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第5話

転生したら最強の猫ちゃんでした 第5話


「よし、できた」


「(ほう、どれどれ)」


ブライゼとボクはエマの作ったブースを見ていた。エマとブライゼに話を聞くと、どうやら今日はオラクルハイトで4年に一度開かれる魔術展覧会という魔法使い達がマジックアイテムをお披露目するイベントがあるらしい。


「ブライゼさん、エマさんのブース設営は順調に出来たね」


「(ああ、そうだな。それとチェス、私の事は呼び捨てでいい。敬語も使わなくていいぞ)」


「大丈夫なんですか?なんというか、ブライゼさんってボクより年上だから敬語とか使ってたんですけど…一応ボクは今25歳なんですが、ブライゼさんって何歳なんですか?」


「(数えてはないが、大体1万歳だ)」


「一万!?ちょっ、大先輩じゃないですか…尚更敬語を使わないわけにはいきませんよ」


「(いや、いいんだ。あなたとは対等でいたい)」


「ま、まあそれなら….よろしくブライゼ!」


「(ああ、改めてよろしく頼むぞ、チェス)」


チェスはブライゼとまた一つ信頼関係を築いた。


「できた。これで後は来てもらった人にわたしの作品を見てもらうだけ」


「凄いね、エマさん。この動く埴輪みたいなの、全部エマさんが作ったの?」


「うん。魔力を帯びた土を捏ねて、火で焼き上げて作ったんだ。そしてこれがわたしの最高傑作だよ」


エマが指を鳴らすと、箒を持ったゴーレムがこちらに向かって近づいてきた。


「ゴーレムだ!しかも掃除もしてる!」


「いつもは護衛用にゴーレムを作るんだけど、これは家事とかを手伝ってくれるタイプのゴーレムだよ。ある程度戦闘もできるから家に置けばセキリュティ強化にもなるんだ」


「(エマよ、あなたは何歳だ?)」


「10歳です」


「(10歳でここまでの魔術の才能があるのか。素晴らしいな)」


「ありがとうございます。でも、魔術に年齢は関係ないなって思うんです。何歳でも魔法は学べますし、そこに遅いも早いもないかなって」


「(なるほどな。私も魔法は使うが、ここまで精巧なマジックアイテムは作れんよ)」


「ブライゼさんも魔法を使えるんですか?」


「(ああ。とはいっても、竜の使う魔法だから、火炎で焼き尽くしたり、巨大な氷塊で対象を凍り付かせたりという風に破壊に重きを置いた攻撃魔法しか使えなくてな。やはり人間の使う魔法は多種多様で面白い。私には作り出せないものばかりだ)」


「わたしはそういう攻撃的な魔法が使える方が羨ましいなって思います。わたし、魔族にお父さんが襲われて殺されたんです」


「え…」


「その時、精一杯持ち得る魔法で抵抗しましたが、お父さんを守る事が出来ませんでした。だから、ブライゼさんのように強い攻撃魔法を扱えるのが羨ましくて」


「今日この魔術展覧会に出たのも、力のある人たちにわたしの作品を見てもらって、弟子入りして魔法を磨いたり、魔術師ギルドからスカウトされるのを狙ってます。いっぱいお金を稼いでお母さんに仕送りもしたいし、何より、お父さんの命を奪った魔族に敵討ちがしたいんです」


「(ふむ、なるほどな…)」


「エマさんも大変なんだね」


「あ…なんか熱く語っちゃったな。ちょっと恥ずかしいや」


「(魔術展覧会は魔法の祭典。優秀な作品を展示した者には力ある魔術師ギルドからスカウトが来る事も珍しくない。エマはそれを狙っているのだな)」


「はい。わたしみたいな未成年がいっぱいお金を稼いだり、力ある人達の元に行く為には、こういう場所でアピールするしかないですから。今回を逃したら次はないって思って魔術を6歳の頃から必死で磨いてきました」


「(そして今に至る訳か)」


エマは真剣な表情でチェスとブライゼに自身の目標を語った。


「あ、他の人が作ったマジックアイテムも見たいな。ブライゼさん、チェスさん、良かったら他のブースも一緒に回りませんか?」


「(そうだな。まだ開催まで少し時間もあるし、他のブースも見てみるか)」


「頑張れ、エマさん!」


「ありがとうね、チェスさん、ブライゼさん。ちなみにわたしのブースはゴーレムに店番を任せるから心配しないで」


ゴーレムに店番を任せると、エマ達は周囲のブースへと向かった。


♢♢♢


「でさー!アタシ今回の魔術展覧会で最優秀賞取ったら、新しく魔術師ギルド立ち上げようと思ってんのよ」


「そうなんだ!イルミナちゃんも成長し続けてるんだね!」


「だろ!いつまでも誰かの下についてたんじゃ何も見えてこないと思ってさ!ユーディット、あんたにもついてきてもらうよ」


「え?わたしも?」


「そうだよ!みんなで魔法の力で依頼者に笑顔を届ける、そんな魔術師ギルドを作りたくてさ!アンタのガラス細工の魔法もアタシには必要なんだよね!」


「そっか。でも、わたしなんかで本当にいいの?」


「バカ、アンタじゃなくちゃ駄目だよ。さ、今日はアタシらの作った最高傑作で賞を掻っ攫おうぜ!」


エマのブースから10キロ程度離れた広場で、パーティードレスのような服を着た魔術師、イルミナと、白を基調とした服を着た魔術師のユーディットはブースを設営しながら話していた。


「あ…あれってユーディットさんとイルミナさんかな?」


「ユーディット?イルミナ?」


「うん。魔法使い達の界隈で有名な人達で、華やか、かつ繊細な魔術を生み出す事で有名な人達だよ」


「魔法使いにも有名人っているんだ!あの人達はどういう魔法を使うの?」


「イルミナさんは宝石の魔術、ユーディットさんはガラス細工の魔術を使うんだ。それに比べてわたしの魔法ってなんか地味だなぁ。まだまだ未熟だし」


「そんな事ないよ。エマさんの陶器と土の人形の魔法も素敵だって」


「ありがとうチェスさん。他のところも見てみよっか」


「うん!…あ」


「なに?」


「ごめん、ちょっとお手洗いに行きたい…」


「そっか、じゃあわたしはここで待ってるから」


「うん…ちょっと席を外すね」


チェスはその場を離脱し、御手洗いへと向かった。


「どうしよう、どこで用を足そう」


「(この街は綺麗に整備されてるからな。ケットシー専用の御手洗いもあるぞ。ここから少し南に行ったところにあるはずだ)」


「教えくれてありがとう!あ、あれかな…」


チェスは街の南側に移動すると、ケットシー達の専用トイレへとたどり着いた。


「そういえば、街に入ってからすごい数の猫達がいるね」


「(ああ。エマの言った通り、オラクルハイトではケットシー達と人間達が共存しているからな)」


「とりあえず用を足すね…流石に今度はちゃんとした場所でしなきゃ。ブライゼ、あの時は本当にごめんね」


「(怒ってないからいいぞ。あの水路がケットシーのトイレだ)」


チェスは水路に入り、用を足した。


「ふぅ、今度はちゃんとした場所で用を足せた。….あれ、何これ」


「(何だ?)」


「なんだろう、宝石みたいなものが落ちてる。誰かの落とし物かな?」


チェスは水路の栓の近くに落ちていた宝石を咥えた。宝石は人間の掌くらいの大きさで、紫色に輝いていた。


「これ、誰かの落とし物かな?」


「(なんだろうな。とりあえず持っていくか)」


「あ、待って。用を足す水路に落ちてたって事は、猫達のアレに触れたかも。すぐそこの水道で洗わないと」


「(そうだな。あなたのもかかってるかもしれないしな)」


「そうだね…汚くてごめん…」


チェスは水道に向かい、蛇口を捻って水を出し、宝石を洗い流した。


「ふぅ、汚れとかも特にないみたいだし、持ち主を探して返しに行かないと。でも、これって誰の宝石なんだろう?」


「(今しがた私の解析スキルで解析したところ、どうやら持ち主はイルミナのようだ)」


「イルミナって、さっきエマの話題に出てきたあの人だよね?」


「(ああそうだ。もしかしたら展覧会に出す出展品に必要なものかもしれん。さあ、返しにいくぞ)」


ボクらは再びエマのところに戻ろうとした瞬間だった。後ろから声が聞こえてきた。


「やいやい、それは俺達が見つけた宝石だぞ」


振り向くと、無数の猫達に囲まれていた。


「えっ!?何ですかあなた達は!」


「何ですかじゃねーやい!その宝石を返せ!」


「あんたなんかには猫に小判よ!」


ケットシー達は口々に宝石が自分の物だと主張し始めた。どうやら話は通じなさそうだったが、一応穏便に済ませるためにチェスは穏やかに、かつ丁重に事情を説明する。


「えっと…この宝石は人の落とし物なんです。これから落とした人に届けに行きます。だからあなた達には渡せません」



「見たところ、お前は見ない顔だからこの街に入ってきたばかりの新入りか?」


顔に斑模様のある猫がチェスに問いかける。


「いや、新入りじゃないですし、偶然通りかかっただけと言いますか…」


「なら悪い事は言わない。その宝石を俺達に渡せ。ボコボコにされたくなければな」


「どうしよう?ブライゼ」


「(私に変われ)」


「うん、わかったよ。でも相手の猫達に怪我はさせないでね?ボクこれでも猫好きなんだから」


「ああ、わかっている。どうしようもなさそうな奴らだが、殺しはしないさ」


ブライゼが再び身体の主導権を握った。


「羽が生えた!?何だこいつ、普通のケットシーじゃない!」


「羽が生えようとなんだろうと関係ねえ!俺達の力を見せてやれ!」


猫達は一斉にブライゼに飛びかかった。が、ブライゼは軽い身のこなしで猫達が放った炎や氷の魔法の攻撃を躱していく。


「流石はオラクルハイトの猫達だ」


「って、そんな悠長な事を言ってる場合じゃないでしょ!この数どうするの?それに猫達は魔法も使えるみたいだし」


「心配するな。見てろ。本当の魔法を見せてやる。ーー’’凍える大地コキュートス’’」


ブライゼが身体を震わせると、辺り一面が凍り付いた。猫達が一斉にボク達に向けて放った炎の魔法も、ブライゼの氷の魔法により全て消滅した。


「な….なんだこの氷の魔法は!?」


「ケットシーが使う魔術の範疇を超えているではないか…!!」


「これでわかっただろう。私達には勝てないと」


「ちっくしょう…!!退散だっ!覚えていろ!!」


猫達はブライゼの魔法の前に退散した。だが、必ず報復に来るという意志は感じられた。


「良かった〜、ほっとしたよ。ブライゼって本当に強いんだね」


「ケットシー達を傷つけないように氷魔法の出力を調整したんだが….それでも辺り一面が凍りついてしまったか。…ん?」


ブライゼとボクは猫達が去っていった場所を見ると、まだ猫が一匹残っていた。全身が雪のように真っ白な毛の猫だった。


「あわわ…」


その猫の足元を見ると、どうやら先程ブライゼの放った氷魔法により、片足が凍りついて動けないようだった。


「!!すまない、すぐに氷を溶かす。待っていろ」


ブライゼは出力が最低まで落ちた炎の魔法で、ゆっくりと白い猫の凍りついた足を温めた。


♢♢♢


「ありがとうございます。おかげで助かりました。とは言っても、私達の自業自得ですが」


「いや、いい。見たところ、あなたは攻撃に参加してなかったから大方ケットシー達のボスに嫌々従わされていたのだろう?」


「はい。今日から1週間の間、このオラクルハイトで魔術展覧会が開かれるので、魔術師達が作ったマジックアイテムを掠めとる為に無理矢理協力させられてたんです。私、ケットシーの中でも魔力も戦闘力も低いので、裏方の仕事をしてました」


「なるほどな。攻撃に巻き込んですまなかった。あのわからず屋達を威嚇する為にしたのだが、あなたを巻き込んでしまったか」


「いいんです。全部私が悪いので。ああでもどうしよう、こんな失態犯したらもうあのグループにはいられないよ….またいびられるどころじゃ済まない」


「あなたの名はなんというのだ?」


「私、ミルテっていいます。この魔法都市、オラクルハイトに住んでいるケットシーです」


「なあミルテよ、私達と一緒に来ないか?」


「えっ」


「私達といれば、性悪なケットシー達のボスにいびられることもなくなるぞ。それに、こちらにもケットシーがいる。私と一体化したケットシーがな。そいつは優しいから、きっとあなたと気が合うはずだ」



「そ、そうなんですか…もうあのグループに戻るのも嫌だし…わかりました。あなた達の元にいさせてください」


「ふふ、素直でよろしい」


「あ、ちなみに私、人間の姿になる事もできます。人化の術が使えるので」


ミルテはそう言うと、魔法を使って人の姿になった。外見は猫の耳も尻尾も生えていない完全な人間の姿に。


「ほう、人化の術か。よし、私達も使うか。人間の姿の方がケットシー達に絡まれる事も少ないだろうからな」


「人化の術って?」


「魔物や魔族といった人ならざる者達が使う魔法でな、人間の姿になることができる魔法だよ。この術により、外見は完全に人間になる。身体の強度はそのままでな」


「すごい!早速使おうよ…ってあれ、ボク魔法とか使えないよ?」


「心配するな、私が魔術を教えてやる。魔術とはイメージだ。まずあなたが変身したい外見を思い浮かべてみろ」  


ボクはとりあえず、人間の時だった姿を想像してみた。黒髪で、172cmくらいの中肉中背でいかにも日本人という顔を。


すると、身体が光に包まれ、ポンっという音と共に人間の姿へと変身した。


「わわっ、人間になった!これが人化の術…」


「これでしばらくケットシー達に絡まれる事もないだろう。さあ、エマの元へ向かうぞ」


「うん!今度はミルテさんも一緒にね」


「はい!よろしくお願いします!」


ボクらは再びエマの元へと向かった。





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