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スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


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EP 13

英雄の帰還、ただいまの温もり

【太郎国・城壁前戦場】

蒼き月光の粒子が空に溶け、魔王グレンデルの巨体が完全に消滅した、その直後だった。

「キ、キシャァァァ……ッ!?」

「ア、アァ……オレタチ……逃ゲロ……ッ!」

これまで死をも恐れぬ特攻を繰り返していた再生魔獣たちが、糸の切れた人形のように崩れ落ち、あるいは正気を取り戻してパニックに陥った。

統率者を失った彼らは、もはや軍隊ではない。ただの烏合の衆だ。

「魔王が……消えたぞ!!」

「敵の再生が止まった! 逃げ惑っているぞ!」

騎士団長が剣を突き上げ、叫んだ。

「総員、追撃せよ!! 太郎様が勝ったのだ!!」

「ウオオオオオオオオオッ!!!」

地響きのような歓声が上がった。

魔獣たちは蜘蛛の子を散らすように、森へ、荒野へと逃げ去っていく。

圧倒的な絶望からの逆転勝利。

「勝ったんだ! 俺たちの国が勝ったんだ!」

「太郎様万歳! 太郎国万歳!!」

兵士たちは兜を投げ捨て、互いに抱き合い、涙を流して王の名を連呼した。

そんな歓喜の渦中、空から一筋の黄金の光が降りてきた。

ヴァルキュリアだ。彼女は戦場の喧騒を避けるように、城壁の上の広場へと静かに着地した。

その腕の中には、役目を終えた太郎が抱えられている。

「ふぅ……。着いた」

太郎はヴァルキュリアに降ろしてもらうと、少し照れくさそうに乱れた髪を直した。

神殺しの弓『真・雷霆』はすでに光を失い、いつもの古びた弓に戻っている。

目の前には、心配そうに空を見上げていた仲間たちの姿があった。

「ただいま」

太郎は、散歩から帰ってきたかのように、短く言った。

その一言が、何よりの無事の証だった。

「太郎様あああぁぁぁッ!!♡」

ドスッ!!

杖を放り投げたサリーが、弾丸のような勢いで太郎の胸に飛び込んだ。

「うわっ!?」

「心配しました! 心配しましたわ! あんな無茶をして……もし貴方にもしもの事があったらと……ううっ!」

サリーは太郎の服を涙で濡らしながら、強く抱きしめた。

「よくぞ……よくぞご無事で!」

ライザが歩み寄り、安堵のあまり膝から崩れ落ちそうになるのを堪えた。

「王が単身敵陣へ突っ込むなど、二度と許しませんわよ。……ですが、見事でした。私の誇りです」

彼女の手は震えており、それがどれほどの緊張を強いられていたかを物語っていた。

「お疲れ様でした、太郎様」

サクヤが静かに近づき、温かいお絞りを差し出した。

「冷めぬうちに、お茶とお食事の用意をしておきました。……まずは、その煤けたお顔をお拭きになってください」

その表情はいつも通り穏やかだが、瞳の端には光るものがあった。

そして、ヒブネがゆっくりと進み出た。

彼女は槍を地面に置き、その場に跪いた。

「太郎様……」

エルフである彼女は、魔力の流れに敏感だ。

先ほどの『蒼き月光の一矢』が、どれほど神聖で、どれほど強大な慈悲に満ちた一撃だったか、誰よりも理解していた。

「貴方は勇者、英雄、伝説……如何なる言葉で表しても、表現出来ませんわ。力でねじ伏せるのではなく、魔王の心さえ救済してしまわれるなんて……」

ヒブネは震える声で告げた。

「貴方にお仕えできたこと、エルフ族の誇りです」

「いやいや、頭を上げてよヒブネ」

太郎は困ったように頬をかいた。

「オーバーだなぁ。僕はただ、みんなと一緒にご飯を食べたかっただけだよ。道具扱いなんて、寂しいからさ」

太郎は、泣きじゃくるサリーの頭を撫で、ライザの肩を抱き、サクヤとヒブネに微笑みかけた。

「でも、皆無事で良かった。……本当に、良かった」

王としての顔から、いつもの優しげな青年の顔に戻った太郎。

城壁の上には、心地よい風が吹いていた。

魔王グレンデル討伐完了。

しかし、まだ海の向こうには、竜王デュークたちが向かったもう一つの戦場がある。

太郎たちの戦いは、もう少しだけ続くのだった。

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