遠出~前編~
作戦通り俺達は、迂回していた。俺以外にゴットン、エミルが居る。本当はシンクがいるはずだったが、人数合わせでフリードの方に行かせた。
俺達は、少しずつ進軍し、このまま行けば三日もあればつけるかも、と思いながら進軍していた。今の所は敵の姿が見つからず、そこら辺に偵察部隊を先行させているが、何も報告が上がってこないので一安心だ。
俺は、この遠出で隣にいるエミルが疲れていないか心配になったので聞いてみた。
「エミル、疲れていたりするか?」
「私は大丈夫よ。最近こう言うのが増えてきて体力が上がったみたい」
「それなら良かった」
俺は、良かったと安堵して前を見た。前には、ゴットンが居て、ちょうど俺達の会話を聞くために後ろに向いていた為、目が合ってしまった。あった瞬間、侘びもせずににやりと笑った。
「盗み聞きとは良くないですね。ゴットン一〇〇〇人尉?」
「儂も若い頃は女子の事をよく心配してモテたわい。お主もきっと良い男子になるぞ?」
「盗み聞きの侘びくらい入れてくださいよ!あと、さらりと自分の過去を自慢しないでください!」
「近頃の若い者は老人の話も聞いてくれんのかのう」
ゴットンは寂しげな顔をしながら前を向いた。はあ、と最近ため息をばっかりついているなと思った。
その日は、一日中何も無く夜になった。
ゴットンは周囲の警戒、エミルは食事担当、俺はその他の作業になった。エミルは、キャンプみたいで嬉しそうだったが、俺は一抹の不安を覚えていた。
その時、ゴットンは焦った様子で俺の所まで来た。
「大変じゃ!偵察部隊の報告ではすぐ近くに敵の部隊が近づいておるわい」
「何だって!……この陣を放棄する。その時に周囲に油をたっぷりと撒いといてくれないか?俺は、エミルにこの事を伝えてくる」
「陣を放棄するじゃと?……まあ了解じゃ!任せたぞい」
俺は、早足でエミルの所に向かった。
エミルは、仕事が終わったのか、椅子に座っていた。俺の足音が聞こえたのか、こちらに向いて笑顔を向けてくれた。
「どうしたの?食事取った?」
「まだ取ってないな。それよりも敵がすぐ近くまで迫っているんだ。この陣営は放棄するから、一緒に行こう」
「分かった。でもこの戦いが終わったら食事をちゃんと取ってね」
「了解です、王女様。では、行きましょう」
俺は、エミルの手を握り、ゴットンの元にすぐに戻っていった。
その時のエミルの顔は、顔を赤くしていたが正輝はそれに気づくことは無かった。
帝国軍カラハリ地方攻略部隊所属ランマル一〇〇人佐は二〇〇〇の部隊を率いてアカーサス城に先行していた。
ランマルは、順調に行軍していたが、偵察部隊から敵の陣営を見つけたと言う報告が上がってきた。
(敵の陣営……夜だし奇襲に限るな)
そう思いすぐに兵士達に敵に奇襲をすると言い行軍を早めた。
敵の陣営がすぐ目の前まで迫った時、全軍に突撃命令を出して自分も馬を駆けさせた。
しかし、敵の陣営に奇襲したのは良いが、敵の兵士が一人も見つからなかった。その代わり、木など燃えやすそうな物がたくさん置いてあった。
(敵は逃げたのか?追撃するか)
そう思い兵士達にその事を言おうとした時に無数の火矢が飛んで来た。
「報告します。敵は近くの岩陰や森に潜伏していた模様です」
「何、今すぐ蹴散らすぞ!付いて来い!」
「無理です。あらかじめ油や燃えやすい物がたくさん置いてあり、火矢で当たった場所に大きな火の壁が出来て、広がっております!」
ランマルは、辺りを見渡すと火が広がっており、自分達の兵がどんどん焼かれていた。
(撤退だな。どこかに燃えていない箇所があるはずだ)
そう思い、周囲を見渡すと一箇所だけあり、撤退命令を出してそこから生き残った兵士を連れて逃げた。
しかし、待ち伏せていた敵の兵士に阻まれた。その中に見知った人物がいたので、ランマルは息を呑んだ。
「ゴットン将軍。こんな所で会うとは思いませんでした」
「お主は、ランマルと言ったかの」
「覚えておりましたか。昔は貴方に憧れを抱いていましたが、今は敵同士。貴方を討ち取らせて頂きます」
「良いじゃろう。来い!」
ランマルは、ゴットンに斬りかかろうとしたが、自分の部下が止める様に間に入ってきた。
「何をしている!そこをどけ!」
「ランマル隊長がいなければこの部隊は崩壊してしまいますから、早くお逃げ下さい!」
「くっ……すまん後は頼んだ」
ランマルは、残った兵士を纏めてすぐに戦場から離脱した。
後ろから兵士達の呻き声や叫び声が聞こえたが、悔しそうな顔をしながらただ唇を噛んでいることしか出来なかった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
すみませんが、2回に分けて投稿することになりました。すみませんでした。
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