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スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


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EP 12

太陽と月、新たな命の輝き

エルフの里、太郎たちの住むツリーハウス。

そのリビングは、かつてないほどの緊張感に包まれていた。

魔神王との決戦の時でさえ、これほど張り詰めた空気ではなかっただろう。

「……僕に、出来る事は無いかな? お湯を沸かすとか、タオルを……」

「お湯もタオルも、もう十分すぎるほど運び込みました。太郎様、少々落ち着いて下さい」

ヒブネが静かにお茶を淹れながら、呆れたように言った。

太郎はリビングを熊のようにウロウロと歩き回っている。

座ったかと思えばすぐに立ち上がり、寝室のドアを見つめ、また座る。

「う、うん……。分かってるんだけど……」

じっとしていられない。

奥の部屋では、サリーとライザが今、命がけの戦い(出産)に挑んでいるのだ。

自分の無力さが歯がゆい。

「太郎様がここで慌てても仕方ないでしょう? ドッシリ構えて待つのも、父親の仕事ですよ」

「そ、そうだけど……! もし何かあったら……!」

「大丈夫です。里一番の産婆と、優秀な治癒魔法使いがついています。それに、あの最強のお二人ですよ?」

ヒブネの言葉に、太郎は少しだけ肩の力を抜いた。

そうだ、彼女たちは強い。信じて待つしかない。

時計の針が永遠のように遅く感じられた、その時。

「オギャアアアアア!!」

「フギャアッ! オギャアッ!」

力強い産声が、二つ重なって響き渡った。

「ッ!!」

太郎が弾かれたように顔を上げる。

ドアが開き、汗を拭いながら年配のエルフの産婆が出てきた。

彼女は満面の笑みを浮かべていた。

「おめでとうございます、太郎様。無事に、お生まれになりましたよ」

「!!」

太郎は返事もせず、寝室へと駆け込んだ。

「サリー! ライザ!」

部屋に入ると、神々しい光景が目に飛び込んできた。

ベッドの上、汗で髪を濡らしながらも、聖母のように微笑む二人の妻。

そして、その腕の中に抱かれた、小さな小さな命。

「太郎様……。元気な、女の子です」

サリーが愛おしそうに包みを抱き寄せる。

その中には、サリーに似た色の薄い髪をした、愛らしい赤ん坊がいた。

「男の子ですわ……。太郎様似の、凛々しい子です」

ライザも、もう一つの包みを優しく揺らす。

そこには、元気に手足をバタつかせる男の子がいた。

「あ……あぁ……」

太郎の目から、堰を切ったように涙が溢れ出した。

近づいて、震える手で二人の頭を撫でる。

「ありがとう! ありがとう! 本当にありがとう! よく頑張ってくれたね……!」

言葉にならない。ただ感謝と愛しさだけが胸を埋め尽くす。

ヒブネも静かに部屋に入り、その光景に目を細めた。

「ふふ、感動の対面ですね。……ですが太郎様、大事な仕事が残っていますよ」

「え?」

「お名前を付けませんと。この子達への最初のプレゼントです」

「名前……」

太郎は涙を拭い、二人の子供の顔を交互に見つめた。

散々悩み、迷い、考え抜いた名前。

でも、この子達の顔を見た瞬間、迷いは消えていた。

太郎は深呼吸をして、告げた。

「女の子は……『陽奈ひな』。男の子は……『月丸つきまる』だ」

「ヒナ……ツキマル……」

サリーとライザがその響きを口の中で転がす。

「陽奈……。暖かくて、優しい響き……。可愛い名前です」

「月丸……。強くて、神秘的な響き……。ありがとうございます、太郎様。この子も喜んでいます」

ライザの腕の中で、月丸がキャッキャと声を上げた。

「どういう意味なのですか?」

ヒブネが尋ねると、太郎は窓の外を見上げた。

そこには、昼間の青空(太陽)と、うっすらと見える白い月が同居していた。

「『太陽のように、周りを明るく照らす子になってほしい』。そして、『月のように、暗闇の中でも迷わない道しるべのような子になってほしい』。……そんな願いを込めたんだ」

「太陽と、月……。素敵です」

サリーが陽奈の頬にキスをする。

ライザが月丸の手を握る。

「陽奈、月丸。パパがくれた名前だよ。立派に育つのよ」

エルフの里のツリーハウス。

木漏れ日が差し込む部屋で、新たな家族の物語が始まった。

100円グッズの勇者改め、二児のパパとなった太郎の、賑やかで幸せな第二章は、ここからが本番である。

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