表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

170/186

EP 50

深海の絶望、そして最凶の救援者たち

【海底国家シーラン国・最終防衛ライン】

ズガァァァァァァァン!!

海中とは思えない轟音が響き渡る。

蒼き海竜リヴァイアサンと化したリリアーナと、太古の魔獣アノマノカリウスの巨体が激突した衝撃波が、周囲の海水を沸騰させた。

『ハァッ……ハァッ……!』

リリアーナの息が上がる。

彼女の「ハイドロ・ブレス」は強力だが、アノマノカリウスの甲殻は硬く、再生能力も異常だ。

一方、敵の触手による攻撃は、リリアーナの鱗を削り、体力を確実に奪っていく。

「ははは! 見ろ! 女王が押されているぞ!」

後方で指揮を執るタコ型の魔族幹部、オクトパス将軍が高らかに笑った。

「我等の勝利だ! 魚人共を一匹残らず血祭りにあげろ! その血肉を魔王ヴァルス様の復活への糧とするのだ!」

「オオオオオッ!!」

勢いづく魔族軍。魚人兵たちの槍が折られ、防衛結界にヒビが入る。

誰もが終わりを覚悟した。

そう、「彼ら」が来るまでは。

ドゴォォォォォォォォォォォォォォン!!!!

突如、天井から巨大な質量が降ってきたような、凄まじい衝撃が走った。

海流が乱れ、魔族たちが木の葉のように吹き飛ばされる。

「な!? 何だ!?」

砂煙が晴れた先。

アノマノカリウスの巨大な頭部が、海底の岩盤にめり込んでいた。

その脳天には、黄金のオーラを纏った**「拳」**が突き刺さっている。

「ぬん。……硬いな。甲殻類か」

悠然と立っていたのは、人の姿に戻った竜王デュークだった。

水の抵抗など存在しないかのような一撃。

「な!? 何!? 貴様は……!?」

魔族幹部が目を剥く。

デュークは幹部を無視し、傷ついたリリアーナへと視線を向けた。

「下がっていろ、リリアーナよ。此奴は我が遊んでやる」

『デ、デューク様!? 何故ここに!?』

リリアーナが驚愕する中、もう一つの影がスッと前に出た。

「はぁ? 何を言ってんの? デューク」

狼王フェリルだ。彼は水の中でも普段と変わらず、退屈そうに耳を掻いた。

「こんな噛み応えありそうなデカイ奴は、僕の獲物だよ。あんたは後ろで見てなよ」

「……何を言っている? フェリルよ」

デュークがこめかみに青筋を浮かべる。

「ここまで貴様らを運んでやったのは誰だ? 背に乗せて飛んだのは我だぞ?」

「むっ……それはそうだけど」

「当然、労力に見合う対価が必要だ。よって、我がこの『美味しい獲物ボス』と遊ぶ。貴様らはそこの雑魚と遊んでおれ」

あまりにも理不尽なジャイアニズム。

しかし、ここまで運んでもらった負い目があるフェリルは、唇を尖らせて引き下がった。

「はぁ……。仕方ないな。タクシー代ってことか」

フェリルはくるりと踵を返し、数千匹はいるであろう魔族の大軍を見渡した。

「じゃあ、憂さ晴らしに付き合ってもらおうか」

フェリルの周囲の海水が、一瞬にして凍結した。

パキパキパキパキ……!

無数の氷塊が生まれ、それらは狼の形へと変貌していく。

「行け。奴等を食い散らかせ! 『氷狼牙フェンリル・ファング』!!」

ガウッ! ガルルルッ!!

数百体の氷の狼が、魚雷のような速度で射出された。

「ひっ!? なんだこれは!?」

「ギャァァァァァ!!」

氷狼たちは魔族に食らいつくと、その傷口から相手を凍らせていく。

一瞬にして戦況がひっくり返った。

「そ、そんな……馬鹿な……!?」

オクトパス将軍が震え上がる。

その目の前に、ゆらりと赤いドレスの影が降り立った。

深海だというのに、彼女の周囲だけ海水が温かい。

「貴方が指揮官?」

不死鳥フレアが、扇子で口元を隠して微笑んだ。

「ふ、不死鳥……フレア……だと!?」

「えぇ。単刀直入に言いますわ」

フレアは優雅に髪を払った。

「私、無駄な事したく無いのよねぇ。ドレスが汚れるし。だから、今から兵達と尻尾巻いて逃げ出すなら、命までは取らないであげますわ。……どうする?」

慈悲ではない。圧倒的な強者の余裕。

それがオクトパス将軍のプライドを逆撫でした。

「ふ、ふざけるなあああ!? 我を愚弄するか!!」

将軍は八本の腕を突き出し、全魔力を込めた漆黒のエネルギー波を至近距離で放った。

「死ねぇぇぇ!!」

ドォォォン!!

直撃。黒い闇がフレアを飲み込んだ……かに見えた。

ポコポコポコ……

「あら、綺麗な泡」

闇のエネルギー波は、フレアの指先に触れた瞬間、無害なピンク色の「泡」へと変換されていた。

「な……!?」

「私の愛の力の前では、貴方の憎悪などシャボン玉のようなものですわ」

フレアの瞳から、笑みが消えた。

残ったのは、冷徹な処刑人の眼差し。

「交渉決裂ね♡」

フレアが人差し指を将軍の眉間に向けた。

ズンッ!!

指先から放たれたのは、髪の毛ほどの細さの、しかし太陽の中心核に匹敵する超高熱の熱線。

水の壁を貫通し、将軍の頭部を一瞬で蒸発させた。

「あ……」

オクトパス将軍の体は、自分が死んだことすら理解できずに、ゆっくりと海底へ沈んでいった。

「全く……。旦那様がいないと張り合いがありませんわ。面倒臭いわぁ」

フレアはつまらなそうに溜息をついた。

その背後では、デュークに殴り殺されかけてるアノマノカリウスが沈み、フェリルの氷狼に殲滅された魔族軍が氷像となって漂っていた。

こうして、シーラン国の危機は、最強種たちの「暇つぶし」によって、わずか数分で解決したのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ