第30話 姉たる誘惑
敦也は、そろそろ、お風呂から出ようとした。
ドアを開ける。
すると、そこには水着姿の三人が立っていた。
「え? え、ええええええ⁉」
すぐに前をタオルで隠し、湯に浸かり直す。
「これはどういう事だよ! 三人共!」
敦也は、目を閉じたまま、叫んだ。
確かに三人は、水着を着ていて、裸ではないが、目のやり場に困る。
「あっちゃん、これはお姉ちゃんからのご褒美ですよ」
と、唯が言いながら入ってくる。
「いや、ご褒美って、意味わからねぇーよ! 早く、出て行ってくれ!」
「ダメだよ、敦也。これは『何でも言うことを聞く』という中の一つなんだよ」
と、里菜が唯の後に入ってくる。
「そう、これはあっくんは、断れない事。観念して」
咲弥も入ってくる。
「いや、確かに約束したよ! したけどさぁ、これは不味くないか? 俺達、姉弟だぞ。こんな事が、世間で許されるはずが!」
敦也はもっともな事を言う。
「でも、私達は、普通の姉弟ではないのですから大丈夫ですよ。あっちゃんは、そのまま、湯に浸かっていてください。もし、逃げたら、分かっていますよね?」
なぜか、唯が微笑みながら言っている。
今、視界ゼロパーセントの敦也にとって、何が起きているのか、妄想の中だけで、湯あたりしそうである。
三人は、キャッキャウフフに仲良く、体を洗いながら、楽しんでいる。
心頭滅却状態の敦也は、その光景を見ずに目を閉じたままだ。
「さて、皆でお風呂に入りましょうか」
と、唯が言い出す。
「ちょっと、待って⁉ 俺、今、出るからそれからでも……」
敦也は立ち上がって、すぐに出ようとするが、左右から何か柔らかいものが当たって、再び、湯に浸からされる。
「唯姉! 里菜姉!」
両腕に埋もれている胸の感触で、すぐに分かる。
おそらく、この二人しかいない。
「なんで、私の名前を呼ばない?」
と、上からは咲弥が敦也の上に載っている。
「咲弥姉!」
両手に花というよりも、これは非常にまずい。この三人のネジが飛んでいる。
(やばい! これは非常にやばいって!)
敦也は、誰か助けを呼ぼうと思っても、この家には、この四人しかいない。
「どうですか? あっちゃん、恥ずかしいですが、気持ちいですか?」
「敦也、もちろん、私だよね? 唯よりも私の方が、胸の形がいいんだと思うんだよね」
「私の方がいいよね。二人と違って、丁度いい、胸だから」
三人は、敦也に密着して、敦也の思考が停止する。
(いい加減にしてくれぇええええええええ!)
四人の夜は、まだまだ、続くのだった。




