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スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


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EP 22

アースドラゴン襲来!? いや、特上ステーキご来店

太郎国に、早馬の蹄音が響き渡った。

執務室に飛び込んできた伝令の報告に、宰相マルスの顔色が変わる。

「ご報告します! 北の山岳地帯にて、Sランク魔獣『アースドラゴン』が出現! 街道を破壊し、街へ向かっています!」

アースドラゴン。大地を揺るがす巨体と、鋼鉄より硬い岩の皮膚を持つ竜種。

一国が滅びかねない緊急事態だ。

「なんてことだ……! 直ちに騎士団を編成し、避難勧告を……!」

マルスが慌てて指示を出そうとした時、ソファで寛いでいた太郎がむくりと起き上がった。

「アースドラゴンか……強敵だな」

太郎の表情は真剣そのものだ。

しかし、その場にお茶を運んできた一人の女性エルフが、不思議そうに首を傾げた。

サクヤ「あら、アースドラゴンですか? 私、古い文献で読んだことがありますわ」

「ドラゴンのお肉って、脂が乗っていてとっても美味しいんですよね」

「えっ」

太郎の動きが止まった。

サクヤはうっとりとした顔で続ける。

「特に尻尾の肉は最高級の霜降りで、焼くと口の中でとろけるとか……」

グゥゥゥゥ〜〜〜……。

静まり返った執務室に、太郎の盛大な腹の虫が鳴り響いた。

太郎の瞳から「危機感」が消え、「食欲」という名の炎が宿る。

「……ふふっ、久しぶりに大魔法をぶつけちゃいますよ?」

サリーが立ち上がり、杖を構える。その目は「肉を焼くための火力」を計算している。

「楽しみですわ。硬い皮膚ごと叩き斬る感触、ゾクゾクします」

ライザが剣の柄を撫で、舌なめずりをする。

「一番槍はお任せ下さい。新鮮なうちに仕留めます」

ヒブネも槍を回し、準備運動を始めた。

完全に「狩り」の空気だ。

「え!? も、もしかして、太郎様達で行かれるおつもりですか!?」

マルスが仰天する。

「あぁ。軍隊を動かせば避難民が出るし、肉が傷む……いや、被害が拡大するからね。僕たち少数精鋭で行く」

「(今、肉が傷むって言いましたよね!?)」

マルスのツッコミを置き去りに、最強の「食材ハンターチーム」が出撃した。

北の山岳地帯、麓の平原。

ズシン……ズシン……と地響きが轟く。

山脈の一部が動き出したかのような、全長50メートルを超える巨大なアースドラゴンが姿を現した。

「グルルルルォォォォォ!!」

咆哮だけで嵐のような風圧が発生する。普通の人間なら腰を抜かす光景だ。

だが、太郎たちはよだれを拭っていた。

「デカい……! あれ全部肉か!」

「食べ出がありますね!」

「行きますよ! 肉の表面をカリッと焼き上げます!」

サリーが上空へ飛び上がり、詠唱を開始した。

「火の神よ、かの者を焼き払え! 『エンシェント・フレイム(古の劫火)』!!」

ボォォォォォォォン!!

サリーの杖から、山をも飲み込む紅蓮の火炎嵐が放たれた。

ドラゴンの岩の皮膚が赤熱し、咆哮が悲鳴に変わる。

「その炎、貰いましてよ!」

「同じく!」

ライザとヒブネが左右から飛び出した。

二人はサリーの放った魔法の炎の中に自ら飛び込み、武器に炎を纏わせる。

「ハァッ!!」

「セイヤッ!!」

炎の魔剣と化したライザの一撃が、ドラゴンの強固な脚をバターのように切り裂く。

炎の螺旋を纏ったヒブネの槍が、鱗の隙間を正確に貫く。

「グギャアアアアッ!!」

ドラゴンが体勢を崩し、倒れ込む。

その隙を、太郎は見逃さない。

「トドメだ!」

太郎は『雷霆』を構え、つがえた『必殺の矢』に全神経を集中させる。

雷霆は主の「早く食べたい」という強烈な意思を感じ取り、極限まで魔力を注ぎ込む。

矢はバチバチと音を立て、紅い雷光を放ち始めた。

「行くぞ! 今夜はステーキだ!!」

太郎はアースドラゴンの眉間に向けて、矢を放った。

ドゴォォォォォォォンッッ!!!

赤い閃光がドラゴンの頭部を撃ち抜く。

巨大な爆発音と共に、ドラゴンの巨体が完全に地に伏した。

「……ま、まだです! 完全に死んでしまうと血が回って味が落ちます!」

そこへ、白い調理服を着たサクヤが猛ダッシュで駆け寄った。

彼女の手には、太郎が提供した『高炭素ステンレス製・牛刀』が握られている。

「後は、お任せを」

サクヤは虫の息のアースドラゴンの首元に飛び乗ると、迷いなく包丁を突き立てた。

「失礼します……!」

スパッ!

鮮やかな手付きで頸動脈を切断。さらに魔術で心臓を動かし続け、一気に血抜きを行う。

プロの「活け締め」だ。

アースドラゴンは苦しむことなく、ただの「極上肉の塊」となって絶命した。

数時間後。

平原には香ばしい匂いが充満していた。

太郎が取り出した『バーベキュー鉄板(業務用)』の上で、分厚いドラゴンのステーキ肉がジュージューと音を立てている。

「焼けたぞー! 塩コショウだけでいこう!」

「いただきまーす!」

太郎は焼きたての肉をナイフで切り、口へと運んだ。

「んんっ!!?」

噛んだ瞬間、肉汁が噴水のように溢れ出した。

岩のような外見からは想像もできない柔らかさと、濃厚な赤身の旨味。

「美味しいな! ドラゴンの肉って!」

「本当に……とってもジューシーですわ!」

サリーも頬を抑えて感激している。

ライザは既に二枚目を焼いていた。

「これなら何度でもドラゴンを退治したいですわ。毎晩でもいけます」

「部位によって味が違いますね。次は首肉の煮込みを作りましょうか」

サクヤも料理人として、未知の食材に目を輝かせている。

こうして、国の危機は一回の食事会へと変わった。

太郎国の名物に「ドラゴンステーキ」が加わる日も近いかもしれない。

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