名前を教えて!!
私は、鈴木沙奈、17歳。
ある日目覚めたら、天蓋付きの大きなベッドに寝てた。布団2枚分はある!フカフカ!
まあ、布団は良いんだけど、そしたら、
「姫さま、おはようございます。今日も良いお目覚めですね。」
って、ベッドの脇にメイドが立ってた。
あれよ、給食当番みたいな、白いヒラヒラした帽子被ってて、紺のワンピースに白いヒラヒラエプロン着けてて。馬鹿な私でも、一目でメイドって分かるやつ。
で、私はちょっとフリーズしちゃったんだけど、そんなのおかまいなしで、あっという間にドレスに着替えさせられて。
白い丸襟の付いた、腰からフンワリ!足見えません!っていう、いかにも〜ってやつよ。
鏡の前に立ったら、金髪に青い目になっちゃってんの。肌が白くてツヤツヤ!別人じゃん!
なにこれ、異世界転生ってやつ?教室の角で本ばっか読んでるミヤタが、そーゆーの流行ってるって言ってた気がする。
まあいいや。で、そのメイドが、
「姫さま、朝食の支度が整っておりますよ。」
って、食事する部屋まで連れてってくれて。
そしたら、白ひげに金ピカの王冠つけた、いかにも〜って王様が、いかにも〜っていう長ーいテーブルの端に座ってるの。マジウケる。
「姫、おはよう。」
って言うから
「王様、おはようございます。」
って言ってみたら、笑って頷いてくれたから、OKだったみたい。
*****
転生しましたーって言ったほうがいいのかなと思ったりしたけど、そういうの良くわかんないし、なんとなく、そのままでいたら、あっという間に1ヶ月経っちゃった。
誰も、私が沙奈だって、気が付かない。お姫様になっちゃったから、貴族のタシナミとか、ナイフの使い方とか、色々難しいこと言われるのかなーって思ったんだけど、なんかそういうのは無いらしくて。
王様がいて、王様のお城が小さな山の上に建ってて、ふもと村があるみたいな感じ。昔話に出てくるようなやつね。のんびりしたとこだよ。
『姫さま、言葉が少し乱暴になりましたね。』
とは言われたな。
まー、しょうがないよね。元々ギャルなんだからさ。あー、ミニスカしばらく履いてないな〜。
メアリーがね、あ、私の世話してくれてるメイドの名前なんだけど、、ほんといい奴!いつもニコニコしてて、あれこれ優しく教えてくれて。
王様も、いつも笑って頷いてくれたりして、気のいいおっさん。
結構、ここの暮らし気に入ってる。スマホないけど。スカート長くてダサいけど。
あと、今度、隣の国の王子様と結婚することになったんだ。王子だよ、ホンモノのお·う·じ。
3日前に会ったんだけど、
『名前なんて言うの?』
って聞いたら、
『王子ですよ。』
ってキラキラした顔で言ってた。ウケる。
でも、王子もいい奴だったから、結婚してみても良いかなー。元の鈴木沙奈には戻れそうにないし。
て感じで、ここで生きていく覚悟は出来たんだけど、まだ分からないことがある。
新しい私、つまり姫の名前はなんなんだ?変だと思われるかなーとは思いつつ、メアリーに聞いたことがある。
『名前、、ですか?姫さまですよ。』
とキョトン顔。
そういや、王様の名前も知らない。
*****
姫さまになって、一年が過ぎた。ついに、王子様との結婚式。
実はまだ、姫の名前が分からない。誰も呼ばないし、どこにもそれらしきものが書かれてない。
メイドやコックや、がちょう番の女の子は名前があった。名前あるはずだよねえ?
結婚したら、分かるかも!?と期待してる。
「えー、汝はこの者を一生愛すると、、」
汝かよ!!
この者かよ!!
名前はわからないけど、式はつつがなく終わった。
「姫さま、おめでとうございます!!」
「王子さま、おめでとうございます!!」
式後のパレードも、つつがなく終わった。
残る可能性は、ダンナになった王子さまからの愛の囁き!!
夜、ようやく二人きりになった王子さまと私。ベッドに並んで腰掛け、王子さまが優しく私の肩を抱く。
「ようやく、二人きりになれたね。姫よ、、いや、、」
キタ—!!
「妃よ」
そっちかーい!!
王子さまは、私に優しくキスをした。
(おわり)
読んでいただきありがとうございます☆
古い童話の世界のように、王様やお姫様の名前が無いと、どうなるかなーと思い、書いてみました。
楽しく読んでいただけたら幸いです。