第29話 迫る危険な匂い
金曜日の夕方——
「父さん達は、明後日の夕方ごろには帰って来るから、それまで留守番よろしく」
「分かった。義母さんと楽しんできてよ」
と、両親を見送る敦也は言った。
今日の夜から日曜日の夕方まで、両親はちょっとした旅行に行く。
そのため、この家には、四姉弟しかいない。
「あ、それと……」
父親が、敦也に近づいて、耳元で囁く。
「三人とは、程々に…な!」
と、敦也をからかう。
「さっさと行けよ!」
と、敦也は顔を赤くして言った。
両親がいなくなって、現在、夜に至る——
敦也は、大人しくお風呂に入っていた。
現在、一番風呂のため、あと少ししたら三人の誰かと交代で入れ替わる。
「俺の理性は、保てるのだろうか……。姉ちゃん達が、この休日を使って、仕掛けてこないわけがない」
今、風呂場の近くでの足音はない。
(今のうちに、できるだけ疲れを取って……。さっさと上がろ!)
敦也は、湯につかりながら、堪能していた。
一方、その頃——
三姉妹は、三人揃って、同じ事を考えていた。
「ふふふ……。これであっちゃんを誘惑するんだから……」
「へぇ~。唯はそんな水着を持っているんだ。可愛いじゃない」
と、水着を着ていた里菜が、後ろに立っていた。
「ふぇ! 里菜ですか。脅かさないでくださいよ」
少し驚いた唯。
「さて、行くよ。さっさとしないと、あっくんがお風呂から上がる」
と、同じく水着を着ていた咲弥が言った。
「…………」
「…………」
二人は、咲弥の水着姿を見て、コメントをしない。
「何? 喧嘩売ってんの?」
咲弥が機嫌悪そうに言う。
「いや、咲弥を見ていると、少し犯罪なきがして…すみません……」
「あ、うん。私も思った……」
二人がそう言うと、咲弥が二人を睨みつける。
「い・く・よ!」
と、声色を変えて、二人を従える。
「「は、はい……」」
二人は、小さな声で返事をした。




