彼女
中学一年生の終わりの頃、オレに初カノができた。
彼女は、同じクラスの結衣菜さんだ。
結衣菜さんは、いつもニコニコしていて優しく運動も得意だ。
そんな結衣菜さんと隣の席になり、あっという間に距離が縮まり、オレから告白した。
初めて一緒に帰ったときは、めっちゃ緊張した。
何話そうとか、沈黙になったらどうしようとか、もうさ…帰るのがこれほど緊張することは、人生初だった。
でも、結衣菜さんと一緒に帰ったら、意外にも結衣菜さんが話を繋いでくれて、途切れるどころか、楽しかった。
なので、もっと結衣菜さんを知りたいし、話したいってことで、帰り道よく二人で公園に寄り道して、話し込んだものだ。
なんなら、電話もしょっちゅうした。
休みの日には、ついに初デートにまで成功‼︎
初めての私服デートは、やっぱり緊張したけど、でもやっぱりすぐに打ち解けて…その帰り道、オレは念願の初めてのキスをした。
めっちゃ緊張した。
そして意外なことが判明した。
キスって、戦いだと。
だってさ、鼻息スースーしてたらイヤじゃん⁉︎
なので、息止め限界であんまり長くキスが出来なかった。
だからオレは、一度呼吸を整えてもう一度くちびるを重ねにいったのは、いうまでもない。
せっかくキスができるチャンスを、逃すようなおバカさんではない‼︎
なんなら、キスまでできたらハグもセットプランに含まれる。
というわけで、キスとハグのセットでオレはどんどん、結衣菜さんにハマるのでありました。
幸せです。
かわいい彼女とキスとハグコースは。
脳内からすべて溶け出てしまう。
そんな勢いだ。
そんな結衣菜さんとは可能なら、こうやってずっと一緒に過ごしたい。
しかしオレも結衣菜さんも部活がある。
そもそもオレはバスケ部のキャプテンだし、結衣菜さんもバレー部の副キャプテンなので、なかなか時間合わせが難しい。
だからこそ、この貴重なイチャイチャタイムを存分に楽しみたいのだ。
デート帰りに、イチャイチャタイムを思い出し、なんとも心がホワホワだ。
脳内も、ホワホワしている。
美味しいものを食べたり、マッサージを施術されたんかってくらいの極上の癒しだ。
ホワホワなオレは、道端で幼馴染に遭遇した。
春紀乃 桜子。
みんなからは、ルキノと呼ばれている。
オレと同級生だ。
ルキノは、オレを見つけるなり
「なんか…どうした?」
と、オレを気持ち悪そうにジロジロみてきた。
「…なっ、どうもねぇよ!」
「ふぅーん」
と、なんだか言いたげなルキノだったが、それじゃあね、とあっさり家に帰っていった。
感じ悪いやつめ。
それより〜、結衣菜さんに無事着いたか確認の連絡連絡〜っと。
あ〜、楽しい。
もうさ、結衣菜さんのこと考えるだけで幸せだ。
付き合って数ヶ月後
学校に行くのが、こんなに楽しいなんて知りませんでしたよ。
「なにニヤニヤしてんのさ?」
オレがウハウハと、結衣菜さんのことを考えていたら、それを一撃でつぶしてくる隣の席の幼馴染ルキノ。
二年生のクラス替えで結衣菜さんと離れ、ルキノと同じクラスになった。
なんなら席も隣だ。
「う、うるせーなぁ。なんでもないし」
「ふーん、キモっ」
…朝からウハウハ気分が台無しだぜ。
でもぉ〜、オレには結衣菜さんがいるから全然問題ない。
今日は、お互い部活が休みなのでオレは結衣菜さんと帰る約束をしてございます♡
はぁ〜♡早く来い来い下校時間〜
掃除の時間すら、もうさ楽しいわぁ♡
るんるんでお掃除も完了〜
そしてついに下校〜
さあさあ、早く結衣菜さんの教室へ向かいましょうねぇってウキウキしていたら、オレの教室の前で結衣菜さんが待っていてくれてるー‼︎
「あ、わざわざ迎え来てくれたの?」
「うん、早くホームルーム終わったから」
「マジかぁ。ありがと〜」
オレが感動していると、ルキノが
「そこ、じゃまだよー。通るよー、じゃあね〜、結衣菜ムッツリに気をつけてねん」
と、余計な一言を発して通り過ぎた。
…ムッツリとは、なんだよ‼︎
まぁ、間違いじゃないけどね。
ルキノのやつめ。
部活中とかも、結衣菜さんに余計なこと言ってないだろうな…⁉︎
結衣菜さんとルキノは、同じバレー部なので顔見知りだ。
まったくルキノめ。
でも、いつまでもそんなこと言っていられない。
だって目の前には、かわいい彼女がいるんだからさぁ♡
ついつい顔がにやけてしまう。
「じゃ、帰ろっか♡」
「うん♡」
オレたちは、仲良く帰ったのであります♡
続く。