第79話 少女たちの会話
「それにしても、合同合宿って、思っていたよりも疲れるわぁ……。自分の実力に応じて、クラスを分けられるのは分かるけど、やっぱり、他校の人と練習すると、気を使うわね」
と、文句を言いながら、夏海は弁当を食べる。
「仕方ないですよ。合同練習というのは、そういうものなんですよ。それに夏海よりもピリピリしている人が、ほら、一人いるじゃないですか」
一言も話さずに、ただ、ご飯を食べ続けている人物がいた。
その表情は、今にも襲い掛かりそうな怖い顔をしており、全く楽しんでいる雰囲気ではない。
「ねぇ、唯ちゃん。あれ、何があったの? おそらく、他校の生徒と揉めているんじゃないのでしょうか? 大体、想像はできますけど……」
「揉めるって……あなたねぇ……」
すらっと、述べる唯に対して、夏海は呆れていた。
「里菜ちゃん、練習中、何があったの? 機嫌悪そうだけど……」
と、同じ一年で女子部員の松田穂乃果が里菜に訊いてきた。
「ん? まぁ、嫌な奴がいただけよ……」
と、答えながら、全く他の事に興味を示さない里菜。
「穂乃果さん、今の里菜に何を言ってもダメですよ。それこそ、機嫌が悪くなりますから……」
唯は、穂乃果に教える。
「唯ちゃん、そう言えば、咲弥ちゃんは?」
もう一人、一緒に弁当を食べている和田明里が言った。
「咲弥ですか? それだったら、あの子は、先生のところに行っていますよ。理由は教えてもらえなかったですけどね」
「そうなんだ。練習中から気になっていたんだけど、咲弥ちゃん、ずっとパソコンやタブレットと睨めっこしていたよね」
「ああ、それの事ですね。別に、気にしなくてもいいですよ。あれが、あの子の仕事ですので、詳しくは、もう少ししたら分かるんじゃないでしょうか?」
明里は、首を傾げている。唯の解説が全く理解できない。
「それよりも午後の団体戦に向けて準備をしないといけませんから、ご飯が食べ終わり次第、軽く運動をした方がいいですよ」
「え? 私達、出るとは、限らないのに?」
「そうです。出ると、限らないからこそ、準備は怠ってはなりませんからね」
文武両道の完璧主義である唯は、弁当を食べ終わると、少し背伸びをした。




