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俺は異世界で軍師になる  作者: 中村竜野
第3章”サンバラ地方編”
34/57

襲来

 襲来1~4を纏めました。

 真っ赤に燃えていた。この城全体に火事が起こり兵士達の死体もそこらじゅうに転がっていた。

 

 「なん……で」


 エミルは思わず泣き崩れてしまった。隣に控えているアリスはその光景に愕然としており、フリードは、自慢の槍の残骸を見ながら悔しそうな顔をしていた。

 そして、自分達の前には、右腕をなくしたゴットンが苦しそうに抑えていた。血を止血しているにも関わらずどんどん傷口から出てきており、視界もあまりはっきりしていないようだった。

 何故こんなことが起きたのか分からない。先ほどまで楽しかった光景がこのようになるのかなど。

 エミルは、泣きながら少し前の出来事を思い出していた。



 正輝達が帝国の報を聞きつけて出陣した後、たくさんの事務の仕事に追われていた。久しぶりに正輝がいないが久々にナストレアの皆で集まって仕事をした。ゴットンは、明日の準備の為に馬の調整や自分の準備、連れて行く兵士などの事でここにはいない。

 アリスは、フリードが分からない所を教えているが、手を焼いているのが、遠くから分かるほど分かりやすく、エミルは思わず苦笑いをしていた。

 

 「わっかんねー!こんなの俺に出来るわけねーよ。これよりも兵士達の訓練や他に無いのかよ」

 「……ごちゃごちゃ言わずやる。まだまだあるんだから……」

 「俺も兄貴についていけば良かったぜ。何でこんな大量にある薄っぺらい紙にサインとかしなくちゃなんねんだよ。一気に直すんだったらやったほうがいいだろ」

 「……砦の補修箇所にどれだけの材料、資金、どれくらいの人手で足りるかなどなど確認しないと駄目。そうしないと余分にお金や日数、その他もろもろがかかっては、今の私達ではそれだけでも瓦解してしまう……それもわからないの?」

 「くっそー、俺の事馬鹿にしやがって。どーせ俺は勉強が苦手な人ですよ。俺は戦い専門なんだし」

 「ふっ……わろす」

 「な・ん・だ・と!もういっぺん言って見やがれ」

 「……とことん馬鹿の極み」

 「さっきと違う上に更にむかつく。この胸なし女」

 「フリード、少し自重したほうが良いみたい。その曲がった根性をここで一から直してあげる」

 「いいぜ、ここでやるか。このつるぺた幼女」

 「ふふっ、ここまで私を怒らせたのは久しぶりな気がする。ここで……」

 「俺も同じ事考えていたぜ。お前とここで……」

 「「決着をつける」」

 「止めてーーーー!」

 「エミル様止めないでくれ。今日こそは、こいつに勝ちたいんだ」

 「……エミル様止めないで。再度こいつに私の恐ろしさを教えて上げなければ」

 「二人ともここはそういう場所じゃないんだよ?もう少ししっかりとして下さい。分かった?」

 「「……はい」」


 にらみ合いの二人に顔の近くに少し怒り気味で人差し指を出して、メッとした。その事にしぶしぶ了承したが納得はいっていない様だ。

 その後、事務の作業を開始し始め、2時間近く経ってた時フリードは大きな欠伸をしながら手を上にあげていきよい良く立ち上がった。


 「終わったー。やっとだぜ」

 

 満面の笑みを浮かべながら踊っているほど元気が戻っていた。アリスもそれを目を通すと、大丈夫と言って椅子に深く座りなおした。

 その時、扉から軽くコンッコンッと音がした。


 「入っても良いですよ」

 「エミル殿、少し休まれてはいかがだと思って紅茶を持ってきたぞい。どうじゃ?」

 「ありがとうございます。いつもすみません」

 「性分なので気にする事は無いぞ。アリス殿やフリードはどうするのじゃ?」

 「……ありがたく貰います」

 「さすが、ゴットンだな」

 「代わりにフリードが入れてくれ。さすがに儂も明日の準備とかで疲れたからのう」

 「だから俺も誘ったのかよ。まあいいか」


 アリスが四人分のカップを用意して、そこに少し雑だがフリードが紅茶を入れていった。いつも喧嘩ばかりしている(いつもアリスが勝っている)が、さすが幼馴染と言うか、意思疎通が出来ている。そんなところが少し微笑ましかった。

 皆で紅茶を飲んで楽しんでいたが、不意に飲むのを止めた。何故止めたかと言うと、少し建物が揺れたからだ。 

 ゴットンは、怪訝そうな顔になった。


 「地震か?……それにしても外が騒がしいような」

 「し、失礼します」

 

 息を切らせている兵士が敬礼をして入ってきた。


 「じゃ、ジャイアント・アームが城の城門を突破しました。いきなりの事で対処が間に合わず、現場は想像以上に混乱しており、とにかく大変な状況です。すぐさま指揮をお願いします」

 「しょうがないのう。儂が出て行こうかのう」

 「俺も行くぜ。さっきの仕事でなまった身体をほぐすかな」

 「……私はエミル様の護衛としてここに残る。それで良いですね?」

 「う、うん。皆頑張ってきてね」

 「「おう!」」


 二人は元気な声で返事をして、騒がしい方向へと走っていった。



城下町広場に出たフリードとゴットンは、周囲を懸命に見渡した。今の所はここまでの被害は出ていないらしく少し安堵した。

 『ドゴオオオン!』

 東側の住宅地から大きな音を立てながら半壊した屋根がこちらに吹き飛んできた。


 「危ねえ!」

 「ワシに任せろい。はああああ!」


 ゴットンは斧を低く構え、迎え撃った。そして、屋根が寸前のところで当たりそうな時に下から上に向かって思いっきり一閃した。真っ二つに割れ、見事に俺達に被害が無かったが生きた心地がしなかった。

 しかし、そんなこともあまり思っておらず、すぐに我に返るとゴットンと一緒に住宅が壊れた所の方角に走った。



 走って三十秒で来る事が出来た。辺りは瓦礫などが散乱しておりもしここに住民が住んでいたら大変になっていたと思う。この城には制圧したばかりでこちらに連れてきてなかったのが功をそうしたらしい。

 周囲を見渡すと、数人の兵士が倒れており生きている者もいるが、体の半分を食われて目を開けたままで死んでいる兵士も見受けられた。

 ゴットンは、手を拝みながら目を閉じさせていた。

 フリードは、近くの生きている兵士を抱き起こして魔物についての事情を聞いた。


 「大丈夫か!魔物はどこに」

 「フリード将軍……あいつは城の方角に……行きました」

 「そんな馬鹿な!俺達とは一度もすれ違っていないぞ」

 「や……やつは地中に潜る性質があるのでそのだからだと思います」

 「すぐに向かわないと行けないが……」

 「私達は大丈夫……です。早く行って下さい。それと死んでしまった兵士達の仇……を」

 「任せていろ。だからお前達はここでゆっくり休んでいろ」

 

 その兵士は微笑みながらゆっくりとまぶたを閉じた。それを見届けると、近くに大丈夫な兵士に『あとは任せる』と言ってもとの来た道を戻ろうとしたが……


 「うごごごごごおおおおお!」

 「何だと!?」


 途中まで行っていたが何かの拍子で戻ってきたタイラント・アームが姿を現した。二度目だが、遠くから見るのとまじかで見るのとでは迫力が全然違った。大きさは、フリードの三倍くらいで、目が凶悪そのものだった。もしかしたらそれだけで錯乱状態になってもおかしくは無いだろう。

 しかし、フリードは、槍を構えた。同じように隣ではゴットンが斧を構え、そのままここにいる兵士に弓の号令を出す為に左手を掲げた。

 それを見た兵士達は、目の前の魔物に焦っていたが、何とか矢を装填して弓を構えることに出来た。

 顔を動かさず目だけで確認すると容赦なく左手を振り下ろした。その瞬間、一斉に数十という矢が魔物に目掛けて飛んでいった。何故か避ける動作をせずにほとんどの矢を受けた。それにより数秒経っても動かなくなくなったので死んだのかと思いかけて気が少し緩みかけた瞬間。

 

 「うごごごごおおおお」


 矢を受けて死んだと思っていたはずのタイラント・アームがいきなり咆哮ほうこうを上げた。それに何人かの兵士が腰を抜かした。叫び終えた後に、何人かの兵士に邪悪な目つきで睨みつけ、やられた兵士は恐慌状態に陥ってその場から動けなくなってしまった。その兵士達に向かって思い切り突っ込んできた。

 フリードは、怖いのを歯で食いしばりながら前に出た。


 「来い、化け物!」

 

 しかし、それを嘲笑うかのように地面に潜ってしまった。

 フリードはしまったと思い後ろに振り返った。

 ジャイアント・アームが再度地中に出て兵士に向かって飲み込もうとしたが、それにいち早く気づいたゴットンが斧で斬り込んだ。


 「甘いのう!」

 「うががああああ!」


 致命傷ではないが、斧を思い切り食い込ませたおかげでそれなりのダメージが入った。

 しかし、魔物も負けておらず、すぐさま首を横になぎ払うかのようにしてゴットンと近くの兵士を吹き飛ばした。


 「ぐはっ!」


 さすがの歴戦の猛者でもその行動に対応できず家の瓦礫に突っ込んでしまった。

 それを見た魔物は、エミル達がいる城に次の獲物を見つけたとばかりに邪悪な微笑をして、地中に潜ってそちらの方向に進んでいった。


 「そっちにはエミル様とアリスがいるんだぞ。くそっゴットンは大丈夫か」

 

 ゴットンが突っ込んだ瓦礫の方に声をかけた。少し弱々しかったが返事が返ってきた。


 「ワシは……大丈夫じゃ。はよう行け……ばか者が」

 「すまねえ、早く来いよ。そうしないと先に倒しちまうからな」

 「ああ……」


 フリードは、そう言うと全力で城まで走って行った。



アリスを含む護衛部隊約五十人程が玉座にいつもよりも規則正しい姿勢で座っているエミルの護衛をしていた。いや、緊張しすぎて思わず背中がピーンとなってしまっているだけかもしれないが。

 しかし、その事にはあまり思っている余裕はなく、皆緊張を高めていた。

 先ほどフリードとゴットンがタイラント・アームと激突して負傷をさせたらしいが、痛みを振り絞って反撃をされ、こちらが態勢が崩れたほんの一瞬に目標を変え、こちらに向かってくると報告が先ほど上がってきた。

 その為もっと兵士を配置した方が良いと思ったが、なにせ城の中なのでたくさん人がいると攻撃がし辛いという事なので、外でタイラント・アームを迎え撃つ方にほとんどの兵士がそちらに行ってしまった。

 

 (……ここでエミル様を守らなければ……お兄ちゃんに合わせる顔がない)


 ナイフを懐から取り出しながら思った。直感と言った方が良いだろうか。敵の気配がどんどん近くになってきている。

 エミルや他の兵士達の顔を見ていると皆、何かが来ると察知しているかのように身構え始めた。


 (やはり……どこから来る)


 両手に合計八本のナイフを装備して構えた。その時……


 「ぐおおおおおおおううう!」


 正面から堂々と地中から這い上がってきた。数箇所に傷跡があり、血が噴出していたがこれだけで外の防衛網を突破してきたと思うと、皆恐怖した。

 アリスは、そのタイラント・アームを姿を見た瞬間に自分の両親を殺した人間に重ねてしまった。獰猛な目、凶器じみた唇、その所にいる人が戦慄してしまうほどの声。全ての人がそいつに焼かれ、引き裂かれ、殺される。

 両親を殺したやつと同じだった。だから、私の目標は今二つある。一つは戦争の無い平和の国を作るために。もう一つは……。


 「私の両親を殺した奴に復讐する為!!」


 声と発したのと同時にタイラント・アームに向かって走り出した。一本を敵に向かって投擲した。弾かれてしまったがどの程度の硬さか見るためにわざとやったのだ。ギロリとした目でアリスを睨みつけた後、頭から突進をしてきた。それを見た瞬間に上に向かってナイフを一本投げた。そのナイフが天井に突き刺さった瞬間、アリスが飛び、タイラント・アームは下を向きながら突進をしていたのでいきなり目標物が消えてしまったので、一瞬戸惑って停止してしまった。

 『ぶしゃああああ』

 タイラント・アームに六本のナイフが背中の傷口に当たって大量の血がほとばしる。何とアリスは、後ろに回りこんでいたのである。


 「ぐおおおおおおおううう!!」


 大きな声を出しながら苦しそうにしていた。

 さっき使ったアリスのナイフは特殊でナイフの下には縄と小さい装置がついていた。マラハイ伍長が作ってくれたもので構造は詳しくは教えていられていない。しかし、あまり高く飛ぶことが出来ず五メートルまでしか飛ぶことができないが、敵が背を低くして頭から突っ込んできたおかげで避ける事ができた。

 怒り狂ったタイラント・アームはこちらの方に向いた。しかし、それも計算の内だった。


 「撃て!!」


 背中に無数の矢が刺さり先ほどの傷口や新たに皮膚が耐えきれずどんどん血が噴出してきた。


 「うごごごごごご!!」


 さすがにもう弱り果てていた。しかし。


 「うごごごごごおおおお!!」


 最後の気力を振り絞ってアリスに突進を仕掛けてきた。さすがのアリスもこれに驚き、ナイフを三本、四本と当てるも行きよいが止まらずに向かってくる。


 (私……死ぬの……こんな所で……助けてお兄ちゃん!)


 当たろうとした瞬間。


 「アリス。お前の獲物取るぞ」


 フリードは槍で真っ二つにした。肩にかけてもう一つの手を差し出した。


 「まだ決着はついていないだろ。たく」

 「……いつも勝ってるの私。だけど今回は私の負け」


 フリードの手を取ってアリスは起き上がった。エミルの安否を木になったが、こちらに笑顔で近づいてきていた。


 「良かったー。見ている方もとてもドキドキしたよ。でも、生きててくれて本当に良かったよ」

 「ありがとうございます……エミル様」

 「しかし、被害はでかいな。ゴットンも少し怪我しちまったし。兄貴達が早く帰ってこないとな」

 「これは酷いよね。修理と負傷者の手当てや死者の埋葬もして上げないと」

 「……魔物は倒すことが出来た。もう現れることが無いはず」

 「ああ、だが何か嫌な予感が」

 「ぐごごごごおおおおお!」

 「「「何!?」」」


 倒したはずのタイラント・アームが目の前にいる。生き返ったかと思ったが、隣に死体があるのでそうではなかった。ではそうすると……


 「もう一体いたの?何で……どうして」


その事に周囲の兵士達も不安な顔になった。それもそのはず先ほど倒したと思っていたタイラント・アームがもう一体いるのなんて誰にも想像はしていなかった


 (やばいな、もう一体の突如の出現で兵士達の動揺が態度に出ている兵士もほとんどになってきたか)


 フリードは、唇を噛みしめながら唸ったがこのままでは被害が更に悪化してしまう。それをどうしても防がねばならなかった。槍を構えなおし皆に指示を出した。


 「この俺が敵をひき付ける。その隙に背中に回り込んで攻撃をしてくれ。行くぞ!」

 「……分かったわ。援護は任せて。エミル様は遠くの方に出来るだけ逃げてください」

 「え、でも」

 「早く!貴方たちエミル様の護衛を頼みます」

 「はっ!エミル様こちらに」


 エミルは何か言いたそうな顔をしていたが、ここにいても何も出来ないと悟ったのか数人の兵士を連れて急いでここから離れ始めた。

 それを感じ取ったのかエミルを標的に変えようとしたが。


 「どこ見てんだよ!このやろう」

 

 鋭い一閃。空気を切り裂く程の早く重い一撃を与えた。


 「何!?」


 思い切り後ろに跳び下がった。硬い。先ほどのタイラント・アームは弱っていたとはいえ真っ二つにするほどの威力はあるので、傷ぐらい普通につくと思っていた。しかし、傷どころか逆に少しだけだが、刃こぼれしてしまった。

 だが悪い事ばかりではない。敵の注意がこちらに向いてくれたのだ。少し心の中でガッツポーズを決めた。

 タイラント・アームがこちらに向いた事で少し違和感に感じることがあった。何かが違う。そう感じたのだ。

 しかし、その感じを捨て、一気にたたみかけようと号令を出した。


 「今だ!一気に行け」

 「「「はっ!」」」


 数人の兵士が矢で遠距離攻撃をし、その他の者は一転集中でタイラント・アームに攻撃を仕掛けた。アリスもナイフを投げて援護をした。

 さすがにあれほどの物量ならいける。そのときはそう思っていた。

 しかし、現実は甘くなかった。


 「……え?」

 「どれだけ硬いんだ。かすり傷一つ負わないのかよ!」


 兵士達の剣の刃が完全に取れて使い物にならなくなり、矢やナイフは弾かれてしまった。その事に驚き戸惑っていた兵士達が次のタイラント。アームの標的になっているのに気づいていなかった。

 フリードは、その事を知らせようとした瞬間に。


 「がふううううう!」

 「ひいいいいいいっ!よ、よくも俺の同僚を。くそおおおおお」


 食われた兵士の仇とばかりに立ち向かう兵士が五人程いたが、地中から自分の腕を出すと小さい虫を殺しているかのような感覚で興味が無さそうに捻り潰した。

 それでとうとう頂点に達してしまった。いくら戦いになれている兵士達とはいえ、伝説の魔物と出合って戦うだけではなく、自分たちの前で人間がいとも簡単死んでしまったのだ。逃げ始めた人、錯乱する人、恐怖のあまり気絶してしまった人などここであふれかえってしまった。

 それをタイラント・アームが容赦なく吹き飛ばし、殺して死体の数を増やしていく。

 しかし、それをただ黙って見ているだけではなく攻撃する人もいた。フリードとアリスだ。


 「ここで、ここで!!」

 「……フリード落ち着いて。このままでは私達も死ぬ」

 「そんな事言ったってどうするんだよ!」

 「……あれは恐らく亜種と考えた方がいいと思う」

 「亜種?何だそれは」

 「……タイラント・アームをもう一段階強くしたもの。普通なら腕なんて無かったのにあいつはある。しかも異様に皮膚が硬い。それを踏まえてそう結論した」

 「そしたら、どうやって勝てるんだよ、あぶねえ!」


 巨大な手(三本しかない)での攻撃を槍で受け流したが、ミシッと嫌な音がした。アリスの方も寸前のところで回避に成功した。荒い息をしながら答えた。


 「分からない」

 「何だと!?ふざけるな!」

 「それを見極めるために今は敵の動きを見て弱点を見つける。その他に時間を稼いで援軍を待つ。それをするしかない」

 「くっ、今は粘るしかないのか」


 悔しそうに唇を噛んでいた。噛みすぎて血が出ていたが今はそれに気にしていないようだ。

 ところがタイラント・アームの動きが急に止まった。何かを感じ取ったのかエミル達が逃げていった方角を見つめていた。それを数秒続けたあと、動き出した。エミルの方向に。

 何があったのか知らないがそちらの方向には、エミルがいるので行かせてはならなかった。しかし、タイラント・アームの速さは尋常ではなく到底フリード達が追いつける速度ではない。


 (エミル様!早く逃げてください)


 フリードは自分の出せる本気の力を出しながら走った。



 「皆は大丈夫かな。私も剣、習おうかな」


 何故か知らないが心の中で嫌な予感がさっき程から支配していた。


 (フリードとアリスはそんな事は無いと思うけど……マサキ達もどうしているのかな。帝国と戦っていると思うけど)


 自分の事もそうだがマサキの事もとても心配になっている。エミルは何故ここまでマサキの事を気にしているのか自分でも良く分かっていなかった。その事に走りながら考えようとしたが、中断してしまった。タイラント・アームが自分達の前に姿を現したからだ。


 「え?」


 疑問に思ってしまった。何故自分達よりも早いのか。フリードやアリス達はどうなったか。そんな事をめまぐるしく思ってしまった。

 護衛していた兵士達がエミルを守るように前に出た。


 「何故先回りしているのかはしらんが、エミル様に害をなすものは死ね!」

 

 皆で一斉攻撃。しかし、刃が通らない。驚愕した瞬間、全員まとめて壁に向かって吹き飛ばした。残るはエミルただ一人。

 タイラント・アームは大きな口を開けこちらに向かって襲い掛かってきた。

 エミルは、それに避けることはできない。その時。


 「エミル殿!!」

 

 誰かがエミルの身体を抱きかかえたおかげで助かった。


 「ゴットン。助かったよ……え?」


 助けてくれたのはゴットンだった。その事にお礼を言おうとした瞬間、腕を押さえて倒れてしまった。

先ほどの攻撃で腕を食われてしまったらしい。しかも、紫色の液体がついており、毒に犯されていた。

 再度敵の攻撃が始まろうとしていた。しかし、その隙に攻撃を加えるものがいた。


 「この化け物め!!」


 壁を蹴って高く飛び顔の目の部分に槍で横払いの重い一撃をした。槍は折れたが敵の目に傷をつけることに成功したが、それでも叫び声や失明をしなかった。

 アリスもナイフで援護したがタイラント・アームの息で吹き飛ばされてしまい意味が無かった。絶体絶命だった。

 しかし、攻撃が来なかった。タイラント・アームはゆっくり周囲を見渡すと地中に潜ってしまいすぐに気配が消えてしまった。突然の事過ぎて良く分からなかったが、生き延びる事に成功したが、何人の兵士が死んでしまったのか、それと……。


 「ゴットン、大丈夫?」

 

 エミルはすぐ近くまで駆け寄ったが、荒い息をしているだけで返事を出せないようだ。それと多くの兵を死なせた事に泣き崩れてしまった。フリードは、多くの命を守れなかった事に悔いていた。アリスももう少し自分の力があればと思っていた。

 タイラント・アームの影響で城の部屋や廊下に火事になっていたが、そんな事はあまり気にする事が出来なかった。

 


 待たせてしまいすみませんでした。最近何かと忙しいものなので更新が遅れるかもしれませんが、それでも見捨てずに見てくれると嬉しいです。

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