表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

152/217

EP 32

天界からの使者と、行列のできるハンバーガー屋

【神界 セレスティア・宮殿】

白亜の柱が立ち並び、神聖な光に包まれた天界の宮殿。

その回廊を、カツカツと苛立ちの足音を響かせて歩く一人の女性がいた。

神兵騎士団を束ねる族長、戦乙女ヴァルキュリアである。

黄金の鎧に身を包み、冷徹なまでの美貌を持つ彼女は、眉間に深い皺を刻んでいた。

「由々しき事態だ……。世界の調停者たる竜王、狼王、不死鳥の三柱が、あろうことか人間の小国『太郎国』に定住し、職務を放棄しているとは」

彼女は窓から下界を見下ろした。

世界の均衡バランスが崩れかけている。本来なら、神が直接介入すべき案件だ。

「一度、接触せざるを得まい。その『太郎』という人間の王に。三柱をたぶらかす邪悪な男に違いない……」

決意を固めたヴァルキュリアは、主神である女神の執務室へと向かった。

許可を得るため、重厚な扉を開ける。

「ルチアナ様! ご報告が……」

「あ、お疲れ~」

そこには、神々しさの欠片もない光景があった。

女神ルチアナは、神衣を脱ぎ捨て、ジャージ姿にサンダル履きという、休日の干物女のような格好で伸びをしていた。

「な……?」

「いや~、今日の定時(仕事)終わったからさ。これからラスティア(魔王)と女子会の約束あるんだよね~。駅前の居酒屋『天岩戸』で飲み放題プラン予約してるし」

ルチアナは面倒くさそうに鞄(とコンビニ袋)を手に取った。

「ルチアナ様! 貴女は何を言ってますの!? 地上が危機的状況にある今、魔王と飲み会などと……!」

「え~? だって残業したくないし。働き方改革だし。あとはヴァルに任せるわ。じゃあね~」

女神はひらひらと手を振り、転移魔法でさっさと消えてしまった。

「くっ……! この駄目女神がぁぁぁ!!」

広い執務室に、ヴァルキュリアの絶叫が虚しく響いた。

彼女はギリリと歯を噛み締め、一人で地上へ降りることを決意した。

「私が……私が正さねば! この狂った世界を!」

【地上・太郎国 城下町】

ヴァルキュリアは、人間の姿に変装し(といっても目立つ美貌だが)、太郎国の城下町に降り立った。

彼女は驚愕した。

「な、なんだこの街は……?」

魔王や邪神の巣窟かと思いきや、そこは活気に溢れ、清潔で、そして何より――。

『いらっしゃいませー! スマイル0円です!』

『新発売! テリヤキバーガーセット、ポテト増量中!』

「……妙な匂いがする。油と肉と、香辛料の匂い……」

あちこちに立ち並ぶ「ハンバーガーショップ」。

先日の「ハンバーガー解禁」以来、太郎国では爆発的なバーガーブームが巻き起こっていたのだ。

ヴァルキュリアは、一際長い行列ができている店に目を留めた。

その列の中に、見覚えのある(というより魔力を感じる)男がいた。

「うぅ……並んでしまう……。悲しいなぁ、王様なのに……」

太郎である。

彼は一般市民に混じり、完全にお忍び(バレているが)で列に並んでいた。

「でも、あの悪魔的な美味しさだもんな……。今日はダブルチーズバーガーにするか、それともフィッシュにするか……」

ヴァルキュリアは物陰から目を細めた。

(あれが、三柱を惑わす太郎王!? 邪悪なオーラは見えないが……いや、あの脂ぎった食べ物に魅入られている。やはり危険だ)

その時である。

太郎の背後から、派手なドレスの女性が抱きついた。

「旦那様ぁ♡ もうすぐ順番ですわね♡」

「うわっ、フレア!? 並んでる時はくっつかないでってば!」

さらに左右から二人の女性が割り込む。

「旦那様! 離れなさいフレア! 公衆の面前ですわよ!」

「シッシッ!! 太郎様の背中は私の指定席です!」

サリーとライザがフレアを引き剥がそうとし、フレアが抵抗する。

もみくちゃにされる太郎。

「旦那様ぁ~! 小娘達が虐めるのぉ♡ 慰めてぇ♡」

「もぉぉぉ! ハンバーガーが食べられないだろぉ!?」

その光景を見て、ヴァルキュリアは戦慄した。

(な、何と言うことか……。あれが、あの高潔なる不死鳥フェニックスだと……!?)

かつて神話の時代、神々しく空を舞い、邪神を封印した伝説の聖獣。

それが今、人間の男にへばりつき、安っぽい恋愛劇(修羅場)を演じている。

威厳の欠片もない。

(許せん……! 聖なる獣をここまで堕落させるとは!)

ヴァルキュリアの怒りが頂点に達した。

彼女は隠れるのをやめ、カツカツと音を立てて太郎たちの前に歩み出た。

「そこまでだ!」

その凛とした声に、騒いでいた三人がピタリと止まる。

「あら? あの神々しい魔力……」

フレアが顔を上げ、ヴァルキュリアを見た。

「何故こんな所に、天界の『掃除屋』、天使族が居るのかしら?」

フレアは悪びれる様子もなく、首を傾げた。

「フレア様! 貴女、私の顔を忘れたとは言わせませんよ!」

ヴァルキュリアはビシッと指を突きつけた。

「調停者ともあろうお方が、何故人間の国に!? しかも、そのようなふしだらな姿で! 貴方は一体何をしているのですか!?」

周囲の客がざわつく中、騎士団長の怒号が響く。

しかし、問いかけられた太郎は、ポカンとしていた。

「えっと……どちら様?」

その間の抜けた一言が、ヴァルキュリアの神経をさらに逆撫でする。

「私は神兵騎士団長ヴァルキュリア! 貴様、太郎と言ったな! 世界の守護者たちを堕落させ、ハンバーガーなる脂っこい餌で飼い慣らすとは、何たる邪悪な洗脳か!」

「えぇ……洗脳っていうか、みんな勝手に食べてるだけなんだけど……」

太郎が困惑していると、店員の声が響いた。

『次のお客様~!』

「あ、僕です! ダブルチーズバーガーセット一つ! コーラで!」

「貴様ァ! 私の話を聞けェェッ!」

ハンバーガーへの執着が勝る太郎と、真面目すぎて話が通じないヴァルキュリア。

そして、「あら、ヴァルキュリアも食べたいの?」と勘違いするフレア。

神と人、そしてハンバーガーを巡る新たな騒動の幕開けであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ