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第2話

「とりあえず森を出なきゃな…」


ボクは夜の森の中を歩き始めた。空には聖域にいた時のような無数の星が瞬いていた。


「はぁ…女神様とやらには会ったし、転生しなきゃ消えるよって言われたから転生を選んだけど…まさか猫になるなんてなぁ」


ボクは色々と考えていた。これからどうするかと言うこと。そして、いくら異世界とはいえ、言葉を喋る猫が受け入れられるのかということ。


「ここがどこかはわからないし、人もどれくらい来るのかはわからないけど、今のボクは人語を話す猫。なんだろう、見つかった人によってはやばい事になりそうな気がする…」


この世界における猫がどういう生物なのかはわからない。けど、もしここが元いたボクの世界だったら、人語を話す猫なんて実験動物にされたり何かの研究対象だ。場合によっては研究員みたいな人に見つかってしまったら最悪死ぬまで監禁されたり研究の為に解剖されてバラバラにされかねない。


「あわわ…どうしよう….」


不安を募らせていると、急に尿意を催した。


「あ….なんか御手洗いに行きたい…」


またまたどうしようと思った。いくら猫の姿とはいえ、そこら辺で用を足すのは元人間としてどうかと思う。でも、このまま我慢しても膀胱が破裂しそうだ。


「するしかないのか…っ」


ボクはそこら辺にあった黒く大きな岩に向かって用を足した。幸い小だったのが救いだった。


女神様に会う前、猫を助けた時。あの時確か飲み会の後だったからアルコールを浄化する為にお茶をペットボトル一本分くらい飲んだんだっけ。それが関係するのかな。というよりそういうのも転生先に反映されるんだろうか?余計な思考だけど。


ふぅー、と用を足し、その場を通り過ぎようとした瞬間。黒い岩が動き始めた。


えっ、と思った瞬間、目の前に巨大な竜の顔が現れた。竜のトパーズのような黄金色の鋭い目はボクを捉えていた。


えっ、と思い、後ろを見た。そのまさかだった。竜の尻尾の付け根の辺り。そこが、ボクが用を足した事を証明するように、しっとりと濡れていた。


(やばいやばいやばい….!)


やばい。ただ一言。やばい。ボクは死を覚悟した。異世界転生したばっかりのボクだけど、また死がボクのそばに迫っていた。


どうすんだどうすんだ。竜ってアレか?知性とかあるのか?言葉通じるのか?謝ったら許してもらえるのか?そんな事がグルグルと頭をよぎり、走馬灯のようなものも見えてきた。


頭がフル回転し、脂汗も止まらない。といっても、今は猫だから足の裏くらいしか汗をかく箇所がないのだが。


なんて、そんな事考えてる場合じゃない。どうにかしてこの場を切り抜けないと。この目の前にいる闇夜のように黒い竜に許してもらわないと。そう考えていた時、竜が言葉を発した。


「そこの方」


「はっ….はひぃ!?なんでしょう!?」


「ありがとう!」


….え。ありがとう?なに、感謝されてるのボク?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ははは、そうか、あなたは異世界から来たのか!」


「え、ええ、まあ….」


竜におしっこをかけてしまったボクは死を覚悟したが、竜は怒ってないらしい。むしろ上機嫌で笑っている。それに言葉も通じる。助かった。ボクは助かったんだ。ほっと胸を撫で下ろした。それにしてもボクは運がいいのか悪いのかよくわからないなぁ。


「ふふ、いきなり驚かせてすまない。まずは名乗らなければな。私の名はブライゼ。この世界を作った竜だ」


「この世界を作った…?それってどういう事なんですか?」


「そうだな、話せば長くなるがーーゴフッ」


ブライゼは話の途中で咳き込むと、口から吐血した。


「ええ!?ちょっ、大丈夫ですか!?」


「ああ、問題ない、と言いたいところだが、単刀直入に言う。私はもう時期死ぬ」


「え?ちょっ、死ぬって!!どういう事ですか!?」


「実は一週間ほど前、何者かの襲撃を受けてな。竜に特攻効果を持つ特殊な武器で胸部に傷をつけられ、大ダメージを追ったのだよ。有効な治療法もないまま傷を晒し続け、そして今に至る」


「そんな…!!」


「ただしかし。一つだけ私が助かる方法がある。それはあなたの中に入る事だ」


「ボクの中に入る?」


「ああ。あなたの持っているスキルを私の分析スキルで少し探らせてもらった。あなたは収納というスキルを持っている。そのスキルで私はあなたが有する異空間の中に入り、生きながらえることができるのだ」


「収納?ボクにそんな能力が….何はともあれ、まずはブライゼさんを匿った方が良いですね!やってみます!」


「ああ。まずは私の目の前に立ち、目を閉じて私に触れてくれ。そして、風景を想像する。そうだな、そよ風の吹く緑が茂った丘を想像してくれ」


「はい….!」


ボクはブライゼの言う通り、目を閉じてブライゼの額に触れ、言われた通りに空間を頭の中で想像した。するとーーーー


「ありゃ?」


ブライゼの姿が目の前から消えていた。


「あ….えっと、まさかーーー」


ブライゼは死んでしまったのだろうか?そう考えていると、頭の中から声がした。さっきまで話していた、低くて落ち着く声。


「(成功だ)」


「ブライゼさん!良かった、成功したんですね!」


「(ああ。あなたの中で、こうして意思疎通を図る事もできる。そして、あなたに力を貸す事も可能だ)」


「力を貸す?どういう事ですか?」


「(そうだな。少し待ってろ)」


ブライゼはボクの収納によって創られた異空間の中から、優しくボクに言った。



「(あっ…なんか身体の奥の方から暖かい何かを感じる)」


すると、ボクの猫の身体からはドラゴンのような翼が生え、尻尾が2本に変化した。


「羽が生えた!力を貸すってこれの事ですか?」


「(ああそうだ。今の姿はいわばあなたと私の融合形態だ。この姿になれば私の力をあなたの身体を介して100パーセントの出力で出せる)」


「(試しにそこの岩を砕いてみるか)」


ブライゼはそう言うと、黒音の身体で岩を殴りつける。すると、岩は粉々に砕け散った。


「すっ…凄い!岩が粉々に!しかもパンチしたのに手も全然痛くない!」


「(これはまだ竜の力の片鱗に過ぎない。これから徐々に力を見せていくぞ)」


「はい!あ、ブライゼさん」


「(何だ?」」


「ボク、この世界じゃない世界から来たから、身寄りとか何もないんです。だからブライゼさんが知ってるところというか、何か組織とかに属してるのであればそこに連れて行ってください!」


「(そうか。わかった、では魔法都市オラクルハイトに向かおう!)」


「オラクルハイト?それって…」


「(ふふ、面白いところだぞ。さあ、向かおうか!)」


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