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スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


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EP 10

高宮建設、開業!

「かんぱーい!!」

完成したばかりの『高宮邸兼事務所』のリビングに、楽しげな声が響き渡った。

ボルゲ子爵との「防衛戦」から数日後。

優也は、お世話になった(そしてこれからお世話になる)関係者たちを招き、落成記念パーティーを開いていた。

広々としたリビングダイニングは、20畳以上の吹き抜け空間。

床には無垢材のフローリングが敷かれ、足元からは床暖房の優しい温もりが伝わってくる。

照明は魔石を加工したダウンライトで、落ち着いた雰囲気を演出していた。

「いやー、すげぇな優也くん! マジで日本だよここ!」

一番はしゃいでいるのは、タロウ国王だ。

彼は靴下を脱ぎ捨て、素足で床暖房の感触を堪能しながら、とろけそうな顔をしている。

「この床の温かさ……城の冷たい石床とは大違いだ。もう城に帰りたくない」

「ダメですよタロウ王。公務に戻ってください」

「うるせぇレオ! お前だってさっきから風呂場に引き篭もってたじゃねぇか!」

獣王レオは、タオルを首にかけ、湯上がりのホカホカ顔でビール(ユアのお取り寄せ)を煽っていた。

「ああ、最高だったぜ……! 『追い焚き機能』って魔法か? あれは文明の極みだな。ガルーダの森にも早く作ってくれ」

「見積書、後でお渡ししますね」

優也は苦笑しながら、キッチンで料理を仕上げていた。

今日のメニューは、異世界の食材を使った和食風創作料理だ。

ロックバイソンの肉じゃが、トライバードの唐揚げ、そしてピラーズの塩焼き。

「あら、優也様。このキッチン、使い勝手が良さそうですわね」

リベラが興味深そうにシステムキッチン(オーダーメイド)を撫でている。

彼女の隣では、ニャングルが必死に料理を口に詰め込んでいた。

「んぐ、んぐ……! 慰謝料で巻き上げられた分、食って取り返したるでぇ!」

「卑しいですわよ、ニャングル」

リビングのソファでは、キャルルとルナ、そして妖精キュルリンが女子会を開いている。

「ねぇねぇキュルリン! このソファ、ふかふかでしょ!」

「むー! 悔しいけど完璧ね! ボクのダンジョンの休憩所にも導入したいわ!」

「あ、それなら私が世界樹の綿を詰め込みますよっ!」

「ルナ、それはやめておけ。爆発する」

優也が釘を刺すと、全員がドッと笑った。

平和だ。

数日前まで、魔物に囲まれたり、借金に追われたりしていたのが嘘のようだ。

優也はグラスを片手に、窓の外を見た。

整備されたアスファルト道路。整えられた庭。そして、自分の技術で建てた城。

(……悪くないな)

元の世界に戻る方法はまだ分からない。

けれど、ここには自分の技術を必要としてくれる人たちがいる。

「優也くん、ちょっといいかな?」

タロウが真面目な顔で近づいてきた。

その手には、一枚の羊皮紙が握られている。

「実はさ、正式な辞令を持ってきたんだ」

「辞令?」

「ああ。我がタロウ国に新設する『国土交通省』。……そこの大臣になってほしい」

「だ、大臣!?」

優也は素っ頓狂な声を上げた。一介の建築士がいきなり大臣。出世にも程がある。

「城のリフォームだけじゃ足りないんだ。道路、上下水道、都市計画……君の知識で、国ごと作り変えてほしい。もちろん、報酬は弾むし、高宮建設との兼業もOKだ」

「……」

「俺からも頼む」

レオが割り込んできた。

「獣人国もだ。森の環境を壊さずに、住環境を良くしたい。君の『設計』が必要なんだ」

さらに、キュルリンが飛びついてくる。

「ボクも! 『天魔窟』の第100層、リニューアル工事の設計図、まだ書いてもらってないよ!」

「リベラからも、ゴルド商会の新社屋コンペのお誘いがありますわよ?」

次々と舞い込む超大型案件。

普通ならプレッシャーで押し潰されるところだろう。

だが、優也の胸に湧き上がったのは、不安ではなく――職人としての強烈な「武者震い」だった。

「……分かりました」

優也はニヤリと笑い、グラスを掲げた。

「全部、引き受けましょう。ただし!」

優也は全員を見渡し、高らかに宣言した。

「俺は冒険者じゃない。あくまで『建築士』として仕事をさせてもらいます。工期厳守、安全第一。……そして」

優也はスマホを取り出し、電卓アプリを起動した。

「請求書は、きっちり一円単位まで計算させてもらいますからね!」

「「「望むところだ!!」」」

歓声と共に、再び乾杯の声が上がる。

こうして、異世界に新たな伝説が生まれた。

剣も魔法も使わない。

あるのは「国家資格」と「スマホ」、そして確かな「技術」だけ。

彼の名は、高宮優也。

後に『建築王』と呼ばれ、世界中の王族や魔王たちが「我が国にも家を建ててくれ!」と行列を作ることになる男。

そして――。

「あ、そうだ優也くん。次の仕事なんだけどさ」

宴もたけなわの頃、タロウが思い出したように言った。

「『竜人の里』から、リフォームの相談が来てるんだよ。なんか、族長が胃に穴が空きそうで困ってるらしくて」

「竜人の里?」

「うん。でもあそこ、雲の上にあって普通の人間は行けないんだよねぇ」

「……は?」

雲の上。

建築士にとって、最も過酷な現場環境だ。

優也の顔が引きつる。

「ま、優也くんならなんとかなるでしょ! ガイマックスいるし!」

「……出張費、倍額頂きますよ」

優也は溜め息をつきつつも、新しい図面用の紙を広げた。

高宮建設の明日は、どっちだ。

とりあえず、次は空の上のリフォーム現場が待っているようだ。

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