第129話 そういう所
「大丈夫か? 咲弥姉」
敦也は、ゆっくりと咲弥の体を押し上げて、体の体重移動を変える。
「え? うん。大丈夫」
「それならよかった。ほら、上った、上った」
と、敦也に言われて、咲弥は階段を上る。
「どうしたの? あっくんが、残るなんて、珍しい……」
「そうか? ただ、咲弥姉の事が気になって、残っていただけだけどな」
「どういう事?」
「それは、あんなに食べた後、仕事もすればそうなるだろ。倒れることぐらい分かっていた」
「そう……」
敦也に指摘されて、咲弥は顔を下に向けたまま、隣を歩く。
「部屋に戻ったらどうするの?」
「とりあえず、もう一度、シャワーを浴びようかな。ちょっと、汗かいたから……」
「へぇ~、それだけ仕事したんだ」
「まぁーね。私にとっては、重労働だったけど……」
「あはは……。そりゃ、そうだ。咲弥姉には、似合わない仕事だったよな」
「馬鹿にしてる?」
「してない、してない。ただ、想像できないだけだ」
二人は噴水広場を横切り、ログハウスへと繋がる道へと入っていく。
「今日はありがと……」
「え? なんだって? 聞こえなかったけど……」
「うるさい! 何でもない‼」
「ええ! 気になるんだが……」
そっぽ向く咲弥を見ながら、敦也は、困った表情をしていた。
(本当にそういう所、なんだよねぇ)
咲弥は、空を見上げた。