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スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


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EP 2

新大陸の洗礼と、銀槍のエルフ

サバラー大陸に上陸した太郎一行は、その足で港に近い冒険者の街「ガル」へと向かった。

ここの冒険者ギルドは、マンルシア大陸のそれよりも荒々しく、筋肉隆々の男たちや、見たこともない獣人の姿が目立つ。

「お、おい……。名前を書くだけでいいのかな」

太郎は緊張で手を震わせながら、登録用紙を提出した。

もしここで「貴様、さては太郎国王だな!」とバレたら、その瞬間に逃亡生活は終了だ。

「はい、佐藤太郎さんですね。職業は……『商人兼見習い冒険者』と。はい、登録完了だ。頑張んなよ、おっさん」

受付の強面のお兄さんは、事務的にスタンプを押して、鉄のプレート(最低ランク)を投げ渡した。

「……っ!!」

太郎はプレートを握りしめ、ガッツポーズをした。

バレてない! 誰も僕を知らない!

「良かった……。ここなら大丈夫だ。僕はただの『佐藤太郎』だ!」

「本当に良かったですぅ。これでやっと、静かな冒険ができますわね」

サリーもほっと胸を撫で下ろす。

「さて、依頼は何にしますか? まずは手頃な薬草採取あたりで小銭を稼ぎますか?」

ライザが依頼掲示板を見上げようとした、その時だった。

「よぉよぉ。ここらじゃ見かけない顔だな?」

ドカッ、と太郎が肩を突き飛ばされた。

振り返ると、ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべた3人組の冒険者が立っていた。

「へへっ、綺麗なねぇちゃん達だなぁ。こんな貧相なおっさんと一緒じゃ勿体ないぜ?」

彼らは太郎を完全に無視し、サリーとライザに身体を寄せてきた。

「そんな男と一緒に居ないでよぉ……。こっちで俺達と飲もうぜ? 悪いようにはしねぇからよ」

典型的な絡み方だ。

しかし、相手が悪すぎた。

「…………あら?」

サリーのこめかみに青筋が浮かぶ。

ライザの手が、剣の柄に伸びる。

(ぶっ殺していいですか、太郎様?)

(消し炭にしますわよ?)

二人の背後から、一般人には見えないが、太郎にはハッキリと見えるドス黒い闘気と魔力が立ち昇っていた。

まずい。ここで彼女たちがキレたら、ギルドどころか街の半分が消滅し、また「伝説」を作ってしまう!

(うわ〜! 面倒くさいのに絡まれたなぁ……。でも目立つのは嫌だ! どうしようかなぁ……)

太郎が冷や汗を流し、必死に妻たちをなだめようとした時だった。

「――そこの方々、少しよろしいでしょうか?」

凛とした涼やかな声が響いた。

人だかりを割って入ってきたのは、銀色の長髪をポニーテールに束ねた、美しいエルフの女性だった。

背中には、身の丈ほどの長さがある白銀の槍を背負っている。

「そちらの方が困って居るようですが?」

「あぁん!? 何だ? てめぇは!?」

絡んでいた男の一人が凄む。

「……無益な争いは好みません。どうか、お引き取り願えないでしょうか」

「うるせぇ! 女だと思って舐めてんじゃねぇぞ! やっちまえ!」

男たちが激昂し、短剣を抜いてエルフの女性に飛びかかった。

太郎が「危ない!」と叫ぼうとした瞬間。

ヒュンッ!!

風を切る音がした。

エルフの女性が背中の槍を一閃させたのだ。

それは刃ではなく、石突き(柄の端)による打撃だった。

「ぐはっ!?」

「うげぇッ!」

「は、速ぇ……!」

三人の男たちは、一瞬にして鳩尾みぞおちや顎を正確に打ち抜かれ、床に転がっていた。

あまりにも鮮やかな槍さばきに、ギルド内が静まり返る。

「く、くそぉ! 覚えてろよ!」

男たちは捨て台詞を吐いて、転がるように逃げ出した。

「ふぅ……全く。野蛮な方々ですね」

エルフの女性は、ふわりと髪を払うと、槍を背中に戻して太郎たちに向き直った。

「大丈夫でしたか? 怪我はありませんか?」

太郎は安堵した。怪我がなくてよかったのは、逃げていった男たちの方だが。

「ありがとうございます! 助かりました。僕は太郎です。こっちは家内のサリーとライザです」

「私はヒブネと言います。流れの槍使いです」

ヒブネは真面目そうな顔で一礼した。

「いやぁ、本当に凄い槍さばきでした。おかげで助かりました」

(おかげで妻たちが街を破壊せずに済みました)

太郎は心から感謝し、提案した。

「良かったら、お礼に酒を交わしませんか? 美味しいおつまみもご馳走しますよ」

「お礼など……。でも、そうですね。喉も渇きましたし」

ヒブネは少し迷ったが、太郎の無害そうな笑顔を見て、小さく頷いた。

「えぇ、是非。ご一緒させてください」

こうして、元・国王一行は、新大陸で最初のアテンド役、義理堅いエルフのヒブネと杯を交わすことになった。

彼女が驚愕するであろう「100円おつまみ」が火を噴くのは、この直後のことである。

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