第131話 解散
とりあえず、部屋に戻ると、汗拭きシートを使って、汗の臭いや汚れを落とし、タオルで隅々まで拭き終えると、下着も変えて、服やズボンも返る。
靴下を履き終えると、汚れた衣類は、大きなビニール袋に詰め、バッグの中に入れる。
「それじゃあ、僕は先に帰りますね」
「ああ、忘れ物とかないのか?」
「はい、大丈夫ですよ。それでは」
「ああ……」
拓は荷物を持ったまま、部屋を後にした。
一人、取り残された敦也は、最後に部屋の周りを確認して、忘れ物がない事が分かった上で、荷物を持って、電気を消し、部屋を出る。
広間には、女子達が集まっており、荷物の整理をしている。
「唯姉、俺、先に車の方に行っているから」
「あ、はい。分かりました。お母さん達には、もう少し、時間がかかると言っておいてください」
「分かった」
敦也は靴を履き、ログハウスを出る。テニスコートのある方まで歩き、車の中で待っている両親達に、窓の外から左手でノックする。
「お疲れ様、唯達は?」
「まだかかるって、母さん、荷物置いたら飲み物買いたいんだけど……」
「それなら、車の中にあるクーラーボックスにペットボトルのジュースがあるから、それを飲みなさい」
「はーい」
少し残念そうに返事をする敦也。
自動販売機で、自分の飲みたい物を買いたかったが、諦める。
車の後ろのドアを開けて、荷物を置き、閉める。
二列目のドアから入ると、クーラーが程よく冷えており、敦也はクーラーボックスからジュースを取って、一番後ろの席に座り、座席を少し倒す。
スマホを片手にジュースを飲みながら触り、イヤホンを耳につけると、音楽を再生する。
「父さん、俺、寝るから、家に着いたら起こして」
「分かった。三日間、疲れたか?」
「疲れた、疲れた。今、寝ること以外、何もしたくない」
「そうか、じゃあ、着いたら起こすな」
「よろしく」
そう言い残して、敦也は眠りについた。