闘技場~前編~
俺とアリスは、変装をしながらバブル城下町でウロウロしていた。さすがにカラハリ地方随一を誇るだけあってとてつもなく広く、今日は闘技場の開催日なので人もたくさんいた。
フリードは、闘技場にエントリーをして、中に入って行ってしまい、エミルは危険だと言うことなので連れて来なかった。少しふてくされていたが……。
保険としてシンクの一〇〇〇部隊をここから少し離れた所にある森の中に、待機させといた。もしもの時の為だが、そんな時は来ないでほしい。
今回の目的は、昨日話した通りこのバブル城の偵察である。城の構造、どのように攻めて、どのように勝つかであるが、全くもって見つからないのである。
(この城を落とすのは無理そうだな……そしたらどうするか)
俺は、そう考えていたが何も思い浮かばず、時間だけが過ぎていった。
それを見ていたアリスは、俺の頬を軽くつねってきた。
「いひゃいよっ。なんひゃひょっ!」
「お兄ちゃんは、すぐに仕事の事を考えている。もう少し私を見て」
「すみひゃへん。ゆるひて」
「分かった」
謝ると俺の頬から手を離してくれた。さすがに、仕事の事は忘れられないけど、今の状況だと周りからは、アリスとデートしていると思われているかも知れないから敵の間者だとばれにくい。
さすがだな、と思っているとまたつねってきた。
「私のさっきの言葉を仕事と結びつけた。お兄ちゃんと言えども許せない」
「ふみひゃへん。ていふうか、なんへわかったふ」
「女の勘?」
『カラハリ地方闘技場第1回戦を開催したいと思います』
放送が町全体に響いた。
『チケットのお持ちの方は、ゲートが開きますので、広場付近で待機していただきます事をよろしくお願いします』
俺達は、チケットを持っている為、広場に急ぐ事にした。
たくさんの人が闘技場会場の広場に来ていた。見に来る人だけでもざっと一〇〇〇〇人ぐらいは、いるだろうか。
俺とアリスは、その光景を見て驚いていたが、周囲の人たちに田舎者だと思われて笑われてしまった。確かにナストレアは、田舎だが……っと思っていると闘技場のゲートが開いた。
皆が入ろうとしていたので、俺達も怪しまれないように、受付嬢にチケットを見せて入った。
観客席は広く、一〇〇〇〇が入ってもまだ少し余裕があった。
俺達は、すぐ近くのベンチに座り、少し経つと試合が始まった。
この闘技場の参加数は何と五〇〇にも上るらしい。腕に自信のある者、金目当ての者などたくさんいると思うが、偵察の為に潜り込んでいるとは思われない……と思う。
そんな心配をしていると、フリードの試合が始まった。
相手の選手は、フリードよりも体格が大きく、素早い動きで翻弄させてきた。
だが、今のフリードは何度も帝国との戦いを経験しているおかげで敵の動きが見えるのか、全て避けきり、相手が攻撃の手を止めた瞬間に、思い切り木刀を頭から振り下ろした。それを食らった相手は一撃で昏倒した。
それを合図に歓声が上がった。
(さすがフリダム王国の将軍だな)
アリスも俺の心が聞こえたのか、隣で頷いていた。
それを機に2回戦、3回戦と勝ち進んでいった。決勝戦まで勝ち進み、あっけなく倒すと主催者がステージの所に登場した。
「がははははっ。帝国軍に入らんか?報酬を弾むぞ」
「ありがたいが、入らん」
フリードよりももっと大きな男が出てきた。身長は二五〇センチぐらいありそうなぐらい大きかった。
今回の主催者のアイザック大将軍だ。
「俺は見ているだけじゃつまらんから、一戦してみないか」
「良いのか!?やる、やらせてくれ!」
フリードは、はしゃいでいた。強い奴と戦える事に喜んでいるみたいだ。
「しかし、一戦だけしかやらん。お前が死んでも責任が取れんからな。がははははっ」
「良いぜ。俺もそう思っていたところだ」
そう言いあうと、両者が少し距離をとった。
フリードは剣を持ち、アイザックは何も持っていなかった。
その事にフリードは、怒った。
「何で、武器とか持たないんだよ!」
「がははははっ。武器ならここにある。ここにな」
「拳?何かあっても知らないからな」
そのまま二人が静止した。そのまま五秒ぐらいたった時、フリードから攻撃を仕掛けた。
鋭い一撃がアイザックに決まったと誰もが思ったが、当たる寸前手で受け止めた。しかも、二本の指だけで。
その事に戸惑っているフリードを尻目に、アイザックは大きな声で叫んだ。
「俺の力を示せ。地走り!」
「ぐはっ!!」
その瞬間、ステージの地面が一直線上に抉れた。もう少しの所で観客席の所にたどり着きそうだったが、途中でそれがピタリと消えた。
しかし、もろに受けたはずのフリードが、普通に立っていた。
アイザックは、笑いながら説明してくれた。
「俺の奥義の一つだ。距離とかも自由に決められるんでコントロールしやすいんだ。がははははっ」
その事を聞いた観客の皆は笑っていた。
しかし、俺とアリス、フリードは、驚愕な顔つきだった。
アイザック大将軍と戦う事にこれからなるのだから。
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