シャライコア遺跡
ひとつにまとめてしまいました。もし途中の方がいましたらお手数ですがそのところまでスクロールお願い致します。
魔物討伐の為に俺は、シャライコア遺跡に向っていた。オアシス町で聞き込みをした結果、その遺跡でそれらしき影を見たと報告があった。その為、一〇〇〇の兵とアリス、フリード、エミルが討伐の為にきてくれた。
砂漠、砂漠、砂漠しかないので、相当つらい。日の光もらんらんとしており、暑すぎて倒れてしまう。このままでは、魔物討伐をする前に倒れてしまう。
「暑いな……これじゃあ戦う前に倒れてしまうぜ」
「……暑い」
「み、皆頑張って……もうちょっとで」
「エミル。お前の目が据わっている居るぞ。そんなんじゃ説得力がないぞ」
皆も相当疲れているようだった。でも、休める場所がなく、ただ目的地に向って歩くしかなかった。
それから二〇分程歩いた所で遺跡が見えてきた。石が所々風化しているが、なにやらこの遺跡全体から意思のようなものが感じ取れる気がする。遺跡の中に入るとアリスが座り込んだ。
「……少し休ませて。もう無理」
「そうだな。危ないと思うがここの中なら涼しいし休むのに良いな。では、皆休んでくれ」
「助かったよ~……がく」
「エミル、ほら俺の水筒をやるから水分を取れ」
「で、でもこれって……」
エミルは顔を赤くしながら周囲を見渡しながら聞いてきた。変な奴だな、と思いながら自分の水筒を手渡した。
「どうした?いらないのなら俺が飲むが……」
「の、飲みます。いや飲ませて!!……ごく、ごく……お、おいしかったです」
「それなら良かったってアリス?」
エミルはリンゴの顔みたいに赤くしてきた。それを見ていたアリスはこちらに近づいてきた。その時のアリスは少し怖かった。
「お兄ちゃん……これを少し飲んで」
「え、俺あるんだけど」
「早く!!」
「は、はい」
アリスの言われた通り少し水を飲んで返した。返すとアリスは嬉しそうにその水筒を飲んでいた。そしたら今度はエミルの機嫌が悪くなった。慌てる俺を遠くで見ていた義理の弟のフリードが、溜息をついた。
少し休憩した後に遺跡の中を探検することになった。入り組んだ迷路、数々の罠があると思っていた俺は少しワクワクしていた。だが……
「もう最深部まで来てしまった。何も無かったな」
「……一本道」
「マサキは何を期待していたの?」
「罠とか迷路とか……」
「マ、マサキ……」
「お兄ちゃん……」
「哀れんだ目をしながらこちらを見ないでくれ!」
俺はその視線でうな垂れてしまった。しかし、そんな俺に手を持って目をきらきらさせている男が居た。まあ、こんなことするのはフリードぐらいだけどね。
「そうだよな!やっぱり遺跡とか洞窟には罠とか迷路とかあると何か燃えるよな。それは分かるぜ!兄貴」
「フリード!分かってくれるのはお前だけだ」
「「じー」」
二人は更に冷ややかな目をしていたが、気にしなかった。
俺達は、周囲を探索しようと思った時、後ろから足音が聞こえてきた。とっさに後ろを振り返ると帝国軍の兵士アルンと目が合った。
アルンとフリードは、剣を抜いて臨戦態勢の構えを取った。それに続き他の他の兵士達もそれに続き剣を抜いた。鋭い目つきで睨みながらアルンは口を開いた。
「貴様らはこの遺跡で何をしている?」
「それは、お前達が先に言うんじゃないか?」
笑顔でさらりと返した。目的を先に言うのは今後不利になってしまうかもしれないので、相手に答えさせてから状況を判断する構えを取った。
アルンは、俺の顔をちらりと一瞥すると少し警戒心が薄まったような気がした。
「某の任務は、最近出没してる魔物の討伐の為。貴様らの目的は分からないが、邪魔をするような事をするようならば義によって貴様らを斬る!」
「え?俺らと同じなのか?」
「マサキ殿達と同じってことは……」
俺は驚いたが、アルンも相当驚いていた。帝国がこのような討伐命令するとは意外であった。
そんな俺をよそにフリードは、アルンに気になった事を投げかけた。
「アルン。何で兄貴の事を親しく呼んでいるんだ?」
「し、ししし親しくなど呼んでいない!」
「怪しいな~。マサキは最近見境無いからな~」
「エミル様の言うとおり」
エミルとアリスが無言で睨みつけており、冷や汗が体中をから噴出した。
アルンは、慌てて理由を述べた。
「そ、某の母上に小さい頃から一回恩を受けたら恩を返し、二回受けたらその人に忠誠を誓いなさいといわれ続けた。某も母上のような立派な人になり、本当に我が主と思える人に合いたいと思っている」
「だが、何故帝国に居るんだ?帝国に何かしてもらったのか?」
「某が道端にお腹が減らしている所を助けてもらった。その恩を返している所だが……帝国には申し訳ないと思うが、主を見つけた時はお暇させていただく所存です」
「律儀だな、アルンは。それで俺にお礼をしてくれるのか?」
「そ、それは……」
いきなり答えを窮する所を見て少し笑ってしまった。アルンは頬を膨らませていたのでそれを宥めた。
「ゴメン、ゴメン。まあ、利害は一致しているという事で一緒に頑張ろう」
俺は、アルンに向かって手を差し出した。アルンは戸惑っていたが、手を差し出してくれ、そして握手した。
その時直感と言うべきものか分からないが、ここは危ないと感じた。その直感を信じ、俺はとっさにアルンをお姫様抱っこをし、そこから全力で走った。
アルンは、驚きながら体を硬直させ、顔を赤くなっていた。
「兄貴、いきなりどうしたんだ?新手の女の子の捕まえ方か?」
「そんなんじゃない。それより何か感じないか?」
フリードも異変を察知したのか、辺りを見回した。他の兵士達も辺りも同じように警戒し始めた時……。
「地震?」
エミルは、小さな声で言った。遺跡全体が揺れており、徐々に大きくなり始めてきた。やがて立っているのも困難になり始めた瞬間、揺れがいきなりピタリと止んだ。皆、驚き戸惑っていると、先ほど俺とアルンが立っている所に……。
「タ、タイラント・アーム」
がいきなり出現した。
俺は、アルンを抱きかかえたままここにいる全ての兵士に指示を出した、
「皆、散開するんだ!一箇所に居ると一気に食われるぞ!それと、槍兵は盾を構えたまま弓兵を守り、弓兵は後ろから矢を撃ちまくれ!」
兵士達はその声に我に返りその指示に従った、しかし、帝国軍の方はこちらの指示をどうすればいいか迷っているようだった。
そんな兵士達にイライラとしながら頭で考えているとアルンが俺の頬をつねって来た。
「いたたた!」
「そ、某を早く下ろして欲しいだが」
「す、すまん」
すぐに下ろすと互いに距離を取り合った。周りから見ればただの初々しいバカップルであるが、今はそんな事を気にしていられなかった。
タイラント・アームは何故か静止しておりこちらとしては大変ありがたかったが、いつ動いてもおかしくないので早急に陣の構成をしなければならなかった。
だが、帝国軍はどうすれば迷っており、戦力として使えそうも無かった。
その時、アルンが俺より一歩先に出て、帝国軍の兵士に凛々しく誰もが聞こえるような大きさで指示を出した。
「今からタイラント・アームの討伐の任を全うする。その為に同じ目的でここに来たフリダム軍に協力する。この戦いはマサキ軍師殿の命令で各人動いてくれ。以上だ」
帝国兵士は誰一人文句を言わずに俺の先ほどの指示に従うようにタイラント・アームを囲みだした。
俺は、アルンの傍まで近寄り小さな声でお礼を言った。
「そんな事は……いりません。私は自分の任を全うするだけです」
「そうだな。一気にやるとしますか」
二人は顔を見合わせ頷いて自分たちの元居た場所に戻った。
フリード、アリスが敵がいつ動いても良い様に睨みつけながら見ていた。エミルは後ろで兵士達に守られるように冷静に立っていた。
エミルは、戦争を通じて少しずつ成長しているのが見て取れるのが分かった。それに嬉しくもあり少し寂しい感じもあった。
「エミル、後方に待機していてくれ。ここは俺らがやるから」
「私は、ここに残り最後まで見ています」
「そ、それは」
「命令です、マサキ。私はここにいます」
「り、了解」
俺はつい同意してしまったが、何故こんな事をしてしまったのか今の俺には分からなかった。だが、やることは一つだった。
「エミルが後ろに居るんだ。死ぬ気で守るぞ!」
『おおっー!!』
フリダム軍の兵士達が声を上げながら槍や弓を番えた。その中には帝国軍兵士の声もあざっており、指揮は最高潮に上がっていた。みんなの怒りやエミルを守りたい一心でここまで心を一つにしているのだと良く分かった。
俺は、一気に号令を下した、
「撃てええ!!」
何百本と言う矢がタイラント・アームに襲い掛かった。矢が刺さると同時に小さいが爆発が起きた。
前回矢が全然、良い成果を出せなかったので、これにオプションをつけてみた。小さな爆発だが、それが何百本となれば別だ。
もし、それでそれたとしても味方の盾があるので、被害は小さく済んでいる。
タイラント・アームもこれには耐え切れず大声を上げその場でのた打ち回った。
俺は、それを見てニヤリと笑うとフリード隊とアリス隊合計二〇〇と帝国兵一〇〇〇に突撃の命令を出した。
フリードは雄たけびを上げ、その後ろにアリス、アルンと続いて突撃をした。
「紅蓮!アレをやるぞ」
「充電一〇〇%。何時でも撃てます」
「流石だぜ。行くぞ!」
槍から大量の炎が迸りながらそれを気にせずタイラント・アームに向って一刀両断
「火の激流を見せてやる。火炎激流槍!」
斬った所から炎が溢れ出ており、タイラント・アームは想像以上の痛さに大声を上げていた。
しかし、次の瞬間その声が鳴り止んだ。アルンとアリスの攻撃が先ほど傷に思い切りナイフと剣を差し込んだ。
「民の為に悪く思うな!」
「……これで終わり」
タイラント・アームはその場で倒れ動かなくなった。絶命したのだ。
数秒の静寂が訪れ、その次には歓喜が周囲に舞い踊った。フリダム兵士と帝国兵士が手を取り合って喜んでいた。
俺も嬉しさを噛みしめたいが、疲れているのでその場で座り込んでしまった。何故かそこで自然と笑いがこみ上げてきた。
そこにエミル達が来た。皆、俺の事を不審者を見る目をしていたがそんな事を構わなかった。
俺はアルンに手を差し伸べた。アルンもその意図が分かったのか笑顔で応じてくれた。
「アルン、今回は助かった。ありがとう」
「某は当然の事をしたまで。いや、某が言う事だった。主殿のご助力まことありがとうございました」
「主殿?」
俺は言葉の意味が分からず、首を傾けた。エミル達の方を見てみるが何だか分かっていないらしい。
アルンは、剣を隣の地面に突き刺し、片膝を付き、上目使いでこちらを見上げてきた。その瞳は真剣で、次来る言葉には慎重に聞き、答えなければならないと思った。
「某を……マサキ殿の部隊に入れてください!」
「「「えええええっ!!」」」
俺達は、声をそろって上げてしまった。フリードだけは、話を聞いていなかったのか良く分からないといった顔をしていた。
ここまで読んでいただきありがとうございました。それと遅くなってしまいすみませんでした。感想などもらえましたらとても嬉しいです。




