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スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


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EP 76

七色の絆、ピカリがくれた奇跡

王宮の惨状は極まっていた。

魔神王バゴールの放つ無慈悲な闇の弾幕。

それを防いでいるのは、もはや魔法障壁ではなく、生身の騎士たちだった。

「ぐあっ……!」

「ひるむな! 太郎様を守れ!」

「我らが盾となるのだ!」

ボロボロになった騎士たちが、次々と倒れながらも壁となり、太郎たちの前に立ち塞がる。

だが、その防衛線も限界が近かった。

「くそぉ……このままじゃ……!」

太郎は唇を噛み締め、自身の無力さに打ち震えた。

どれだけ美味しい料理を作っても、どれだけ便利な道具を出しても、この圧倒的な理不尽な暴力の前では無意味なのか。

絶望が心を支配しかけた、その時だった。

『太郎……サリー……ライザ……皆……』

ふわりと、温かな光が太郎の目の前に舞い降りた。

手のひらサイズの妖精、ピカリだ。

『今まで、ありがとうね。美味しいご飯、温かいお風呂、楽しかった』

「え? ピカリ? 何を言ってるんだ?」

まるで別れを告げるような口調。太郎の胸に嫌な予感が走る。

ピカリの小さな体が、見たこともないほどの強烈な輝きを放ち始めた。

『ピカリ、最後の力使う! 皆の力を、ピカリを通して太郎に集める! そうすれば、きっと勝てる!』

「最後の力って……そんな事をすれば、ピカリちゃんは!」

サリーが悲鳴を上げる。精霊にとって「最後の力」を使うことは、自身の存在そのものを燃やし尽くすことを意味する。

「ピカリ! 駄目よ!」

ライザも手を伸ばすが、ピカリは首を横に振った。

『これしか無い! 太郎! 信じて!』

ピカリの瞳は、決意に満ちていた。

太郎は悟った。彼女は、自分たちを守るために命を懸けようとしている。

止めることは、彼女の覚悟を侮辱することになる。

「……分かった」

太郎は涙をこらえ、震える声で答えた。

そして、雷霆を高く掲げた。

「ピカリ! 頼む! ……皆! 僕に力を貸してくれ!!」

その叫びに応え、戦場に奇跡が起きた。

「私の力を……太郎様に!」

倒れていた騎士が、最後の力を振り絞り、祈りを捧げる。

すると、彼の体から白い光の粒子が立ち上り、空中のピカリへと吸い込まれていく。

「どうか、魔神王を!」

「私たちの魔力、全部持っていって!」

魔法兵たちが杖を掲げる。

「及ばずながら、このマルスの力も……!」

家令のマルスも祈る。

それだけではない。城の外、アルクスの街、いや、マンルシア大陸中の人々――太郎の料理を食べ、太郎に救われた人々の感謝の祈りが、光となって集まってきた。

「太郎様! 私の力を受け取って!」

「太郎様! 貴方は最強の男です!」

サリーとライザが、太郎の背中に手を当てた。

愛する妻たちの膨大な魔力と闘気が、奔流となって流れ込んでくる。

『受け取って! 太郎!』

ピカリがプリズムとなり、集まった全てのエネルギーを増幅し、一本の矢へと注ぎ込む。

「うおおおおおおお!!」

太郎が構えた『雷霆』がつがえた『究極の矢』。

それはもはや物理的な矢ではなかった。

赤、青、黄、緑……七色に光り輝く、純粋なエネルギーの結晶体。

雷霆も主の意思と膨大な力に共鳴し、弓全体が雷そのものへと変化する。

バチバチバチバチッ!!

太郎の周囲に、黄金の雷龍が舞い踊る。

「無駄だ! 闇に飲まれよ!」

魔神王が極大の闇の波動を放つ。

だが、太郎は退かない。

「行くぞ! 皆の力だ!!」

弦を引き絞る指が焼き切れそうだ。だが、痛みなど感じない。

「必殺! 『破邪の一矢はじゃのいっし』!!」

ズガァァァァァァァァァン!!

放たれた矢は、空間ごと闇を切り裂いた。

七色の光の帯が、魔神王の放った闇を中和し、消滅させ、その本体へと突き刺さる。

「な、なんだ……この光は……!? 温かくて……痛い……!?」

魔神王の絶叫。

闇の鎧が剥がれ落ち、光が彼の核を貫いた。

「ギャアアアアアアアア!!」

断末魔と共に、魔神王の体は内側から光に包まれ、粒子となって霧散した。

王宮の天井を突き破り、天へと昇る光の柱。

空を覆っていた暗雲が晴れ、青空が戻ってきた。

「……やった……」

太郎は弓を下ろし、へなへなと座り込んだ。

「やった……やったあああああ!!」

勝利の雄叫びが上がる。

だが、太郎はすぐに顔を上げ、空を探した。

「ピカリ!?」

宙に浮いていたはずのピカリの姿が、透け始めていた。

『太郎……勝ったね……』

「ピカリちゃん!?」

「ピカリ!」

サリーとライザが駆け寄る。

ピカリの体は、蛍の光のように明滅し、輪郭が崩れ始めていた。

『みんな……大好き……』

「ピカリぃ! 嫌だ、行くな!」

太郎が手を伸ばす。

しかし、その手はピカリの体をすり抜けた。

『ありがとう……』

最後に最高の笑顔を見せて、ピカリは光の粒となり、風に乗って空へと溶けていった。

「うっ、ううぅ……」

「ピカリちゃん……」

勝利の歓声に沸く王都の中で、太郎たちは身を寄せ合い、小さな英雄の死を悼んで泣き崩れた。

世界は救われた。だが、その代償はあまりにも大きかった。

太郎は空を見上げた。

どこまでも青い空に、ピカリの笑顔のような太陽が輝いていた。

「ありがとう……ありがとう、ピカリ……」

その言葉は、風に乗ってきっと彼女に届いただろう。

これが、英雄太郎の最後の戦いの結末だった。

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