表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/187

EP 17

銀貨5枚の重みと、ささやかな祝勝会

夕暮れ時、太郎たちは冒険者ギルドへと戻ってきた。

朝の重い足取りとは打って変わり、その表情には達成感が満ちていた。

「お疲れ様です。ゴブリン討伐の報告ですね」

受付カウンターで、太郎は証明部位であるゴブリンの耳が入った袋を提出した。

受付嬢は慣れた手つきで中身を確認し、依頼書に完了のスタンプを押す。

「はい、確かに3体分の討伐を確認しました。こちらが報酬になります」

チャリン、と革のトレイに置かれたのは、鈍く光る銀貨が5枚。

「ありがとうございます!」

太郎はその銀貨を震える手で受け取った。

日本円にして約5000円。

コンビニバイトの日当にも満たない金額かもしれないが、これは太郎が異世界で、自分の力と仲間の協力で稼いだ最初のお金だ。

「やった……報酬だ……!」

太郎は銀貨の冷たい感触と重みを噛み締めた。

「おめでとうございます、リーダー」

ライザが横から声をかける。しかし、その視線は現実的だった。

「ただ、収支としてはトントンといったところですね。私たちが泊まっている『銀の月亭』の宿泊費が、三人部屋で一泊・銀貨2枚。食事代や装備のメンテナンス費を考えると、ゴブリン退治だけではギリギリの生活です」

「うっ……そ、そうだね」

太郎は現実に引き戻された。

命がけで戦って、報酬は宿代と飯代で消える。冒険者稼業の世知辛さを痛感する。

「もう! ライザったら、すぐに計算ばっかり!」

サリーが頬を膨らませて割って入った。

「金額なんてどうでもいいの! 大事なのは、私たちが無傷で勝って、こうして帰ってこれたこと! パーティー初勝利よ!」

「ふふ、そうね。サリーの言う通りだわ。ごめんなさい、水を差すようなことを言って」

ライザも表情を緩め、太郎に向き直った。

「リーダー、初勝利を祝いましょう」

「そうだね。今日はパーッと……と言いたいところだけど、予算の範囲内でレストランで祝おう!」

「賛成ー!」

三人は再び、昼間訪れた『大樹の梢亭』へと向かった。

夜の店内は、仕事終わりの商人や冒険者たちでさらに賑わっていた。

「かんぱーい!」

木製のジョッキをぶつけ合う。

太郎とサリーは果実水、ライザはエール(麦酒)だ。

テーブルには、温かいシチューと、焼きたてのパン、そしてローストチキンが並んでいる。

銀貨5枚の報酬は今夜の支払いでほとんど消えてしまうだろうが、今の太郎たちには、この温かい食事と笑顔の方が価値があった。

「ん~っ! 生きて帰ってきて食べるご飯は最高ね!」

サリーがパンをシチューに浸して頬張る。

「ええ。それに、今日の勝利は太郎さんの作戦勝ちです。あの画鋲の罠……単純ですが、理にかなった素晴らしい戦術でした」

ライザがエールの泡を拭いながら称賛する。

「いやぁ、二人がいてくれたからだよ。僕一人じゃ、罠にかける前にやられてた」

太郎は照れくさそうに頭をかいた。

「でも、次はもっとうまくやれる気がする。素材も手に入ったし、100円ショップのアイテムでもっと色々なことができるはずだ」

「楽しみにしてますよ、ドラえ……じゃなくて、太郎さん!」

「サリー、その名前は違う世界の猫型ロボットだから」

「ふふっ」

三人の笑い声が、賑やかな酒場に溶けていく。

微々たる報酬と、大きな達成感。

佐藤太郎の異世界での冒険は、まだ始まったばかりだが、その前途は(少なくとも食生活においては)明るい予感に満ちていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ