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スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


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EP 23

天空の竜王と、背脂チャッチャ系豚骨ラーメン

太郎国に、建国以来最大の危機が訪れた。

突如として空が暗雲に覆われ、雷鳴と共に雲が割れる。

そこから姿を現したのは、先日のアースドラゴンとは比較にならない、山脈すらも覆い隠すほどの超巨大な『竜王』だった。

「グオオオオオオオオ!!」

その咆哮だけで城の窓ガラスがビリビリと震える。

まさに世界の終わり、審判の時が来たかのような絶望感。

太郎たちは中庭で身構えた。

「で、デカい……! あれが竜の頂点、竜王か!」

太郎が冷や汗を流す横で、料理人のサクヤが目を細めて鑑定した。

「……鱗の色艶が悪いですわね。それに筋肉も痩せている。あの竜は老け過ぎてて、肉が硬くて不味そうです。出汁を取るにも臭みが出そうですね」

「なんだ……」

サクヤの辛辣なグルメ評価を聞いて、太郎から急速に戦意(食欲)が失われた。

「不味いなら倒す意味がないなぁ」と弓を下ろしかける。

「よくも我が竜族アースドラゴンを亡き者にしてくれたな!? どうしてくれよう!?」

竜王が上空からドスの効いた声で威圧する。

最後の戦いが始まるのか――誰もがそう思った、その時だった。

フワァ〜……。

中庭の片隅に設置された寸胴鍋から、白濁したスープの濃厚で芳醇な香りが立ち上った。

太郎たちが、戦いの前の腹ごしらえとして作っていた『特製・濃厚豚骨ラーメン』の香りだ。

「む!?」

竜王の巨大な鼻孔がピクピクと動いた。

「な、なんだ……この、獣臭いようでいて、しかし食欲を猛烈にそそる、暴力的な香りは……」

数千年生きてきた竜王ですら嗅いだことのない、魔性の香り(豚骨臭)。

竜王の視線が、太郎たちではなく、寸胴鍋に釘付けになった。

「あー……」

太郎は気まずそうに、完成したばかりのラーメン鉢(全部のせ)を持ち上げた。

「た、食べてみますか? ちょうど麺が茹で上がったところなんですけど」

「……何? 我に毒見をさせる気か?」

竜王は警戒したが、胃袋からの命令には逆らえなかった。

「……まぁ良かろう。貴様らの最後の情けだ。味見位はしてやろう」

竜王の体が光に包まれ、収縮していく。

光が晴れると、そこには漆黒のローブを纏った、厳格そうな初老の紳士が立っていた。

人型になった竜王だ。

彼はズカズカと歩み寄ると、太郎からラーメンを受け取った。

「なんだこの白濁したスープは。……ぬっ!?」

一口スープを啜った瞬間、竜王の目が見開かれた。

ガツンとくる豚骨の旨味。それをまろやかに包む背脂の甘み。そして鼻に抜けるニンニクの香り。

「う、美味い……!!」

竜王は箸(使い方は見様見真似)で麺を持ち上げ、啜った。

「ズズッ! ズズズッ!!」

硬めに茹でられた細麺が、濃厚なスープを絡め取って口の中で踊る。

トロトロに煮込まれたチャーシューは噛む必要すらなく解け、味玉の黄身が舌の上で弾ける。

「な、なんだ!? この旨さは!? 竜生の記憶にないぞ!?」

「替玉もありますよ」

「貰おう!!」

竜王は威厳も忘れ、貪るように豚骨ラーメンを食べ続けた。

スープの一滴まで飲み干した時、彼は満足げなため息をついて、その場に崩れ落ちた(放心状態)。

「……中々やるでは無いか、人間よ。剣でも魔法でもなく、この一杯で我を打ちのめすとは……」

竜王は口元の脂を拭い、太郎を見た。そこには敵意ではなく、敬意があった。

「我々、竜族は勝てし者には敬意を払うものだ。此度の非礼は、この『トンコツ・ラーメン』とやらに免じて許してやろう」

「え、いいんですか?(アースドラゴン食べちゃったけど)」

「その代わり、スープのレシピを後でよこせ。……さらばだ」

竜王は再び巨大な竜の姿に戻ると、満足げに空の彼方へと去っていった。

「助かった……のか?」

「ラーメンの勝利ですね」

太郎たちは胸を撫で下ろした。

その日の晩。

太郎たちが城の食堂で夕食(ラーメンの残り)を食べていると、窓がコンコンと叩かれた。

「誰だ?」

太郎が窓を開けると、そこにはまた人型になった竜王が立っていた。

「いや〜、さっき食べた豚骨ラーメンが忘れられなくてな……」

竜王は恥ずかしそうに頬を掻いた。

「口の中に残る旨味が、我を呼ぶのだ。……あぁ、我の事はデュークとでも呼ぶが良い」

「デュークさん……」

最強の竜王が、完全にラーメン中毒になっていた。

デュークは太郎に近づき、ニヤリと笑った。

「そうだな……。タダ飯と言うのも、流石の我も気が引ける。貴様と契約してやろう」

「えぇ!?」

太郎が驚愕する。

竜王との契約。それは英雄譚の中でも最高クラスの偉業だ。

「我の背に乗せてやっても良いし、ブレスで敵を焼いても良い。その代わり……」

デュークは太郎の肩をガシッと掴んだ。

「さて、契約したぞ、人間よ……。さぁ、我の前に旨い物を差し出せ!! ラーメンだ! 今度は味噌味も食わせろ!!」

ただの『飯の催促』だった。

「ええええええ!?」

太郎、サリー、ライザ、ヒブネ、サクヤ、そしてマルスの絶叫が城に響き渡る。

こうして、太郎国に「最強の食客(大食い)」が加わった。

太郎の100円グッズ代(食費)が、国家予算を圧迫し始めるのは、ここから先の話である。

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