第94話 二人の初めての出会い
時は十二年前に遡る——
「よーし、敦也。今日からお前の家族になる子だ」
と、敦也の父・修二が言った。
「あー、うー」
まだ、幼き頃の敦也(三歳)。
そして、目の前にいるのは、敦也と同じくらいの年頃の女の子。
それが幼き頃の唯(三歳)だった。
「ほら、唯。この子があなたの姉弟になる敦也君よ」
と、唯も元母親・由利が言った。
「あーあ?」
と、唯は立って、敦也の元へ行く。
「…………」
「あーちゃん?」
互いに見つめ合う二人。
すると、唯が両手で敦也の頬をムニュムニュと触り、引っ張ったりしながら敦也をおもちゃにする。
「ふぇ、ふにゅ、やめ……」
と、敦也は何か言おうとした。
「や~め~‼」
と、敦也は唯を突き飛ばした。
唯は尻餅をついて、そのまま、体重が後ろに掛かり、倒れる。
「ふぐ……。うぇえええええん!」
と、唯はいきなり泣き始めた。
「あらあら、唯、どうしたの? いい子だから泣き止もうね」
「おいおい、敦也。女の子を泣かしちゃいけないだろ」
「だって、嫌だった……」
「え? 嫌だった!」
大声を上げる敦也。
「あ、そうなの……」
「う…うわぁああああああああ!」
同じく泣き始める敦也。
収拾のつかなくなった二人は、部屋で泣き止むまで、親の腕の中で、泣いた。