虫網みでしばき倒しますけどなにか?触るなというのに触ろうとする方が悪いんで〜目にスプレーをかけると効果的だよ〜
気付いたら転生していた。
生まれたのは虫の擬人化のようなこちらが引くほどかっこいい人達ばかりがいる世界。
ここで逆ハーレムなどと喜んではいけない。
平凡な家に生まれたのに、蜜という体質に生まれたことにより、奇しくも魅了魔法のような効果を発しているらしい。
老若男女、誰もが恍惚とした顔をして寄ってくる様はまさに、蜜に群がるカブトムシ。
鬱陶しい上に、普通に女児に対してやってはいけない顔や距離感なので引っ叩いた。
「げふ!」
虫の擬人化したやつらは丈夫なので普通は平気なのだが、どうやら蜜体質は虫族に対してかなり有効らしい。
特攻体質……まるでカードゲームのよう。
というわけで齢三歳くらいから思いっきり引っ叩くことにした。
もみじなお手手が赤くなるので、特注の網棒を模したものを片手に、スプレーも用意し、赤くならないように準備した。
男には網、女にはスプレー。
女でしつこかったら網だ。
「くんくん!いいにおいー」
といって、フラフラ寄ってくる女の弁慶の泣きどころを蹴った。
「いだぁ!はっ、わ、私はなにを」
いたいけな幼女にふらふら近づいてきて、匂いをかいでいたよと教えてあげる。
「ひー、はずかしーっ」
そうだよ、はずかしいことだよ。
自衛しないと、抱きしめられて匂いを嗅がれたり、味見とばかりに舐められたりするから、本気で撃退するのだ。
「でもぉ、いいにおい」
と、またフラフラきたのでスプレーを顔に噴射。
「ぎゃあああ」
目が、目がと某映画みたいな言葉を発しているので著作権に触れようとした罰として、網ですくって池に落とした。
池と言ってもかかと以下の浅さだ。
落とした後はアフターフォローで溺れないように見ているから事件など起きない。
「ぶ、ぶぶ。ぷはぁ!いいにおいに釣られてとんでもないことをするところだった」
女の人はよろりよろりと帰っていく。
彼女が帰っても第二、第三の誘引されている人達がやってくるので網を手に引っ叩く作業を繰り返す。
そのうち、やっていく中で理不尽なことをやらされていると感じるのでお金を取ることにした。
その間もずっと網を手にぶん回す。
やがて、大きくなって学校に通わなくてはいけなくなったが体質的に無理なので、入ることはやめている。
理事長と名乗る人が入学してほしいというが、同じように誘引されていたので五発網でぶん殴って正気に戻らせれば、無理なことを理解してくれたようでパンパンに腫れた顔をそのままに帰っていく。
子供だろうと躊躇せずに、網やスプレーを手に防御する。
十歳になりギルドに出入りする。
テンプレは起こらず、誘引された人達を残らずボコボコにしたら、ラスボスのようにやってきたギルドマスターも、とろんとした顔で近寄る。
「寄るな」
バキッ
「ごっはぁ!」
脳天に棒を当て、脳震盪を起こす。
脳しんとうを起こした男は倒れ伏すと、ギルドで立っているものはいなくなった。
「またつまらぬものを殴ってしまった」
名セリフを言いながら人の隙間を縫う。
受付嬢も伏しているので、代わりに自分で受注する。
ハンコを押してクエストへ行く。
薬草取りという基本の中の基本。
せっせと積んでいると、背後に気配を感じて振り向き様にフルスイング。
「ぼごぉ!」
一撃で気絶した男を叩き起こす。
目がぱんぱんに腫れていたが気にしない。
「なんで襲ったの。うそいったら追加で八発追加ね」
目の前で虫網を振り回す。
男は震えて、自分は他の奴らと山賊のようなことをして暮らしているというではないか。
アジトに案内させて、そこを見ると泣き喚く大人がいた。
「びえーん!もういやぁ!」
周りを男にも女にも囲まれていてくんくんと嗅がれ、まさに己のようにされていた。
ぴんときたので、早速全員眠らせておく。
白目をむいて倒れる最後の一人。
「おねえさん。転生者っしょ」
「え?あ、う、うん。なんか死んでからあった人に愛される体質にならないかって言われて」
「私も同じ詐欺に、引っ掛かっちゃったくちなんだよね」
そう、この蜜体質はその黒幕のせい。
「大丈夫、どつき回せばみんな大人しくなるよ」
年々、強力になっている虫除けスプレー。
いずれかは、鼻水や涙が止まらないようなものを作りたいものだ。
手を差し出して立ち上がらせる。
虫族達をロープでふんじばると引きずられる呻き声を気にせず、えっちらおっちらと街のギルドへ連行。
現行犯逮捕なり。
助けた人にも、恍惚したやつらが押し寄せるが、全員しなる虫網で成敗。
その間、助けられた人は幼女に対してヒーロー現るという恩人の目で見つめていた。
「ほら、これで殴るの。じゃあ、はい。殴って」
「えっ」
と、無理やり握らせて某ゾンビのように寄ってくる人達へ振り下ろすように指導する。
やむなく、その練習は何度もさせた。
けれど、言っても聞かないのならば物理で殴るしか止められないんだと説明する。
気絶するように一撃でやれと指導する。
その間にも二人は囲まれる。
「ひぃ!囲まれたー!」
その声に大丈夫だと新武器である殺虫スプレーを流布する。
「ぎゃあああ」
「泡吹いてるよ!?」
「鼻水でるくらいにしておいたんだけど、濃度を間違えてたわ……てへ」
てへは棒読みだったので、間違えたのではなく、この子は故意にその濃度を噴射したのだとうっすら察した。
「情けは無用!はぁあああ」
と、あちこちに噴射する子供。
自分が子供よりも先に棒で虫族を気絶させねばと危機感を持った転生者は、ぐんぐん技術を向上。
今の今まで、虫族に監禁されてベタベタ触られていたというのに、お人よしな自分が嫌になったものの。
のちに網捌きが凄すぎて幼女に「優しいねえ」と褒められたが、褒められている気になれない複雑な顔をした大人がいた。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
ポチッと⭐︎の評価をしていただければ幸いです。