第97話 あーちゃんとゆーねぇー
あの日から唯は、敦也にベッタリだった。
誕生日は敦也よりも早い事から、唯は敦也に姉と呼ばせるようになった。
「あーちゃん、ねぇ、あーちゃんってば!」
と、唯は敦也の服を引っ張る。
「なーに、ゆーねぇー」
と、本を読んでいる敦也は返事をする。
あの日を境に、敦也は、唯を無視することなく、しっかりと相手する。
「ぎゅっとして!」
唯は、両腕を広げて、ハグする体勢をとる。
「これでいいの?」
敦也は、唯に近づいて、唯の体を抱きしめる。
「うん。これ……」
ずっと、こうしている時間が長い事もある。
「あーちゃん、一緒にお風呂入ろ!」
と、敦也が風呂に入ろうとすると、唯も一緒に入ろうとする。
「あーちゃん、一緒に寝よ!」
と、敦也の布団に潜り込んでくる。
「隣で寝ているのに?」
「この方が、落ち着く」
「はぁ……」
いつも隣り合わせで布団を敷いて寝ているのに、毎日、敦也の布団で寝ている。
「ゆーねぇーは、しかたないなぁ……」
「うん、しかたない、しかたない」
嬉しそうに唯は、敦也を抱きしめる。
それを隣の布団で寝たふりをしている修二は、微笑ましく思った。
(本当にこの二人は、仲がいいよな。敦也は、死んだあいつによく似ているし、唯ちゃんは……。いや、この子も俺はしっかりと、育てないと…な。俺は、二人の父親なんだから……)
二人が気持ちよさそうに寝ている姿を見て、修二も眠りについた。