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スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


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EP 49

激辛の雨と、閃光のフィナーレ

薄れゆく意識の淵で、太郎は温かな光を感じた。

サリーの必死の回復魔法が、砕けた肋骨を繋ぎ、内臓の損傷を修復していく。

「うっ……」

「太郎さん! しっかり!」

太郎はガバッと起き上がった。まだ体は軋むが、動ける。

すぐに戦況を確認する。

前方では、ライザが修羅の如き形相でベヒーモスと対峙していた。

神速の剣撃で攻撃を捌いているが、相手は伝説の魔獣。一撃の重さが違いすぎる。

「くっ……! このままじゃ、ライザが押し潰される!」

だが、今の距離では切り札が使えない。

『必殺の矢』は着弾と同時に広範囲を吹き飛ばす爆裂兵器だ。

あんな近距離で放てば、ライザも確実に爆発に巻き込まれる。

(威力が強すぎて、味方が近いと撃てない……これが必殺の矢の、最大の弱点だ!)

どうする? ライザを下がらせるには、奴の動きを止める必要がある。

太郎の視線が、ベヒーモスの巨体を走る。

そして、ライザが捨て身で斬りつけた「右脚」の傷口に目が止まった。

「そうか……傷口が開いている。なら!」

太郎はウィンドウを操作し、ある物を大量に取り出した。

チューブ入りの**『タバスコ』、『練りわさび』、そして『和辛子』**だ。

太郎は通常の矢を取り出し、やじりにそれらをたっぷりと塗りたくり始めた。

毒ではない。だが、生物にとってはある意味毒より恐ろしい「刺激物」だ。

「た、太郎さん? 何をしてるんですか?」

回復魔法を維持しながら、サリーが驚きの声を上げる。

「サリー! ベヒーモスの右脚だ! あの傷口に魔法をぶつけて、もっと痛めつけてくれ! 奴の意識を下に逸らすんだ!」

「わ、分かりました! 信じます!」

サリーは杖を振るった。

「火の神よ! かの者を焼き尽くせ! 『フレイム・バレット』!!」

ドォォォン!!

炎の弾丸が、パックリと開いた右脚の傷口に直撃し、肉を焦がす。

「ブモオオオオオッ!?」

激痛にベヒーモスが悲鳴を上げ、ガクリと体勢を崩した。

意識が足元に向いた、その瞬間だ。

「よし! 動きが鈍くなったぞ! 喰らえ! 『激辛特盛デスビーム・ショット』!!」

太郎は、わさび・辛子・タバスコを混合した特製ペーストを塗った矢を、三連射した。

狙うは、ベヒーモスの敏感な粘膜――「右目」だ。

ヒュンヒュンヒュン!

ザシュッ!!

「ブモッ!? ……ブギョオオオオオオオオッ!!?」

矢が眼球に突き刺さり、そこからカプサイシンとアリルイソチオシアネートの地獄の刺激成分が染み渡る。

ベヒーモスは右目を押さえ、あまりの激痛と異物感にのたうち回った。

「今だ! ピカリ!」

『おまけだよー!』

ピカリが高速でベヒーモスの顔面に接近した。

苦悶する怪物の目の前で、全力の光をチャージする。

『ピカリ・フラーッシュ!!』

カッッ!!!

至近距離での強烈なストロボ発光。

激辛成分で涙が止まらない目に、追い打ちの閃光が突き刺さる。

視界と嗅覚を完全に破壊され、ベヒーモスは棒立ちになった。

「ライザ! 離れて!!」

太郎が叫ぶ。

ライザは瞬時に状況を理解した。

彼女はベヒーモスの腹を蹴り、バックステップで大きく距離を取る。

「任せましたよ! あなた!」

射線が通った。

味方は退避した。

必殺の時が来た。

太郎は背中の矢筒から、最後の一本となる漆黒の矢を引き抜いた。

弓を引き絞る。腕の痛みなど忘れた。

「行くぞ……!!」

狙いは大きく開いた口腔内。

もう咆哮で弾き飛ばさせるわけにはいかない。

シュッ!!

放たれた死の矢は、苦痛に叫ぶベヒーモスの口の中へと吸い込まれた。

「終わりだァァァッ!!」

ドゴォォォォォォォォォォォォォォン!!

ダンジョンそのものが崩壊するかのような衝撃。

ベヒーモスの体内中心部で爆発が起き、その巨体が内側から膨れ上がり――弾け飛んだ。

紅蓮の爆炎がボス部屋を焼き尽くす。

しばらくして、爆風が収まると、そこには巨大なクレーターと、ドロップアイテムと思われる巨大な角だけが残っていた。

「…………」

静寂。

そして。

「やった……」

「やったあああ!!」

サリーが太郎に飛びつく。

ライザも駆け寄り、太郎を強く抱きしめた。

「ご無事ですか! 太郎さん!」

「うん、なんとかね……。二人とも、ありがとう」

『勝ったー! 辛いのすごーい!』

S級モンスター、ベヒーモス討伐。

それは、彼らが真のトップ冒険者として認められる偉業だった。

傷だらけの三人と一匹は、互いの無事を確かめ合い、勝利の喜びを分かち合った。

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