撤退戦2~バブル城~
少しの間休息を取った俺達は、そのまま来た道を戻っていた。
遅いが着実に町に向かっており、誰もがこのつらい状況から生きようとしていた。
休息を終えた頃からずっと歩いていたので、日が傾き沈みそうで、もうそろそろ辺りが暗くなりそうだった。
「ここらで休憩にしよう。腹も減ったし、少し休んだ方がいいかもしれないな」
「そうね。私も賛成」
「分かったぜ。でも、少し休んだら夜の内にまた進むか?」
「すまんがそうなってしまうな。皆には悪い事をしているな」
「気にすんなよ。それじゃあ俺は言ってくるぞ」
そう言い残すとフリードは、焚き火と食事の準備を皆に知らせに行った。
俺の隣にいつの間にか移動していたアリスも火打石を使って焚き火の準備をはじめた。
今更だが、この世界にはライターなどの概念が無い為、こういうものを使って火をつけたりする。
この世界に来た当初は、全然火をつけられなかったが、日を積み重ねるごとに出来るようになった。今では出来るのが当たり前になってきたぐらいだ。
「お兄ちゃん、燃えそうな物を集めるの手伝って。そこら辺に枝とか葉っぱが落ちているから」
「任せとけ。何か可愛いアリスを見ていると和むな」
「……結婚する?」
「何でそんな結論にたどり着いた!?」
そんなたわいも無い話をしながら自分の周辺から枝を集めて焚き火を起こした。
アリスは、自分の鞄から携帯食(肉や野菜、フルーツを乾燥させたもの)を食べた。
意外とこの携帯食は、おいしく持ち運びが便利な為、俺は結構重宝をしている。他の皆にも人気である。
俺は、それらを食べた後、なんとなく上を向いた。
とても綺麗な星空がたくさんあり、何回見ても感嘆を零してしまうほどだった。
そんな俺の肩に不意に重くなった。
いや、重くは無い、寧ろ軽いがアリスがいきなり寄り添うように頭を俺の肩に乗せてきた。
その事にドキドキしていたが、アリスの兄として無表情を保ちながら星を見ていた。
そんな事を露も知ら無いアリスも俺と同じように星を見始め、遠くの方では騒がしかった。こちらの方では静寂としていたが、アリスが唐突に話しかけてきた。
「……お兄ちゃんは違う世界から来たんだよね」
「うん。日本って言う国から来たんだけどそこではこんなにも綺麗な星が見えなかったな。もしかしたら田舎に行けば見えたかもしれないけど」
「私は、星が大好き。知ってる?この世界では密かに二人の妖精族が愛し合っていたけど、その二人は結ばれてはいけない運命で、それを気づいてしまった妖精族の長が二人を離れ離れにしてしまうお話」
「まるでおりひめとひこぼしの話だな。アリスは、この話が好きなのか?」
「……私は嫌い。好きなのに会えないなんて……とても辛い。お兄ちゃんは?」
「俺はそうは思わないかな」
「何でそう思うの?」
アリスは、俺の肩から顔を離してこちらにキョトンとした顔をしながら向いてきた。
そんなアリスに微笑みながら答えた。
「離れ離れでも愛し合っていたら、伝えたい思いや感情が相手にもきっと繋がると思うよ。例えば俺の記憶が無くなってしまって皆の事を忘れてもアリスたちが強く思ってくれれば、俺は思い出すことが出来るよ。まあ、こんな可愛い妹を置いていけるわけ無いんだけどね」
「……可愛いなんて……あと、私の事を一人の女の子と見て欲しいと言うか……」
「え、何?声が小さくて聞こえないんだが」
「何も言っていない。気のせい」
何か聞こえた気がするがアリスが何も言っていなかったというので深くは追求をしなかった。
その後は、休息を取った俺達は町を目指して後退していた。
しかし、俺達が考えたくない展開がやってきてしまった。
俺達が戻ってきた道の方からたくさんの馬の駆ける音や鎧や剣などの金属の音があたり一面が静かな為、響いてくる。
さすがにこれ以上は逃げる事が不可能な状況なので隣にいるフリードとアリスに目配せをして、音がする方に向き臨戦態勢を取った。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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