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スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


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EP 39

神兵騎士団長、初めての不採用通知おいのり

【大衆レストラン『猫の尻尾亭』・バックヤード】

ガチャリ、ガチャリ……。

油の染み付いた床を、聖なるミスリル銀のグリーブ(足甲)が踏みしめる。

「失礼致します! 面接に参りました、ヴァルキュリアであります!」

狭い従業員室に、神兵騎士団長の凛とした声が響き渡った。

彼女の手には、羊皮紙に達筆な文字で書かれた『履歴書』が握られている。

机の向こうで、店長(中年男性、少しハゲ気味)は引きつった笑みを浮かべていた。

目の前にいるのは、黄金の鎧に身を包んだ、絶世の美女。

どう見てもウェイトレスの面接に来る格好ではない。コスプレにしては質感が本物すぎる。

「あ、あー……。店長です。この度はホールスタッフ急募のご応募、ありがとうございます……」

「よろしくお願い致します! 私の全てをこの店に捧げる所存です!」

ヴァルキュリアが直立不動で敬礼する。

その気迫に、店長は少しのけぞった。

「そ、そうですか。では履歴書を……」

店長は恐る恐る羊皮紙を受け取り、目を通した。

【氏名】 ヴァルキュリア

【年齢】 永遠の17歳(実年齢:数千歳)

【住所】 神界セレスティア・第1宮殿騎士団寮

【職歴】 神兵騎士団長(現職)

【資格】 神聖魔法1級、対邪神戦闘免許皆伝

店長の手が震え始めた。

「えっと……名前はヴァルキュリアさん……。住所は『神界セレスティア』って……何ですか? これは。新しい劇団の設定か何かで?」

「いいえ! 実在する場所です!」

ヴァルキュリアは目を輝かせて説明を始めた。

「神界セレスティアは、遥か天空の彼方にある聖域! 我ら神兵騎士達が住まい、偉大なる女神ルチアナ様の元に集う、光溢れる場所になります!」

「は、はぁ……。か、神? 神兵? 女神? ……(ヤバイ人が来たな)」

店長は冷や汗を拭った。

この国、最近変なのが多いとは聞いていたが、まさか自分の店に来るとは。

「えぇっと……ヴァルキュリアさん。一旦設定は置いておいて……貴方の特技とか、この仕事に活かせる得意な事は何ですか?」

店長は助け舟を出した。

「力仕事が得意」とか「笑顔に自信がある」とか、そういう答えを期待して。

しかし、ヴァルキュリアは真剣な眼差しで、腰の神槍(今は魔力で縮小して携帯中)を撫でた。

「はい! 特技でありますね!」

彼女は自信満々に答えた。

「背中の光翼を展開して空を飛び! 神槍グラニに最大出力の神気を注ぎ込み! 敵陣中央目掛けて音速で突進し! 脳天から串刺しにする必殺技『ホーリー・ランス』が得意であります!」

「…………」

店長はペンを落とした。

脳裏に、自分の店が音速の突撃で瓦礫の山になる映像が浮かんだ。

「えぇっと……あのですね、うちはレストランでして。接客業なんですけど……」

「承知しております!」

「串刺しにする機会は、ちょっと無いというか……」

「ご安心ください!」

ヴァルキュリアはドンと胸を叩いた。

「私の武力があれば! 食い逃げ犯や泥酔した悪漢、クレーマーなどが来ても、バッタバッタと薙ぎ払い、塵一つ残さず消滅させることができます!」

「いやいやいや! 事件になっちゃうから! 消滅させちゃダメだから!」

店長の胃がキリキリと痛み出した。

この人は悪気がない。本気で「接客=敵の排除」だと思っている。

採用したら、初日で店が物理的に潰れる。

店長は深いため息をつき、履歴書をそっと返した。

「……ヴァルキュリアさん」

「はい! いつから働けばよろしいでしょうか!?」

「今回は……ご縁が無かったと言う事で」

「え?」

ヴァルキュリアの動きが止まった。

「え、縁が……無い? それはつまり……?」

「不採用です。お引き取りください」

「な、何故ですか!? 私の戦力が不足していると!? でしたら『神盾シュテル』も併用して……!」

「戦力過剰なんです! お願いですから帰ってください!」

【城下町・路上】

カツーン、カツーン……。

店を出たヴァルキュリアの足取りは、鉛のように重かった。

鎧の輝きさえも、心なしか曇って見える。

「な、何故……」

彼女は空を見上げた。

「私は神界最強の騎士……。数多の魔物を屠り、幾多の戦場を駆け抜けてきた……。なのに、たかだか人間の飯屋の採用試験一つ突破できないと言うの……?」

彼女の手には、突き返された履歴書が握りしめられている。

『不採用』。

その三文字は、邪神の一撃よりも重く、ヴァルキュリアのプライドを粉砕した。

「リリーナちゃん……ごめんなさい……。私には、ハンバーガー代を稼ぐ力すらない無能な騎士です……」

ヴァルキュリアはとぼとぼと歩き出した。

その背中は小さく丸まり、すれ違う子供に「あ、コスプレのお姉ちゃんが泣いてるー」と指差される始末だった。

しかし、彼女はまだ知らない。

この後、別の場所で「その過剰な破壊力」を求めている職場(土木工事現場や冒険者ギルドの荒事)があることを。

戦乙女の「お仕事探し」の旅は、まだ始まったばかりである。

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