異世界に転生
鳥の鳴き声が聞こえて僕は、ふと目を覚ました。
最初に見えたのは、知らない天井だった。
今度は、周囲を見ようと身体を起こした。
そこにあったのは、僕の知らない家具がたくさんあった。明らかに自分の部屋ではなかった。
「何処なんだ……ここは。僕は確か、本を開けたら急に光りだして……」
僕はそう考えていると、コンコンっと扉を軽く叩かれ、急に開いた。
そこに立っているのは、僕とあまり年が離れていなそうな少女が立っていた。
長い髪の金髪の女の子が、僕の事をじっと見ていた。西洋風みたいな服装を着ているがとても似合っていた。
「ど、どうしよう!日本語通じるかな。通じなかったら、ここが何処なのかも分からないし、家にも帰れなくなっちゃう!」
僕は、いきなり現れた外国人ぽい女の子を見て慌ててしまった。話しかけるかどうか、話しても日本語が通じるかどうか色々な思考が頭の中によぎった。
そんな事を、考えていると金髪の女の子が心配そうな声で話しかけてきた。
「大丈夫?どっか痛む所とかない?」
(よかった~。とりあえず日本語喋れるんだ)
僕は、そのことに安堵して不躾だと思うが女の子に質問をしてみた。
「僕は、何でここに寝かされているの?あと、ここは何処だか知ってる?」
質問の答えを女の子が答えるのを静かに待った。
数秒後女の子はおずおずとした口調で言った。
「君が道端に倒れていて、フリードが君を担いで私の部屋まで運んでくれたの。それとここは、ナストレアよ」
ナストレア。聞いたことの無い町だ。もしかしたら、世界地図を隅々まで探せばあるのかもしれない。
僕はとりあえず日本の事を聞いてみた。
「僕は、日本から来たんだけど、ここからどんぐらい離れてる?船とか飛行機使えばすぐに帰れる?」
「飛行機?日本って何処なんですか?」
「アニメとか漫画知ってる?日本のは結構有名なんだけど……」
「アニメ?漫画?何言っているのか分からないんだけど」
女の子は、本気で分かっていないようだった。
これじゃあ本当に家に帰れなくなってしまうっと思っていると、カンッカンと外から鐘の音が響いてきた。
「今日は町の集会日だった!はやくいかなくちゃ!すぐに戻ってくるから君はここに居てね」
そういい残して女の子は急いで扉から出て行ってしまった。僕は、どうしようか途方に暮れているとテーブルの上に奇妙なお婆さんから貰った本が置いてあった。
(確かこれを開けた瞬間に光出して、気づいたらここに居たんだよな……もしかしたら何か帰れるヒントみたいなものがあるかもしれない)
今の自分は、藁でも縋りたい一心で本を開けた。
そこには、見たことの無い字で本にビッシリと書いてあった。
しかし、何故か知らないが本の内容がスラスラと頭に入ってくるように分かった。要するに本に書いてあった内容は、ここは『異世界』だと言う事だった。
「ええええええええええっ!?異世界って、戻る方法は!」
探したが何処にも載っていなかった。途方に暮れているとさっきの少女が戻ってきた。
「どうしたの?世界が終わったような顔をしちゃって」
「うん、帰る事が出来なくなって……」
「それじゃあ家に居て良いよ」
「ありがとうってえええええっ!そんな悪いよ!」
「私だけじゃ広すぎて、嫌だったの。それでもダメ?」
女の子から上目遣いをしながら頼まれた。彼女居ない歴=15歳のため僕は、ドキドキしてしまった。
「それじゃあ、帰る方法が見つかるまでお願いします」
「うん、ありがとう。あと、自己紹介がまだだったね。私の名前はエミルよ。一様、この町を治めている貴族よ」
「僕の名前は、天宮正輝だよ」
「私の事は、家族同然のつもりで接してね。私もそうするから」
「うん、ありがとう。これからもよろしくね」
僕と同い年ぐらいの女の子が、町を治めている事にとても驚いたがある事に気づきそれをエミルに訊ねてみた。
「エミルのご両親はどうしたの?」
僕は聞いてはいけない事を聞いてしまったのかもしれない。それでも、彼女は嫌な顔をせず言った。
「私の両親は1年前の私が14歳の誕生日の時に病気でなくなってしまったの。お父さんとお母さんが、この町とこの家を残してくれた。だから、私はどんな事があってもこの町を守りたいの」
エミルは、僕の方を向いて真剣な顔つきで話してくれた。
僕は、聞き終わると手を思わず握ってしまった。
「えっ」
「僕も手伝うから。見ず知らずの人間だけど何でも頼ってくれて良いから」
「……ありがとう」
僕は、その言葉を聞いた途端エミルやエミルの大切な物を、守りたいと思った。
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あれから2年経った。僕は、ナストレアで知り合った人たちに情報をたくさん集めた。
まず、この国を治めているのはオルガ帝国だった。言ってしまえば、逆らうものは全て死刑のような国だ。住民に多くの税金を払わせ、払えないものは干し首にされてしまう。逃げた場合や亡命しようとしたものも容赦なく殺されてしまう。大変恐ろしい国だ。
次に、戦争が日常茶飯事に起こることだ。戦争の無い国に生まれ育ったため、そんな事が最初は信じられなかった。しかし、この異世界の新聞を見てみると無残な姿の人や町が普通に写っているため信じるしか出来なくなってしまった。
最後に、このナストレアは帝国の支配下に入っていないことだ。でも、帝国の力がすぐ目の前まで迫っていた。心配ではないのかと聞くと、エミル様がいるから大丈夫っと皆、言っていた。
(エミルは皆から信頼されているな。俺も頑張らないと)
俺も、ただこの2年間遊んでいたわけではない。書物や武器の扱い、戦い方など色々な事をしてきた。
たくさんの人と仲良くもなった。一部の人とは、義兄弟の契りも結んだほどだ。僕から俺にしたし、それはいいか。
そんな事を思い出していると、いきなり扉がダンッと勢い良く開かれた。入ってきたのは、フリードだった。武器の扱いがナストレア1と謳われる身長が180の筋肉マッチョだ。これでも、俺と1歳年下で、最初は貧弱野郎と罵られていたが、エミルの為に必死で働いている所を見て、感動し今では兄弟の契りを結んだ弟だ。
「どうした、フリード。エミルもここに居るんだぞ」
「兄貴!どうしたもこうしたもねえよ!これを見てくれ!」
フリードが珍しく慌てた様子で手紙を渡してきた。俺はそれの手紙の中身を見てみた。
『ナストレアの諸君!君たちの町を我が軍の隣の国のミスカト王国を支配するための最前線基地として使いたい。更に食料や各種の装備も用意してもらえると助かる。良いお返事を期待している。オルガ帝国』
短い文章なのに読むのがとても時間がかかった。俺は、一通り見ると無言でエミルに渡した。
「…………」
「帝国宛の手紙ね。少し拝見させていただくわ」
手紙を見た後のエミルは、皆に急いで召集してっと言ってきたのですぐに呼びに行った。
会議に集められたのは、俺を入れて4人だった。俺、エミル、フリード、そして4人目がアリスと言う女の子だ。アリスは、長い茶髪で身長が140ととても少なく幼女とよく間違われるがフリードと同い年だ。しかし能力的には優秀で、戦場での指揮能力がとても高く、内政や外交能力も高い。ナストレアの中で欠かせない人物だ。フリードと同じ年齢で、俺がこの町に来てエミル以外に最初に打ち解けたのは、アリスだった。今ではお兄ちゃんと呼ばれている。
「皆は、知っていると思うけど帝国からこのナストレアを前線基地としたいと要請が着たわ。どうすればいいと思う?」
エミルは心配した顔になりながら皆に意見を求めた。その意見に最初に答えたのは、フリードだった。
「徹底抗戦だな!帝国なぞ俺が倒し尽くしてやる!」
「……帝国の兵力は凄まじい。真正面から戦おうとすれば、一瞬で私たちの負けになる」
フリードは帝国と戦おうと言うが逆にアリスは帝国と戦ったら負ける事になると言った。
確かに、アリスの意見は正しく帝国と正面から戦えば一瞬で俺たちの町は滅ぶだろう。こっちの戦力は100ぐらいだとすると、相手の戦力は少なくても俺たちの1000倍以上だ。
「マサキはどうする?」
エミルは、俺の顔をじっと見つめた。フリードとアリスも同じように見てきた。たぶん、俺の一言で全てが変わるかも知れないと思った。
俺は、数秒間考えた後、考えがまとまった。エミル、フリード、アリスの順に見回すと声に出していった。
「エミルは、多くの人が重い税に苦しみ、逆らえば殺される世の中が好きか?」
「嫌いよ!皆が暗い顔している世の中なんて!」
「答え、決まっているじゃないか」
「え?」
「エミルはここの領主なんだ。エミルのしたいようにすれば良い。どんな困難があっても俺たちが守ってやるから」
俺が言った言葉は嘘偽りの無い本心だった。俺の隣にいるフリードはさすが兄貴!っと喜んでおり、アリスはエミル様が決めた事はそれを支持しますっと答えていた。エミルは、涙ぐみながら、ありがとう、とずっと言っていた。
「フリード、今日来た手紙を送り返してくれ。そして2度と送ってくるなと書いてくれ」
俺は、すぐに皆に指示を飛ばした。俺たちの未来は明るいのか暗いのか今の俺には分からないだろう。しかし、どちらにせよ帝国にたてついたのだ。これから忙しくなるっと思いながら俺は仕事に取りかかったのだった。
第2話を見ていただきありがとうございました。
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