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俺は異世界で軍師になる  作者: 中村竜野
第3章”サンバラ地方編”
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夢少女

 俺は夢を見ている。どんな夢かと言うと、周りに花畑で覆われており上を向くと暗い夜を無数の星やもしかしたら手で届くぐらいの距離にあると思ってしまうほどに近い月に照らされ、神秘的な風景に変わっていた。風も少し吹いており、花々が揺れて舞い踊っている。幻想的だが本当に夢なのかと思う。なぜなら、土の感触、風の程好い冷たさ、それと……


 (あれは……女の子?)


 大きな岩の上に幼い少女が座っていた。扇を持って口元を隠しながら月を眺めているようだ。それに少し見とれてしまった。数秒後首を振り頬を叩いて目を覚ました。それと少し痛く夢ではない事を確信した。

 少女はその音に気づいたのかこちらに向いてきた。端的に言うと綺麗だった。月明かりで照らされた、幼さが残るが不思議とその感じをさせない大人びた顔をしていた。その時もう一度、硬直してしまった。少女も信じられなそうな顔をしていたが、真剣な顔になって口を開いた。


 「お主は……誰じゃ?それとどうやってここに?」

 

 その言葉に我に返ると深呼吸を三回程した後に少女を真っ直ぐに見た。ここでちゃんとした答えをいえない場合、一生後悔すると心の中の自分が叫んでいた。俺は、その少女に見据えながら答えた。


 「俺の名前は正輝。フリダム軍の軍師をやっている。君は?」

 

 少女の周りからの警戒心が少しだけゆるいだことに安堵した。少女は不思議な瞳でこちらの心の中を見透かしているような感じがした。


 「今は……ホウスイと名乗っておる。それでどうしてこちらに?」

 「ちゃんと名乗ってくれよ。まあ良いや。それで、どこなんだここは?」


 ホウスイはこちらの問いにしばしば考えていた。何故そこまで悩むのかと思ったがある結論にたどり着いた。


 「もしかして君も迷子?」

 「違うわー!」

 「うわ」


 ホウスイが大きな声をいきなり発した。手に持っていた扇をこちらに突きつけて激怒し始めた。


 「私は迷子じゃないもん。貴方と違って数倍の年月を過ごしているもん。それだから迷子とかそんなちんけな事なんてしないもん」

 「本当か?確かに迷子じゃないかもしれないけど、俺の数倍は盛っているだろうに。そうだな……俺より七歳年下ぐらいかな」

 「そ、そんな事無いもん。年は取っているが幼く見える人だって居るもん」

 「さすがに幼すぎるだろ」

 「うるさーい!」

 「あ、危ないだろ。扇を振り回すのはやめろ!」


 ホウスイに追い掛け回された。さすがに子供もよりは体力があるので、先にへとへとになったのはホウスイの方だった。その場に座って息継ぎしているのを見て、やれやれと首を横に振り近づいた。そして手を差し伸べた。


 「大丈夫か?手を貸してやるから」

 「元はといえばマサキのせいじゃない。何と言う屈辱!」

 「すまないな、ついな。それでここはどこなんだ?」


 ホウスイは一回で咳払いすると、本来(?)の口調に戻した。


 「ここは夢に類似する世界。本来なら普通の人間では入ってくることが出来ないが……」

 「俺は普通に入ってきているぞ?」


 俺は首を傾けた。その事にホウスイは少し苦笑すると端的に教えてくれた。


 「マサキは……この世界の住人ではない。そうじゃろう?」

 「何で分かったんだ!それは、エミル、フリード、アリスにしか分からないはず」

 「私は、夜空に浮かぶ星の位置や数によって全てを見通している。現実世界、この夢見の世界で情報を仕入れている。その時に知って、もしやいずれ来るかと思っていたが予想よりも早かった事に驚いたのじゃ」

 「何故俺がここに来ると思ったんだ」

 「それは星のお導きと言う奴じゃろう。それよりも何か悩みがあるんじゃないか?」

 

 度肝を抜かれた。確かにそうだ。それと自然とホウスイにその事を話したくなった。今の俺の悩みを話そうと決心した。


 「俺は、今日の作戦会議で二手に分かれてジャイアント・アームを倒す方と帝国を足止めをして待つ方に分けた。だが、本当にそれで良いのかと言う自分が居て決心が出来てないんだ。これのせいで皆を死なせてしまうことだってあるんだ。だから、俺は」

 「そんなことか。情けないのう」

 「な、何だと!?俺の気持ちを分かっても無いくせに言いやがって」

 

 その反応にホウスイはやれやれといった感じで首を左右に振った。完全に飽きれていた。


 「マサキや。お主は何も見えておらぬようじゃな」

 「見えていない?」

 「そう、軍師と言うものは常日頃から自分の策に絶対的自信を持たなければならぬ。もし、その策が例え愚策と周りから言われても信じるのじゃ。そうしなければ勝てる戦も勝てなくなってしまう。そうじゃろう?」

 

 マサキはその言葉に思わず聞き入ってしまった。ホウスイはその顔を見ていると子供をあやす時の優しい顔になりながら囁きかけてきた。


 「お主には信頼できる仲間がいる。それで良いではないか。くよくよせずに前に進め、若人よ!!」

 「ありがとう。ホウスイのおかげで心の迷いが取る事が出来た。この作戦で行くよ」

 「うむ」


 ホウスイから大事な事を教わった。皆を信じていたが、それが壊れてしまうのが恐れてしまってどうしても奥手になってしまった。それを指摘してくれたホウスイに何度も礼をした。

 帰るときは、大きな木の下に光っている魔方陣に入れば元の世界に戻れると教えてくれた。帰る直前にホウスイに向って言葉を投げかけた。


 「また……来ても良いか?」

 「うむ、いつでも来ると言い。マサキが来たいと思うのであれば」

 「サンキュー。助かる」

 「産休?良く分からんが頑張れよ」


 魔方陣が白く光俺の視界は暗転した。

 ここまでありがとうございました。

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