8 今でも使える昔の知恵
舞台はルネサンス期のイタリア。
若き天才ミケランジェロが制作したダビデ像を、当時の依頼主が見に来たときの話です。
「鼻が少し高いな。少し削ったほうがよいのでは?」
そう言われた彼は、石膏の粉をこっそり手に握って足場を登り、実際には削らずにパラパラと粉を落としました。
下から見ていた依頼主は――
「うむ、よくなった。ありがとう」
実際は何も変わっていません。
思い込みに過ぎません。
しかし、実は実用的なのです。
大昔の天才が編み出した、究極の「受け流しテクニック」です。
相手の「何かしてほしい」「自分が正しいと感じたい」という
心の声に、
最小限のエネルギーで応えてあげる優しさでもあるのです。
苦情は、内容そのものより、
「聞いてもらえた」
「私の存在を認めてくれた」
という実感が足りないときにエスカレートしやすいです。
だから「ダビデの鼻」戦法は、
相手のプライドを傷つけず、自分も消耗せず、しかも結果的に「よくなった」と言ってもらえる、“生活の知恵”なのです。
これは相手の要望に応えられない場合にも使えるアイディアです。
例えば、
「この服のシワが気になる」
→ しっかり手でシワを払う仕草だけして、
「シワ、取れましたね!」
(ほぼそのまま)
などなど色々応用できます。
大事なのは、「はい、わかりました」のトーンで、ちゃんと「対応した感」を出すことです。
「本当に実行しなくても、相手も本人も、心が削られなければ良い」のです。




