戦闘の後
俺は、ゴットンの容体をを医者から聞いた後、幕者から出た。すると、外で待っていたエミルが俺を見つけると早歩きで近づいてきた。
「ゴットンの容体は?」
「……結構厳しいみたいだ。今ゴットンの体の中には強い毒性の液が充満しており、しかもその解読方法が……分かっていないらしい」
「私の……せいで」
エミルは、下を見ながら今にも泣き出しそうな声を出していた。そんなエミルを抱きしめると優しい声で慰めた。
「お前のせいじゃないさ。ゴットンは自分の意志で君を守ろうとした。それを無下にしてはいけないことだぞ」
「うん、うん」
泣きながら頷いた。俺は、無意識とはいえ抱きしめてしまった事に少し恥ずかしさがにじみ出ていたが、エミルが泣き終えるまでそのままの状態でいた。
名残惜しそうなエミルが腕から離れると早速本題に入った。
「エミル、単刀直入に言う。何があったんだ」
「…………」
「あちこちの城壁の割れ目。多くの兵の負傷者。ゴットンの怪我。帝国が大部隊で進行してくるかあるいは……それ相応の強さの何かがこの城に攻撃を仕掛けたのか」
「やっぱり、マサキは軍師なんだね。何でもお見通し……タイラント・アームが出現したの」
「本当なのか?そんなことが」
「一体目はアリスとフリードの連携、それに他の兵士達の援護で倒したんだけど……二体目がいきなり出てきたの。一体目よりも格段に強く、私も逃げたんだけど追いつかれちゃって、それで食われそうになった瞬間、ゴットンは我が身を犠牲にして私を助けてくれたの」
「そうだったのか、他には何か不自然なことが起きなかったか?」
「……タイラント・アームが急に私達の事を飽きたのか分からないけど、地面に潜ってどっかいってしまったことかな。他の事ならフリードとアリスに聞いてね」
「ああ、ありごとうな。エミルはこの後どうする?」
「私はまだここにいることにするよ。ゴットンの事も心配だからね」
「分かった。根を詰めすぎるなよ」
そう言うと他の情報を集めに行った。タイラント・アームの事を聞き出しておきたかった。しかし、エミルは不思議な事を言っていたが他の情報も欲しいので城下町中を走り回った。
一人の少女がガルス城を見つめていた。右手には扇を持っており口元を覆い隠している。ここの温度は三十度を超えているのにも関わらず少女は汗一つかいていなかった。いや、その少女の周囲だけは温度が低下していた。
「タイラント・ヘッドを追い返してやったが要らん事だったかの。つい、困っている人間を見ていると助けてしまう。早く自分の主君と思える人間に出会えないものであろうか」
軽くため息をした。その数秒後、大きな風が吹くと少女の姿は消えていた。
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