第58話 体力の限界
遠足が始まり、ガイドラインにあったハイキングコースを歩く敦也達は、歩き始めてから一時間半が経とうとしていた。
「それにしても、山登りと言いながら、このアップダウンは、異常じゃないか? これじゃあ、完璧におもりを背負ってのトレーニングになっているんだが……」
「あっちゃん、文句を言ってはいけません。もう少し、頑張れば、平坦の道にでますよ」
さすがの唯もこのハイキングは想像していなかったらしい。
「ふふふ……。本来であれば、もっと簡単なコースがあるんだが、どうやら、教師陣は、あえて、こっちを選んだらしい。さすが、四十年も続く伝統校、これは、来年、雨で校内遠足になることを願うしかないな」
「康介、言っている事と自分の顔色を見比べた方がいいよ。やばい事になっている」
隣で歩く健斗が、康介を心配していた。
「ちょっと、咲弥ちゃん! カムバック! 皆、ストップして!」
後ろで歩く、夏海の声から咲弥が行き倒れしている報告を受ける。
「…………」
咲弥から返事がない。死体のようにぐったりとしている。
「咲弥? 生きてるの? 生きているなら、返事して~」
と、里菜が、咲弥の体を支えて、生きているか確認する。
「もう、無理……」
「え?」
小声で聞こえない。
「もう、歩けない。このまま、寝たい」
と、限界を超えているらしい。
「ねぇ、唯。咲弥が、ダウンしちゃったけど、どうする? 咲弥の体力からして、本当にまずいかも」
里菜が、咲弥に意見を述べる。
「そうですか。どうしましょうか?」
唯も困った顔をする。
「それだったら、敦也が、咲弥さんを背負って、歩けばいいんじゃないか? 荷物は俺が持ってやるから」
と、康介が提案する。
「えっ? なぜ、そうなるのでしょうか? 弓削君?」
と、唯は微笑みながら、康介の方を見た。
「お、おう。でも、それ以外に解決策がないというか、その方が、一番いいと思ったので……」
唯の圧に押される康介は、怯えながらも答える。
「私も賛成かな? その方がいいと思う!」
夏海も康介の意見に賛成した。
「夏海さんも! ……仕方ないですね。ここで遭難されるよりか、あっちゃんに背負ってもらった方が、いいですよね……」
唯は、二人の押しに心が折れた。
「あっちゃん、咲弥を背負って、歩くことができますか?」
唯は、話の中心になっている敦也に訊く。
「俺? まぁ、康介が荷物を持ってくれるんだったら別に構わないけど……」
敦也は康介に荷物を渡し、咲弥の近くに行く。
「咲弥姉、おんぶしてやるから、それくらいの体力が残っているか?」
「うん……」
と、咲弥は、敦也の背中に乗り、おんぶしてもらう。
咲弥の荷物は、体力のある里菜が持つことになった。
「あー、生き返る。ずっと、おんぶしてて……」
と、咲弥はボケる。
「馬鹿言うな。そこまでの体力、俺にはねーよ」
と、敦也は、咲弥を背負いながら、再び山を登り始めた。
それを見ていた唯と里菜は、羨ましそうに咲弥を見た。




