お泊り
あれから、ひとまず落ち着いて今後の話を進めた。
「まず、宿ってどれくらいするんですか?」
嘉輝はまず今日泊まる場所の確保を急いだ。
「宿か?そうだなそんな高くないことは確かだ。泊まったことないからわからんが。まあ、今日はうちに泊まればいい。ベッドの空きは偶然、偶然だがかなりある。」
偶然のとこを必死な表情で強調したしいさん。
「わかりました。偶然空いているベッドを使わせてもらいます。何が起こるかわからないのでお金の節約したいですし。」
花菜と清華姉のおかげでお金はできたが多いわけではないのでありがたく話に乗る。
「なんか悪意を感じるがまあいいや。」
多分この適当なとこも信用を落としている一因ではないかと思う。
「それで、泊めてもらうのでご飯くらいはこちらが作ろうと思うのですが。」
「お、本当か!いやー、ミラを追い出しちまったから今日は生肉に生野草になるとこだったんだ。」
この言葉には流石の清華姉と花菜……はなぜか目をキラキラさせている。
「すごい、これが私の天職かも。嘉にぃに家事全般を頼んで私が寝る、食べる係。」
「おい、それはおかしいだろ!」
「はっ!」
やっと気付いたか。おバカとは思ってたがここまでとは。
「ゲームのをするが入ってない!このままじゃできないじゃん!」
「・・・・・・」
思っていた以上のおバカさんでした。
「まあ、そこは優しい嘉にぃなら気持ちを汲み取ってってことで大丈夫。」
いや、こっち向けて親指を立てるな。思わず指の方向を180度回して返してやりたくなるから。
「よろしくね、嘉にぃ。」
いい笑顔で言ってくる花菜。
俺は無視の方向で。
「……」
「よろしくね。」
「……」
「…よろしくね。」
「……」
「……」
花菜は黙ったかと思ったらいきなり動き出し嘉輝から5メートルくらい離れた壁まで行き、こちらに走ってくる。
そのフォームは運動神経がかなりいいだけにとても綺麗だ。
1メートルほど走ると急に飛んだ。
そのまま、空中で、姿勢を形成。
ここまでくれば、嘉輝にも何がやりたいかわかった。
いわゆるジャンピング土下座だ。
「ごめんなさい。お願いだから反応してください。」
ここまでされると断りづらい。
「あー、なんだ。自立はしろよ。」
花菜は外れるんじゃないかと思うくらい首を振ってきた。
そのあとは、何事もなく嘉輝は夕食を作るために台所に行くことにした。