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スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


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EP 30

英雄の凱旋、そしてA級への特進

ルルカ村での激闘を終え、太郎たちがアルクスの冒険者ギルドへ戻ったのは深夜近くだった。

しかし、ギルドの灯りは消えていなかった。

先行して戻った冒険者たちから既に情報は伝わっており、ギルド内は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。

執務室に通された三人を、ヴォルフが椅子を蹴り飛ばす勢いで出迎えた。

「何だと!? グリフィンを倒しただと!?」

ヴォルフの隻眼が限界まで見開かれている。

グリフィンは、騎士団が小隊を組んで挑むようなSランク級の魔獣だ。それを、たった三人のパーティーが、しかも村の防衛戦のついでに討ち取ったなど、常識では考えられない。

「えぇ、まぁ……。なんとかなりました」

太郎は頬をかきながら答えた。

激戦の疲労で泥だらけだったが、その瞳には自信が宿っていた。

「……全く。なんて輩だ」

ヴォルフは呆れたように天井を仰ぎ、次の瞬間、机をバンッ! と叩いて立ち上がった。

「よおし! ギルドマスターとして宣言する! 今日から貴様らは『A級冒険者』だ! 手続きや規定のランクアップ試験は全て免除する!」

「ええっ!?」

「そして今回の緊急依頼の達成報酬、およびグリフィン討伐の報奨金……合わせて金貨100枚だ! 持っていけ!」

ドサッ!!

重厚な革袋が机の上に置かれた。

金貨100枚。日本円にしておよそ100万円。

庶民なら数年は遊んで暮らせる大金だ。

「え、A級冒険者!? しかも金貨100枚!?」

「う、嘘でしょ……? 夢じゃないわよね?」

サリーが震える手で頬をつねる。

Fランクから一気にA級への5階級特進。前代未聞の昇格人事だ。

「やったわね、サリー、太郎さん。これでもう、初心者扱いされることはありませんわ」

ライザが誇らしげに微笑む。彼女にとっても、自分の護衛対象がこれほどの成果を挙げたことは鼻が高い。

「僕たちが、A級冒険者……」

太郎は呆然と呟いた。

数週間前まで、コンビニで廃棄弁当の処理をしていた自分が、異世界でトップクラスの冒険者になったのだ。

リュックの中の100円グッズと、仲間との絆が、ここまで連れてきてくれた。

「流石、ワシが見込んだ男だわい! ガハハハ!」

ヴォルフが豪快に笑い、太郎の背中をバシバシと叩いた。そして、小声で耳打ちする。

「(あの矢を使ったな? まぁ、グリフィン相手じゃ仕方あるまい。よく村を守ってくれた。礼を言うぞ)」

「(……はい。ありがとうございます)」

二人が視線を交わし、頷き合う。

ヴォルフは執務室の扉を開け放ち、階下のホールに向かって叫んだ。

「野郎共! 聞けぇ! ここにいる『チーム・タロウ』が、ルルカ村を救い、グリフィンの首を取った英雄たちだ!!」

うぉぉぉぉぉぉぉ!!

ギルド中が揺れるような歓声が上がった。

冒険者たちがジョッキを掲げ、口笛を吹く。

「すげぇぞ! 新人!」

「いや、A級の兄ちゃん!」

「俺たちの命の恩人だ! 乾杯!!」

もはや誰も、太郎の珍妙な服装を笑う者はいなかった。

そこにあるのは、強者への純粋な敬意と称賛のみ。

「ありがとうございます!」

太郎は照れくさそうに、しかし堂々と手を振って応えた。

佐藤太郎の異世界での名は、この夜、アルクスの街に深く刻まれたのだった。

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