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スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


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EP 32

激戦区への挑戦状! 爆誕、ドラゴン火炎担々麺

「我々の舌だけでは決着がつかん。ならば……」

太郎は二人に提案した。

「城下町でラーメン屋台を出して、民達に意見を聞こうでは無いか! 一番売れた味が正義だ!」

「分かりました。民の舌は正直ですからね」

「良かろう。我のラーメンが世界一であることを証明してやる」

サクヤとデュークも不敵に笑う。

こうして、国王、王宮料理長、竜王という、世界で最も豪華な店員たちによる屋台引きが始まった。

ガラガラガラ……。

リヤカーを引いて城門をくぐり、城下町へと降り立った三人。しかし、そこで彼らを待ち受けていたのは、驚愕の光景だった。

「いらっしゃい! 『元祖・太郎系ラーメン』だよ!」

「こっちは『濃厚背脂・家系』だ! 行列必至だぞ!」

「『あっさり魚介』なら当店へ!」

通りという通りに、ラーメン屋の暖簾がひしめき合っている。

かつて太郎が何気なく広めたラーメンのレシピは、国民たちの手によって独自の進化を遂げ、城下町は「大陸一のラーメン激戦区」と化していたのだ。

「な、何だと!?」

太郎は顎が外れそうになった。

「これは……想定外ですわ」

「ぬぅ、人間どもの適応力、侮れん」

三人は急遽、リヤカーを裏路地に隠し、変装サングラスとマスクをして市場調査(偵察)を開始した。

「ズズッ……。ふむ、悪くない」

「麺のコシもスープの乳化具合も……一定のレベルには達していますね」

数軒を食べ歩いた結果、判明した事実。

それは、どこの店もレベルが高く、既に「醤油」「塩」「豚骨」といった王道ジャンルは、人気店によってシェアが固められているということだった。

「美味しい……。悔しい、これでは我々のラーメンも埋もれてしまうぞ」

デュークが腕を組み、唸る。

後発組が普通のラーメンを出しても、既存のファン層を崩すのは至難の業だ。

太郎は必死に考えた。現代日本の知識を総動員し、この異世界でまだ未開拓のジャンルを探す。

魚介? つけ麺? いや、もっとインパクトのある……。

「……そうだ」

太郎の眼鏡がキラリと光った。

「この世界では、まだ**『辛味からみ』**に疎い……。香辛料はあっても、料理の主役にする文化はない。そこを攻めてみれば、勝ち筋が見えるかも!」

「辛味……ですか?」

「刺激で客を呼ぶと? 面白い」

「よし、一時休戦だ! 三人の技術を結集して、誰も食べたことのない『究極の辛旨ラーメン』を作るぞ!」

「行きましょう、太郎様!」

「手を取り合って、究極の一杯を作ろうではないか!」

かつてのライバルは、今や最強の同志となった。

三人は屋台を引き返し、城の「ラーメン研究室(厨房)」へと駆け込んだ。

それから一週間。

厨房からは、目や喉を刺激するスパイシーな香りと、三人の怒号にも似た熱い議論が響き続けた。

「太郎様! 100円ショップの『豆板醤トウバンジャン』と『甜麺醤テンメンジャン』の配合比率は!?」

「1対1だ! そこに『花椒ホアジャオ』をたっぷり入れて痺れを出す!」

「デューク! 胡麻の焙煎はどうだ!?」

「任せろ! 我のブレスで、一瞬にして香り高く焼き上げてやる! 『プチ・フレイム』!」

試行錯誤と試食(による胃痛)の末、ついにその時は来た。

「……ついに出来た!」

太郎が震える手でドンブリを掲げた。

真っ赤に燃えるようなスープ。香ばしい胡麻の香り。そして、食欲をそそる肉味噌の山。

「名付けて……『ドラゴン火炎担々タンタンメン』だ!」

「おぉ! これが我らの答え!」

「素晴らしい……。見ただけで唾液が溢れてきます」

「これなら城下町でも売れる! いや、革命が起きるぞ!」

三人は確信した。これは、勝てる。

決戦の日の昼下がり。

城下町の中央広場に、一台の屋台が現れた。

看板には『王立・激辛屋台 ドラゴン』の文字。

「へぇ、新しい店か?」

「うわっ、なんだこのスープの色! 毒か!?」

最初は遠巻きに見ていた国民たちだったが、漂ってくる強烈に香ばしい匂いに釣られ、一人の勇気ある青年が席に座った。

「へ、一杯くれ」

「あいよ!」

出された真っ赤なラーメン。青年はおっかなびっくりスープを飲んだ。

「!! ……ぐわっ! 辛っ!? ……でも……」

青年は汗を吹き出しながら、レンゲを止められなくなった。

「旨い! なんだこれ! 辛いのに箸が止まらねぇ! 胡麻が濃厚で、山椒がビリビリして……最高だァァッ!」

「なに!? そんなに旨いのか!?」

「俺にもくれ!」

そのリアクションが呼び水となり、客が殺到した。

刺激に飢えていた太郎国の国民たちに、「激辛」という新たな扉が開かれた瞬間だった。

「並んで並んで! 最後尾はあっちだ!」

「スープが無くなりそうだ! デューク、追加の焙煎を!」

「サクヤ、麺上げ急げ!」

屋台の前には、王都の端まで続くほどの大行列が発生した。

皆、汗だくになり、ヒーヒー言いながらも、笑顔で赤いスープを飲み干していく。

醤油でも塩でも豚骨でもない。

三人が力を合わせた「第四の味」が、激戦区・太郎国城下町を制圧したのだった。

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