表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

174/203

EP 2

海を越えた戦慄 ~グランディス王国の悪夢~

【ルナアシア大陸・グランディス王国 王宮】

重厚な石造りの「謁見の間」は、葬式のような静寂と、冷や汗の匂いに満ちていた。

玉座に座る国王アルフレッドは、震える手でこめかみを揉みながら、目の前に跪く大臣を見下ろした。

「……もう一度、報告を聞こうか。大臣よ」

アルフレッドの声は掠れていた。

信じたくない。いや、信じられるはずがない。そんなデタラメな国が存在するなど。

「ハッ! ご報告致します……」

大臣もまた、顔面蒼白で羊皮紙を持つ手を震わせていた。

「マンルシア大陸に突如として現れた新興国家『太郎国』についてですが……調査団からの最終報告書になります」

大臣はゴクリと唾を飲み込み、その悪夢のようなスペックを読み上げ始めた。

「まず、基礎となる軍事力ですが……極めて練度が高い騎士団、魔法兵団、僧侶兵団を有しており、兵士一人一人が、我が国で言う『A級冒険者』以上の実力を持っているとの事です」

「そ、そんなにか……」

アルフレッドが絶句する。

A級冒険者といえば、一騎当千の英雄クラスだ。それが「一般兵」として配備されている? どこの神話の軍隊だ。

「更に特筆すべきは、同国が独自開発した**『必殺の矢』**なる兵器です。これは、一般の弓兵に配備されているものですが、着弾と同時に岩石を粉砕し、数十メートルの爆炎を巻き起こす威力があります」

「な、何だと……? 弓兵の一斉射撃が、広域魔法並みの破壊力を持つと言うのか?」

「そ、そればかりか……」

大臣は声を震わせた。

「その『必殺の矢』の大型化にも成功した模様で、城壁すら一撃で粉砕する『バリスタ』や『大砲』として実戦配備されているとの情報も……」

「そ、そんな馬鹿な事が有るか!? それでは戦争にならんぞ!」

アルフレッドが玉座の肘掛けを叩く。防衛など不可能だ。

「しかし、真の脅威は兵器ではありません」

大臣はページをめくった。そこに書かれた内容は、もはや狂気の沙汰だった。

「国王である『太郎王』。彼は、先の戦いで魔王ヴァルスをも単独で葬った神造兵器『雷霆らいてい』を所有。さらに、特殊なスキルにより、食料、資材、建築材などを『ほぼ無限』とも言える規模で補給可能との事です」

「あ、悪夢を見ているようだ……」

アルフレッドは頭を抱えた。

戦争の要は兵站ロジスティクスだ。補給が無限? つまり、永久に戦い続けられる不死身の軍隊ではないか。

「そ、それと同盟関係も盤石です。陸には魔法に長けたエルフ族。そして海には……」

「まさか」

「はい。海中軍事国家シーランと同盟を結んでおります。いざとなれば、海龍リヴァイアサン級の戦力で、大陸間の海路を完全に封鎖可能です」

「そ、そんな……。それでは我が国は、手も足も出ずに干上がってしまう……」

経済封鎖、海上封鎖、そして陸からの圧倒的侵攻。

詰んでいる。どうシミュレーションしても勝てるビジョンが見えない。

だが、大臣の報告はこれで終わりではなかった。

彼は最後に、震える声で最も信じがたい事実を口にした。

「極めつけは……同国の城に常駐している『客将』達です」

大臣は震える指で、報告書の末尾を指した。

「破壊の化身『竜王デューク』。

絶対零度の王『狼王フェンリル』。

再生と炎の象徴『不死鳥フレア』。

……これら三柱の最強種を飼い慣らし、あまつさえ天界の守護者である『天使族・神兵騎士団長』さえも手中に納め、下女ウェイトレスとして使役しているとか……」

シーン……。

謁見の間に、絶望的な沈黙が落ちた。

「…………」

「…………」

それは、国ではない。

地上に顕現した「世界の終わり」そのものだ。

「き、極めて異常事態だ……ッ!!」

アルフレッドが悲鳴のように叫んだ。

「いつそのデタラメな戦力が、我が国に牙を向くか分からん! いや、向かれた瞬間、我々は地図から消滅する!」

「国王陛下! 如何致しましょう!?」

「ルナアシア大陸の諸国に緊急伝令を出せ! グランディス、ミルト、バルド……全ての王を招集しろ!」

アルフレッドは立ち上がり、血走った目で叫んだ。

「『対・太郎国連合』を結成し、早急に対応策を協議せねばならん! 人類存亡の危機だぞ!!」

「ハハッー!! 直ちに!!」

大臣が転がるように部屋を出て行く。

アルフレッドは玉座に崩れ落ち、ガタガタと震えた。

(太郎王……一体どれほど残忍で、冷酷無比な支配者なのだ……!)

一方その頃。

恐れられている当の本人は、

「あ、サクヤ。今日の夕飯、オムライス大盛りでいい?」

「はい、太郎様♡」

と、のんきにケチャップでハートを描いてもらっている最中であった。

世界を巻き込む、壮大な「勘違い戦争」の足音が近づいていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ