマサキとアリスの所に行かせたのは良いが、流石に一人は分が悪かった。
こちらは帝国に居た頃は少しだけ名がはせた事があるが、あちらは皇帝自らの直属部隊の副隊長。その手で何人もの悪党を倒していた。だが、今は違う。私にとって押すべき敵なのだから。
「そこを退くんだ。俺は女を斬る趣味はない。だが、そこにいるつもりならこの手で葬り去るぞ!」
「拙者は退くつもりはありません。我が主の邪魔は誰にもさせない」
「何故そこまであの男に肩入れする。そこまでの価値があるのか?助けられたからか?」
「拙者は分かりません。確かに二度助けてもらい我が掟に従い、あの方の傍にいるつもりでした。ですが、それ以外にもあるんです。しかし、それが分からない。だからあの方の傍にいる。ただそれだけの事」
「分からない。だがな」
キリングが一気にアルンとの間合いを詰めて来た。そして、距離が手で届くほどの距離になると剣でアルンの首筋を突いてきた。アルンも剣を横にし、防御した。だが、力が違いすぎた。
「我が帝国に逆らう奴は生かせておけん!」
一気に力を加えられた。それを察知し、後方に移動しようとしたが力が強すぎて壁に思いっきり体を打ち付けてしまった。
「ぐはっ!」
速さを重視した装備な為そこまでの衝撃には耐える事はできず、体にさっきのだけでかなり負担をかけてしまった。恐らく背中は痣になっているだろう。だが、立ち上がった。
「負けるか」
「次、行くぞ」
右左上下からといろんな所から来る。しかも早く、力も強かった。
キリングは横からお腹の辺りに蹴りを入れてきた。アルンは、剣だけに意識がいってしまったおかげでそれには気付く事が出来なかった。
「うっ」
鈍い音が聞こえてきた。そのまま吹き飛ばされてしまった。
「うっううう。でも、負けない」
でも、立ち上がる。その光景を見ていたキリングは軽く眉を上げた。
「何故立ち上がる。力の差は歴然だぞ。もし、ここでお前が投降するのなら俺はお前を殺さないでやる。受けるか?」
「そんな事受けるわけ無い……我が命は我が主と共にある」
「それならば、じゃあな」
剣を振りかざしてきたが、遠くの方から走ってくる音が聞こえた。
「駄目ー!!」
エミルが剣を両手に持って突進してきた。
キリングがエミルの方に少し気を取られているすきにアルンが腹に思いっきりタックルを入れてやった。
「ぐはっ」
「アルンちゃんを殺させない~、あれ?」
「エミル様、こちらです!早く」
キリングを吹き飛ばしたらすぐさまエミルの手を取って離れた。
「エミル様、何故ここにいるのですか!それと、自分の指揮されている部隊はどうされたのですか?」
「出てきた部隊はほとんど片付いたわ。だから援軍として来たらアルンちゃんが帝国の兵士に剣を向けられて殺されそうになってたから居てもたっても居られずに」
「それでも一国の王としての大事な命をそう簡単に投げ出してもらったら困ります!」
「でも!」
「お前……エミルと言ったか。貴様が始めた戦争。だから主犯者を排除すれば自動的に縮小し、反乱軍は壊滅。お前に恨みは無いがここで死んでもらう!」
「エミル様!こいつは拙者が引き受けますので早く!」
その時、頭に嫌な感じが流れてきた。直感と言うべき物だろうか、今しゃがまないと死んでしまう、そう頭に呟いてきた気がする。
アルンは、それを信じてエミルの体を押し倒して覆いかぶさるような状態になった。キリングも後ろを少し見てすぐさま頭を限りなく低くしゃがみこんだ。
そしたら先ほど自分達の首の所に一瞬だけだったが光が見えた気がした。
「ま、まさかアルンちゃんにそんな趣味が合ったなんて」
「拙者は至って普通です。しかし、何が」
「これは……まさか!」
そういった瞬間、天井が少しだけ傾いたような気がした。たぶん気のせいだろうと思ったが、少しずつだが傾いていた。
「こ、これは!?」
「な、何?何か起きたの?」
「第二派来るぞ!」
キリングは、鋭い目でスルトやマサキ達の方を向いた。もう一度光が見えた。それを、大きく息を吸ってそれを横にずらした。そして息を吐いた。流れる動作だったがそう思えるのも一瞬だけだった。その光が壁を二つに分断した。そしてそのまま落ちていった。
「え?何だったの?アルンちゃん」
「拙者には……しかし、主殿達が相当危険だけは分かりました」
「この状況は相当やばいな。早く兵たちをまとめ脱出しなければ危険だな。アルン。次回また会うだろう。その時は、そこの壁同様にしておいてやる。じゃあな」
「貴様、また逃げるのか」
「生きてのこそだろ。後この建物はそう長くは持たないだろう。そこの壁の下を見ればここに残っていればどうなるか良く分かるぞ。それとスルト将軍では、残ると俺達の命が危ないからな」
そう言い残すと走って去って行った。言われた通り下を見ると谷になっており、下には川が出来ていた。確かにここから落ちれば生きては帰って来れないだろう。
「エミル様。拙者は主殿を救出する為に奥に入ってきます。エミル殿は」
「私も行くわ。兵士達はマラハイやジョルシーさんに任せてるし大丈夫だから!逃げ足だけは戦場のおかげで速くなっているし!だからお願い!マサキだけじゃない!皆心配なの!」
「分かりました。何言っても駄目な事が少ない間ですが、すぐに分かりました。ですが、本当に危険な時にはすぐさま逃げてください」
「うん。約束する」
エミルが頷くとマサキ達の所に進んで行った。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
前回遅い更新でしたので、早めに更新させていただきました。
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