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スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


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EP 7

プリン・アラモード戦争と、儚き線香花火

とある穏やかな昼下がり。

城の中庭で、サクヤ主催のティータイムが開かれていた。

テーブルの中央には、サクヤが腕によりをかけて作った、色とりどりのフルーツと生クリーム、そして黄金色に輝くプリンが乗った『特製プリン・アラモード』が、最後の一つだけ残されていた。

その皿を挟んで、二つの巨星が火花を散らしていた。

「……フェリルよ。年長者を敬うという言葉を知らんのか? このプリンは、どう見ても我のものだろう」

「関係ないね! 早い者勝ちだよ! さっきのサクヤのケーキはデュークが食べたじゃないか! これは僕のだよ!」

竜王デュークと、狼王フェリル。

最強の居候たちは、最後の一皿を巡って睨み合っていた。

「退かぬか、駄犬」

「退かないね、トカゲ」

バチバチバチ……!!

二人の間に見えない火花が散り、周囲の空間が歪み始める。

ただの喧嘩ではない。魔力が膨れ上がり、空が割れ、地面が揺れ始めた。

段々と本気の喧嘩になるデューク達。

「行くぞ!! 『アルティメット・バースト(竜王の咆哮)』!!」

デュークが上空へ飛び上がり、口に全エネルギーを収束させる。その輝きは太陽すら霞むほど。

「そんなの! 『アブソリュート・ゼロ(絶対零度ブレス)』!!」

フェリルも負けじと、全てを凍てつかせる極低温の吹雪を口に集約する。

「消し飛べェェェ!!」

「凍りつけェェェ!!」

ズゴォォォォォォン!!!

互いの必殺技が、あろうことか太郎城の真上で激突した。

灼熱の赤と、氷結の青。相反するエネルギーがぶつかり合い、衝撃波が城を襲う。

「こ、この世の終わりだー!!」

宰相マルスが頭を抱えて悲鳴を上げる。窓ガラスが割れ、植木鉢が吹き飛ぶ。

「太郎様! 何とかして下さい! 城が消し飛びますわ!」

「貴方が飼い主でしょ!? ちゃんと躾けなさいよ!!」

サリーとライザが、衝撃に耐えながら太郎に詰め寄る。

このままではプリンどころか、国ごと地図から消滅してしまう。

「ハイハイ……」

太郎はため息をつくと、ウィンドウを開いてある物を取り出した。

そして、恐るべきエネルギーの渦中へ、スタスタと歩いていった。

「ぬ? 主よ! 邪魔するな!」

「そうだよ! これから良い感じになるのに!」

二人が叫ぶが、太郎は平然と二人の間に割って入った。

「まぁまぁ。喧嘩する前に、これでも見て落ち着きなよ」

太郎が差し出したのは、細長い紙縒こよりのようなもの。

『線香花火』だった。

「なんだそれは……武器か?」

「匂いがする……?」

二人が動きを止めた隙に、太郎は先端に火を点けた。

チリチリチリ……。

小さな火種が生まれ、やがてパチパチと繊細な火花を散らし始めた。

松葉のように広がる、儚くも美しいオレンジ色の光。

轟音と爆発の余韻が残る戦場に、静寂が訪れた。

「…………」

デュークとフェリルは、その小さな光の舞に目を奪われた。

「パチパチ……」

「……綺麗」

フェリルがポツリと呟く。

破壊的な魔法の光とは違う、温かみのある、どこか切ない輝き。

「うむ……。悪くない……」

デュークも、荒ぶっていた闘気を収めた。

火花が散るたびに、二人の殺気も溶けていくようだった。

やがて、先端の火玉がポトリと落ちて、ふっと消えた。

「どうだ? 落ち着いたか?」

太郎が尋ねると、二人は顔を見合わせた。

「……あれ? 僕達、何で喧嘩をしてたんだっけ?」

フェリルが首を傾げる。

「さぁな。……何か、どうでも良くなったわ」

デュークも肩をすくめた。

線香花火の余韻(賢者タイム)によって、プリンへの執着など霧散してしまったようだ。

「よし! ならば気を取り直して、今日は花火大会だ!」

太郎はニカッと笑い、スキルから『ファミリー花火セット・徳用』を取り出した。

「おぉ! さっきの綺麗なやつ、もっとあるのか!」

「我にも寄越せ!」

日が暮れた中庭。

喧嘩の殺伐とした空気は消え去り、楽しい笑い声が響いていた。

「うわぁ~! 綺麗~!」

「パパ、みて! 手持ち花火!」

月丸と陽奈が、キラキラ光る花火を持ってはしゃいでいる。

「ほら、これは『ねずみ花火』だぞ。地面をクルクル回るんだ」

シュルルルルルッ!!

太郎が火を点けた鼠花火が、不規則な動きで地面を駆け回る。

「うわっ!? こっちに来るな!」

「ひぃぃぃ!」

逃げ惑うマルスを追いかけ回す火花に、皆がドッと笑った。

「ふふっ、たまにはこういうのも良いですわね」

「えぇ。あの二人が大人しく遊んでいるのが信じられませんけど」

サリーとライザも、線香花火を眺めながら穏やかな表情を浮かべている。

最強種たちの喧嘩は、100円ショップの小さな花火によって、夏の夜の思い出へと変わったのだった。

なお、問題のプリン・アラモードは、騒動のどさくさに紛れてサクヤが美味しくいただいていたことは、誰も知らない。

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