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スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


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EP 25

竜王、クレープを食し、サウナで整う

翌日。

妻たちが「対竜王用決戦兵器」の開発に勤しんでいるとは露知らず、太郎は城下町の視察――という名の散歩に出かけていた。

その隣には、漆黒の礼服を着た初老の紳士、デューク(竜王)の姿があった。

「ほう、ここが人間の街か。中々どうして、活気があるではないか」

デュークは偉そうに腕を組みながら、キョロキョロと辺りを見回している。

「でしょ? 最近は物流も良くなって、店も増えたんだ」

太郎は案内役として、並んで歩く。

すると、甘く香ばしい匂いが漂ってきた。

屋台のクレープ屋だ。鉄板で生地を焼く音と、クリームの甘い香りがデュークの鼻を刺激した。

あるじよ。……あれはなんだ?」

デュークが指差す。

「あれはクレープだよ。薄い生地に果物やクリームを巻いたお菓子さ」

「……菓子か。食ったことはないが、我の胃袋が『食せ』と告げている」

デュークは太郎を見た。完全に「買ってくれ」という目だ。

「はいはい」

太郎は小銭を出し、一番人気の**『チョコバナナ生クリーム・アーモンドトッピング』**を二つ購入した。

「ほら、デューク」

「うむ。頂こう」

デュークはクレープを受け取ると、大きな口でガブリと齧り付いた。

「んんっ!!」

モチモチの生地、冷たい生クリーム、甘いバナナ、そしてパリパリのチョコ。

複雑な食感と甘味のハーモニーが、竜王の味覚中枢を直撃した。

「う、旨いでは無いか……! この白いふわふわ(生クリーム)は雲か!? 雲を食べているのか!?」

「ただのクリームだよ」

デュークは鼻の頭にクリームを付けながら、夢中で頬張っている。

その姿を見て、太郎は心の中で呟いた。

(……ただの食いしん坊だな)

国を滅ぼす竜王と聞いて身構えていたが、こうして見ると、甘いものが好きな普通のおじさんにしか見えない。

太郎の中に、デュークへの奇妙な親近感が湧いてきた。

「デューク。食べ終わったら、こっちに来いよ。もっと良い所に連れて行ってやる」

「む? クレープより良い所か? 何処に行くのだ?」

「男のパラダイスさ」

太郎が連れてきたのは、城下町の一角に建設した**『王立公衆浴場・極楽湯』**だった。

太郎の現代知識と、ドワーフの建築技術、そしてサリーの水魔法システムを融合させたスーパー銭湯である。

「な、なんだコレは。湯気が出ているが……釜茹での刑場か?」

「違うよ。お風呂だよ、お風呂。まぁ、入ろうぜ」

二人は脱衣所で服を脱ぎ(デュークは脱ぎ方が分からず、太郎が手伝った)、浴室へと入った。

「まずは体を洗って……よし、サウナだ」

太郎はデュークをサウナ室へと誘った。

薄暗い室内は、焼け石に水をかけた蒸気で満たされている。

「ほう、熱気浴か。我ら竜族は火山の火口で寝ることもある。この程度の熱さ……」

デュークは余裕の表情でベンチに座った。

しかし、数分後。

「ぬ、ぬぅ……。熱いというより、汗が止まらん……。心臓が早鐘を打つ……」

「無理しちゃダメだよ。もう出よう」

限界まで蒸された二人は、サウナ室を出た。

そして、太郎は目の前の水風呂を指差した。

「次はこれだ」

「なっ、冷水ではないか! 熱した体を冷やすなど、正気か!?」

「いいから、騙されたと思って入ってみて」

「えぇい、ままよ!」

デュークは意を決して、冷水に飛び込んだ。

「ひャあああああ!!」

情けない悲鳴が響き渡る。

竜王の威厳は完全に崩壊した。

「つ、冷たい! 我の鱗が引き締まるゥゥゥ!」

「10秒数えて! じっとしてると気持ちよくなってくるから!」

「い、いち、にぃ……じゅう!!」

デュークが水風呂から飛び出す。

太郎は彼を露天スペースの『ととのい椅子』へと誘導した。

「ここで座って、空を見るんだ……」

「はぁ、はぁ……死ぬかと思ったぞ……ん?」

椅子に深く腰掛けた瞬間。

デュークの脳内を、強烈な浮遊感が襲った。

血管が拡張し、血液が全身を駆け巡る。手足がジンジンと痺れ、意識がクリアになっていく。

「こ、これは……」

空の青さが、いつもより鮮明に見える。

風の音が、心地よい音楽のように聞こえる。

「気持ちいい……」

「だろ? これが『整う』ってやつさ」

「トトノウ……。あぁ、我は今、空と一体化している……」

最強の竜王、サウナにて完全に攻略完了。

風呂上がり。

脱衣所のベンチで、火照った体を冷ましている二人の前に、太郎がウィンドウからある物を取り出した。

「ほら、腰に手を当てて飲むんだ」

渡されたのは、キンキンに冷えた**『瓶入りフルーツ牛乳』**だ。

「……頂こう」

デュークは言われた通り腰に手を当て、瓶を煽った。

ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……プハァッ!

「旨いな!!」

サウナで乾いた体に、甘いフルーツ牛乳が染み渡る。

「風呂上がりの牛乳は格別だろう?」

「うむ! 極上の馳走だ! 主よ、人間界にはこのような快楽があったのか!」

デュークは空になった瓶を見つめ、満足げに笑った。

「気に入った。この『サウナ』と『ギュウニュウ』、城にも作るべきだ」

「あはは、マルスにお願いしてみようか」

裸の付き合いを通して、二人の間には確かな友情(?)が芽生えていた。

最強の竜王は、すっかり太郎国の「お風呂会員」となり、この国の平和(と食文化)を守る最強の番犬ならぬ番竜となるのであった。

一方その頃、城ではサリーとライザが完成した「対竜兵器」を構えて帰りを待っていたのだが……それはまた別の話である。


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