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もしも明日、手紙が届いたら。  作者: 今井マイ
3/13

3通目

100円ショップから帰ってきた私はずっとレジでの出来事を思い出していた。壊れたラジオのように頭の中で先ほどのフレーズが流れる。

「あの、指輪、かわいい」

「初めて言われました。ありがとう」

自分のセリフを何度も再生し、何度も恥ずかしくなる。そして彼女の返事に顔がにやける。

急にかわいいなんて言って気持ち悪かったのではないかと風呂場で叫んでいたら、母にうるさいと怒られた。

こんなにも人と話してうれしかったのはいつぶりだろうか。どうしてもあの人と仲良くなりたかった。大学はコロナで行っていないせいで友達と言える友達は居ない。ましてや自分と同じ趣味を持った人間なんてここ何年か出会えていないのであった。もう一度話すきっかけを作るには…そうだ、あそこでアルバイトをしよう!ちょうど無職だし、お客さん少ないし。


そう思い立った私の行動は早かった。

100円ショップのバイト募集を調べ仕事内容を見た。「接客、レジ、品出し、清掃」と書いてある。接客は苦手だが最低限度できる。何なら一生品出しと清掃でお願いすれば大丈夫であろうか。1週間程度悩んだが、ついに電話をかけることにした。

電話をかけると店長が出た。年配女性らしい声が聞こえ、次の日に面接することになった。

面接に行くととんとん拍子にその場で採用となった。採用基準が低すぎて驚いたが、どうも人が足りていない職場だったらしい。交通費は出ないというあまり良くない条件だったが、家から職場はそう遠くないので妥協することにした。

面接の帰り、ふとあのレジを見ると例の彼女が立っていた。こんなタイミングの良いことがあるのだろうか。顔を見て凄く緊張したが、お客さんが途切れた様子を見計らって挨拶をした。

「あ、あの…来週からお世話になる八木(やぎ) (みな)と申します。よろしくお願いします。」

私の顔を見ると彼女は笑顔でこう言った。

「五十嵐 叶望(かのん)です。短い間ですがよろしくね。」

彼女は私のことを覚えてない様子だった。それはそうだよな…ん…?

「あ、あの…短い間って??」

「私、今月で辞めるのよ。仕事教えるからなんでも聞いてね~」


そう、この瞬間、私のアルバイトで仲の良い友人を作るという願望はあっけなく破り去ったのであった。


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